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【相棒23】第12話感想|病院乗っ取り事件が『地面師たち』を思わせた理由

相棒シーズン23 ドラマ感想(コラム)
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『相棒 season23』第12話「細かいことが気になる患者」は、今シーズンで特に印象に残る回だった。

検査入院した杉下右京が、病院へ出入りする怪しげな経営コンサルタントに目をつけ、病室から亀山薫たちへ指示を出していく。

扱われたのは、経営難に陥った病院へ入り込み、最終的には病院を土地ごと売却しようとする乗っ取り詐欺である。盛りだくさんの内容を1話で描き切っており、展開の速さと事件の分かりやすさがうまく両立していた。

病院を丸ごと奪う乗っ取り詐欺

右京が検査入院した杉並武蔵病院は、深刻な経営難に陥っていた。

そこへ現れたのが、ライリー櫻井率いる「83コンサルティング」である。

彼らは病院へ資金を提供し、味方となる理事を送り込み、理事会の多数派を握っていく。院長が気づいた頃には経営権を奪われ、病院を売却できる状態が完成していた。

単に金を騙し取るのではなく、困っている病院へ救いの手を差し伸べるふりをして、組織そのものを内側から奪う。

悪事の規模が大きいのに、仕組みは視聴者にも理解しやすい。病院が少しずつ詐欺師たちのものになっていく過程には、犯罪ドラマらしい面白さがあった。

ライリー櫻井が『地面師たち』っぽい

今回の話を見て、Netflixドラマ『地面師たち』を思い浮かべた人も多いのではないだろうか。

『地面師たち』では、土地の所有者になりすまして不動産を売却する。一方、今回の『相棒』では、病院の経営権を奪い、最終的に土地ごと売却しようとしていた。

どちらも、不動産をめぐって複数の詐欺師が役割を分担し、本物らしい人物や経歴を作り上げていく話。

さらに、詐欺集団のリーダーの名前まで少し似ている。

『相棒』はライリー櫻井、『地面師たち』はハリソン山中。

カタカナの名前と日本の名字を組み合わせただけで、急に普通の詐欺師ではない雰囲気が漂ってくる。ライリー櫻井という名前が出た時点で、堅実な病院再建だけをして帰ってくれる人物には見えない。

もちろん『地面師たち』ほど暴力的でも陰惨でもない。しかし、詐欺師たちが舞台を整え、役者を配置し、計画を段階的に進めていく見せ方には共通するものがあった。

一歩も病院から出ない右京が事件を動かす

今回の右京は、脳波の検査のため病院に入院している。

そのため、自ら外へ聞き込みに出るのではなく、亀山や伊丹、角田たちへ指示を出しながら捜査を進めていく。いわゆる安楽椅子探偵に近い役割だ。

右京は、偽の資産家が身につけていた腕時計や、ライリーたちの日焼け跡といった細かな違和感から、彼らの説明に嘘が混じっていることを見抜いた。

病院から一歩も出ていないのに、事件の中心には常に右京がいる。

右京が細部を気にし、亀山が外を走り回り、捜査一課や組対五課がそれぞれの得意分野を担当する。普段から登場している人物たちが総動員され、詐欺集団を少しずつ追い詰めていく展開は爽快だった。

1話に詰め込んだとは思えないスピード感

病院の経営難、偽の投資家、理事会の乗っ取り、偽医者、過去の詐欺事件、ライリーの生い立ち、山小屋に隠された大金。

並べてみると、2時間スペシャルでも成立しそうな内容だった。

それを通常の1話に収めているため、物語はほとんど立ち止まらない。詐欺師たちが次の段階へ進むたびに右京たちの捜査も進み、次々と新しい事実が判明していく。

情報量は多いが、詐欺の目的が「病院を奪って売る」と明確なので、話を見失いにくい。

むしろ、余計な場面を挟まずに一気に決着まで進むからこそ、密度の高い1話になったのだと思う。

「本当に頭のいい人間は詐欺師にはなりません」

追い詰められても余裕を崩さなかったライリーは、詐欺で得た大金を少年時代に暮らしていた山小屋へ隠していた。

その場所に金を隠した理由を、右京はライリーの自己陶酔と破壊衝動によるものだと指摘する。そして最後に、「本当に頭のいい人間は詐欺師にはなりません」と言い切った。

他人を騙し続けてきたライリーは、自分を誰よりも賢い人間だと思っていたのだろう。

しかし、最後に彼を追い詰めたのは、合理性とは関係のない少年時代への執着だった。

どれほど巧妙に他人を騙しても、自分自身の感情までは完全に操れない。その弱点を右京に見抜かれたことで、ライリーの芝居は終幕を迎えた。

まとめ|今シーズン屈指の見応えがあった第12話

『相棒 season23』第12話は、病院乗っ取り詐欺という大掛かりな事件を、通常回の中へきれいに収めた見応えのある話だった。

『地面師たち』を思わせる詐欺集団、病院から出ずに捜査を指揮する右京、次々と集まってくるいつもの捜査員たち。

事件の規模は大きいが、必要以上に重くならず、『相棒』らしい安心感の中で楽しめる。

シーズンを通して見ていると、時折こうした飛び抜けて面白い回に出会える。なんだかんだで毎週『相棒』を見てしまうのは、その1話を待っているからなのかもしれない。

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