『虚ろな十字架』第3話では、義父・町村の罪を自分のことのように謝罪する史也に違和感を抱いた中原が、その過去を調べ始める。
やがて中原は、小夜子が取材していた井口沙織と史也が中学時代からつながっていたことを突き止める。そして沙織の口から語られたのは、2人が長年抱えてきたあまりにも重い秘密だった。
一方、7年前の花恵と史也の出会いや、史也が森を「墓参りみたいなもの」と語った理由も少しずつ見えてくる。
今回は、史也がなぜ被害者遺族にまで謝罪するのか、沙織との過去に何があったのかを中心に、ちょっとネタバレを含む感想をまとめた。
義父の罪を謝罪する史也
小夜子の両親に謝罪の手紙を送った仁科史也は、直接謝罪するために被害者の会を訪れ、土下座をする。そこで中原と顔を合わせる。
小夜子を殺した町村は史也にとって義理の父。それなのになぜそこまでするのか、中原は違和感を覚えて問いただす。
史也が「縁を切って…終わりにするなんてことはできませんから」と話すと、中原は「「終わり」ですか?」と聞き返す。史也はハッと顔を上げ、「いや……」と口ごもった。
さらに中原が、小夜子の遺品にあった「子ども医療相談室」のパンフレットを見せる。そこは史也も担当している相談室だったが、史也は小夜子とは面識がないと答え、頭を下げて足早にその場を去った。
史也の行動はやはり不自然。町村の娘である花恵が率先して謝罪するわけではなく、義理の息子である史也が小夜子の両親に1人で手紙を書き、さらに直接謝罪までしに行っている。
今のところ、町村が小夜子を殺したのは「たまたまそこに小夜子がいた」という話になっている。しかし、もし町村が史也を守るために小夜子を殺し、史也もその理由を知っているのだとしたら、罪悪感から自分ごとのように被害者遺族へ謝罪しているのかもしれない。
町村が凶器のナイフを持ったまま自首したのも、通り魔の殺人ということで史也が探られないようにするためだったのかも。
そして気になるのが、史也の「縁を切って終わりにすることはできない」という言葉だ。史也は義理の息子なので、花恵と離婚すれば殺人犯・町村との関係を「終わり」にすること自体はできる。それをしない、という意味なのだろうか。
だとしても、元夫の中原に「終わり」というのはひどい。被害者家族に「終わり」はないのだから。
7年前の花恵と史也
7年前、森で首を吊ろうとしていた身重の花恵を思いとどまらせた史也は、自分のために料理を作ってもらえないかと頼み、当面の食事代としてお金を渡す。それから史也は、花恵の家へ食事をしに通うようになった。
ある日、食事をした帰り際に史也が新たにお金を渡そうとすると、花恵は「これからは自分で何とかしないと」と申し出を断る。
史也がなぜ死のうと思ったのか尋ねると、花恵は結婚を約束した相手がいたこと、その人がお腹の子の父親だったことを明かす。しかしニュースで、その男性が自殺し、しかも詐欺師だったことを知ったという。それでも花恵は、その人のことを本当に好きだったと話した。
今度は花恵が、あの森で何をしていたのか史也に尋ねる。すると史也は、「墓参り…みたいなもんです」と答えた。
そして史也は花恵に、「僕がその子の父親になる…というのはどうでしょうか?結婚…してほしいんです」とプロポーズする。当然、花恵は驚いた。
史也はあの森にいた理由を「墓参りみたいなもんです」と言った。このセリフの直前には、森の中で赤いスコップを使い、穴を掘っている男女の後ろ姿が映る。
男は史也なのだろう。なので誰かが森に埋まっている、つまり本当に「墓参り」だったのではないか。
そして史也は、花恵の事情をすべて知ったうえでプロポーズした。
花恵のことを純粋に好きになり、一緒にいたいと思った。さらに、血のつながらない生まれてくる子どもの父親になりたいと思った。そういう気持ちからのプロポーズだったと思いたい。
ただ、あのときの史也の笑顔にはどこか影があるのが気になる。
動き出す中原
史也が自宅に戻ると、花恵は心配そうに謝罪がどうだったか尋ねる。
史也は、小夜子の元夫・中原に会い、小夜子と会ったことがあるか聞かれたことを話し、「もう時間の問題かもしれない」と口にする。それを聞いた花恵は動揺する。
