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【虚ろな十字架】最終回感想|花恵の「真の償い」にモヤモヤ…史也と沙織が背負った十字架

ドラマ感想(コラム)
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『虚ろな十字架』最終回では、小夜子が殺害された日の真相と、史也と沙織が21年間隠し続けてきた罪の全貌が明らかになった。

赤ん坊を殺して樹海に埋めた史也と沙織。しかし遺体は見つからず、2人がその罪で起訴されることはなかった。一方、小夜子を殺害した町村には懲役15年の判決が下される。

「人を殺した人間は、どう罪を償うべきなのか」。最後まで簡単な答えを出さない物語だったが、それ以上に引っかかったのが、史也を守ろうとする花恵の言動だった。

この記事では、小夜子殺害の真相や町村の裁判、史也と沙織が背負った罪を振り返りながら、花恵が問いかけた「どちらが真の償いなのか」についても考えてみたい。

町村が小夜子の存在を知った経緯

沙織の「私、人殺しなんです」という告白を聞き、中原は史也たちの家を訪ねる。

タイミングが良すぎる町村

史也と花恵は、小夜子が家を訪れた日のことを中原に話し始める。

小夜子は史也の職場を訪れ、自首を勧めていた。後日改めて話をすることになり、小夜子は史也の家を訪れ、彼の帰宅を待っていた。

そんな中、花恵の父・町村が、史也に金を用立ててもらおうと家を訪ねてくる。

花恵は史也がいないことを伝えるが、町村はそのまま家の中へ入り、史也を待つことに。花恵は、翔を預けているほど大事な客が来ているため、静かにしているよう町村に念を押す。

町村は小夜子と顔を合わせることなく、キッチンで史也の帰りを待っていた。

この話を聞いた中原は、「小夜子さんがいることを町村は知っていた」と確認。花恵は「はい」と答える。

小夜子は、史也にとって「大事なお客さん」だと聞かされ、花恵はそのために翔まで預けていた。

そんな日に父親の町村が金の無心に来たのなら、「今日は無理だから別の日にして」と帰してもよさそうなものだが、花恵はそうしなかった。なんとも不思議。

町村がたまたま同じ日に来ただけなのか。それとも、なぜ花恵は父親をそのまま家にいさせたのか。この時点ですでに、かなり引っかかる。

真実を小夜子から聞き出す花恵

史也は小夜子に電話をかけ、いつ帰れるかわからないため、日を改めてほしいと頼む。小夜子が帰ろうと席を立つと、花恵は「史也が何かしたのか」「何があったのか」と問いかける。

小夜子は「ご主人が一緒の時のほうがいいと思います」と断るが、花恵はどうしても話してほしいと必死に頼み込む。そこで小夜子はつらい話だと前置きしたうえで、「あなたのご主人は殺人犯です」と告げると花恵は大きく動揺する。

花恵と小夜子の話している内容は、壁越しに聞いている町村に筒抜け。

後に花恵が「浜岡さんはすべてを話してくれました」と語っていることから、この時、小夜子は史也が21年前に沙織との間に生まれた赤ん坊を殺し、樹海に埋めたことまで話したのだと思われる。

それにしても、史也本人がいないところで、いくら妻の花恵に頼まれたとはいえ、小夜子が「ご主人は殺人犯です」とまで話したのは少し驚く。

そして花恵も、父親の町村がキッチンにいることを知っている。それなのに、史也の秘密を聞かれても構わないと思ったのだろうか。ここもなんだか不思議だった。

史也の告白

花恵が小夜子から何を聞いたのかを話す一方で、史也は中原に、自分が21年前に何をしたのかを告白する。

史也は、当時は生まれたばかりの赤ん坊を前にどうしたらいいのかわからず、沙織と2人で赤ん坊を殺し、その遺体を樹海に埋めたと話す。

回想では、2人で樹海に穴を掘り、史也がタオルに包まれた赤ん坊の遺体を穴の中へ入れる。2人は泣きながら手を合わせ、土をかけていく。

その時に使っていたのが、「赤いスコップ」だった。

花恵はその話を聞いてハッとし、庭にある赤いスコップを見る。そして以前、翔がそのスコップを使っていたことを思い出し、泣き崩れる。

当時の史也は、赤ん坊の顔にタオルをかぶせ、手を置こうとするもののためらってしまう。すると沙織が史也の手の上に自分の手を重ね、2人で赤ん坊を窒息させた。

だから史也は、「私たちは赤ん坊を殺しました」と言ったのだ。

そして、これまで意味ありげに何度も映っていた「赤いスコップ」も、ここで伏線回収。

花恵とガーデニングをしていた時、翔は史也の机の引き出しにあったそのスコップを楽しそうに使っていた。

父親が赤ん坊の遺体を埋めるために使ったスコップを、息子が何も知らずガーデニングに使っていたのだから、なんとも皮肉だ。

どうか見逃してください

中原は花恵に、小夜子から史也の過去をすべて聞いたあと、何が起きたのかを尋ねる。

小夜子は、沙織が自首するつもりであり、警察で話せば史也の罪も明らかになるため、史也にも自首するよう伝えてほしいと言って席を立つ。

すると花恵は、確かに史也は昔、一つの命を奪ったかもしれない。でも、史也と出会っていなければ自分は死んでいたこと、自分の子ではない翔を我が子のように育ててくれたこと、今も医師として子どもの命を救おうとしていることを訴える。

そして、「どうか見逃してください」と土下座する。

しかし小夜子が「私は子