一方、中原は「仁科史也」という名前をネットで調べ始める。検索で見つけた2004年の静岡県陸上中学校大会の資料を見ていくと、史也と同じ中学校の陸上部に「井口沙織」という名前があった。
そして中原は、小夜子が取材していた女性の名前も「井口沙織」だったことを思い出す。
史也の「もう時間の問題かもしれない」という言葉に動揺する花恵。これは、「隠していることがバレるのも時間の問題」という意味なのだろう。
その隠し事が、町村が小夜子を殺してでも守ろうとしたものなのだとしたら、史也と花恵は町村が小夜子を殺した本当の理由を知っているのだろう。
それにしても、中原が少しネットで調べただけで、仁科史也と井口沙織が同じ富士宮第五中学校の陸上部に、所属していたことまで分かってしまうのだから、史也の言うとおり、中原が史也の隠しておきたい秘密にたどり着くのも、本当に時間の問題だろう。
仁科史也の実家へ
中原は静岡にある仁科史也の実家を訪れる。見るからに大きく立派な家だ。
門の前にいると、史也の母・妙子がタクシーで帰ってくる。妙子は中原をマスコミ関係者だと思い、「話すことは何もありません」と家に入ろうとする。
そこで中原は、自分が小夜子の元夫であること、11年前に娘を殺され、今度は小夜子まで殺されたことを話す。そして、「自分がどうしてここにいるのか、分からないんですけど…」と口にする。
しかし妙子は、「うちには関係ありませんから」と言い残し、そのまま家の中へ入っていった。
中原は「どうしてここにいるのか分からない」と言っているが、そもそもなぜ史也の実家まで来たのだろう。
そして、初対面の史也の母・妙子に、娘と小夜子を失った自分の過去まで話したのも少し不思議だ。
同級生に話を聞く
中原は、史也と井口沙織が通っていた中学校で教師に話を聞くが、特に手がかりは得られない。そこで次に、同じ陸上部だった同級生・木島を訪ねる。
木島に井口沙織のことを聞くと、以前にも「中学の時の井口沙織の恋人は誰だったのか」と尋ねに来た人物がいたという。そのとき渡された名刺は、小夜子のものだった。
そして木島の話から、沙織の当時の恋人が仁科史也だったことが判明する。
さらに、以前河口湖の近くでキャンプをしようと誘ったところ、沙織がものすごいけんまくで拒否したことがあったという。
中原は車に戻り、カーナビを見ているうちに「青木ヶ原樹海」という文字が気になる。そこで何かを思い出したように、小夜子が撮った森の写真を取り出す。
その後、中原は写真と景色を見比べながら、小夜子が撮影した場所を森の中で探し始める。
それにしても、史也と沙織が中学時代に付き合っていたことは、思った以上にあっさり分かった。
河口湖近くでのキャンプを異様なほど拒否した沙織。森で穴を掘っている男女の映像。そして史也が森にいた理由を「墓参りみたいなもの」と語ったこと。
ここまで材料がそろうと、なんとなく先がわかる展開だ。
そして、いろんな素材や色で名刺が作れる中で、ライター 浜岡小夜子の名刺が、紺地に白文字だったのが印象的だった。
沙織に会う
中原は、通夜で会った小夜子の仕事相手・日山を通じて、井口沙織に会う。
中原は、小夜子がなぜ殺されたのか本当の理由を知りたいこと、このままでは彼女に顔向けできないことを伝える。そして、自分たちは11年前に娘を失ったのだと話す。
すると沙織は、小夜子から取材を受けたときのことを語り始める。
小夜子は、「今まで取材してきた万引き依存症は、逃避とか快楽を求めてとか、みんな自分のことは大事だと思っている。でもあなたは違う。まるで自分を罰するみたいに。どうしてなのかな?」と問う。そして、将来や結婚、子どもを持つことについて尋ねる。
沙織が「お母さんになれるような人間じゃないので」と答えると、小夜子は自分も11年前に8歳の娘を殺されたことを打ち明けた。
「事件のことを考えても、もう感情が何も湧いてこない。きっと心が死んだんだと思う。振り返る度に思うのは、どうしてあのときあの子を1人にしたんだろうっていう後悔だけ。あの子を守れなかった私に…もう一度母親になる資格なんてない」という。
さらに小夜子は、自分の経験が沙織の人生に少しでも役立つなら、何があったのか話してほしいと伝える。
その言葉をきっかけに、沙織は自分の過去を話す決心をした。
沙織の万引き依存症は、ほかの人たちとは違い、「まるで自分を罰するように」見えるという。
ただ、たとえ沙織にどんな過去があり、依存症だったとしても、自分を罰するためだとしても、万引きをされる側はたまったもんじゃない。自分を罰するなら、違う方法でお願いしますと言いたくなる。
そして娘が殺された事件について小夜子が「もう感情が何も湧いてこない」「心が死んだんだと思う」「後悔だけ」というのは、見ていて気持ちが苦しくなった。
事件以降、心が死んでも遺影の写真のように笑うことは、出来たのかもしれないけれど、事件前のようには笑えなかったのかもしれない……。
沙織の告白
中学時代、沙織は1学年上の史也と付き合っていた。そして中学3年生の時に妊娠。相手は史也だった。
誰にも言えず、ひとり親だった父には絶対に知られたくないと病院にも行かず、流産させられないかと色々試したりもした。
父親は出張が多く、あまり家にいなかったため気付かれなかった。学校ではお腹を隠すために厚着をして通っていたが、気付いていた子もいたかもしれない。
やがて様子がおかしくなったことを問い詰められて史也に話した時は、もうおろせる時期を過ぎていた。
そして沙織は史也を自宅に呼び、風呂場で出産する。
その後、史也はリュックを前に抱え、沙織と2人で森の中を歩いていく。
沙織は中原に、「私……人殺しなんです」と告白する。
話を聞き終えた中原は史也に電話をかけ、井口沙織に会ったこと、そして彼女がすべてを話してくれたことを告げる。
沙織自身が「人殺し」と言っていることに加え、出産直後には赤ちゃんの泣き声のようなものが聞こえていた。少なくとも、生まれた時点では赤ちゃんは生きていた可能性が高そう。
そして森へ向かう史也が抱えていたリュック。その中に赤ちゃんが入っていたのではないかと思う。
ただ、その場面ではもう赤ちゃんの声は聞こえない。出産してから森へ向かうまでの間に何があったのか。
まとめ|史也と沙織は“裁かれる”のか
第3話では、史也が花恵の事情を知ったうえでプロポーズしたことが明らかになった。そして義父・町村の罪を自分のことのように謝罪する史也に疑問を抱いた中原は、その過去を調べ始め、沙織の告白によって長年隠されてきた秘密にたどり着く。
史也は小児科医となって子どもたちを助け、花恵と結婚し、血のつながらない翔の父親になった。それは、沙織との間に生まれた子どもを殺めたことへの贖罪でもあるのだろうか。
一方の沙織は、まるで自分自身を罰するかのように万引きを繰り返している。2人ともそれぞれの方法で、過去に犯したことから逃れられずに生きてきたように見える。
そして印象に残ったのが赤いスコップ。
翔が無邪気にガーデニングで使っていたのは、史也の机の引き出しに入っていたものだという。もしあれが、沙織との子どもを埋めた時に史也が使ったスコップと同じものなのだとしたら、かなり恐ろしい。
勝手な想像ではあるが、当時14~16歳だった沙織と史也が、子どもを殺したと自首して遺体が発見されれば、裁かれることになるのかもしれない。しかし、遺体がなければ裁かれることはないのだと思う
「裁かれたいのに裁かれない」「刑罰を受けることで償いたいのに、それすらできない」。もしそんな展開になるのだとしたら、『虚ろな十字架』というタイトルにもつながってきそうだ。
そして、もし町村が史也の秘密を守ることで娘の家族を守ろうとし、その秘密を明らかにしようとした小夜子を殺したのだとしたら、何とも皮肉な話になる。
娘の家族を守ろうとした結果、町村自身が殺人犯となり、花恵たちは加害者家族になった。しかも史也の秘密も、中原によって結局暴かれようとしている。何を守るための殺人だったのか、という話になってしまう。
ここまで見てきて思うのは、このドラマの主要人物はほとんど笑わないということ。ときどき笑顔を見せても、心から笑っているようには見えない。
被害者家族と加害者家族を描く物語なのだから当然といえば当然なのだけれど、それぞれが背負っているものの重さが、表情にもずっと残っているように感じる。
いよいよ次回は最終回。
町村の裁判が始まり、判決がどうなるのかまでわかるのか。史也と沙織は裁かれることになるのか。当然、重たい結末になるとは思うが、それがどんな結末なのか気になる。
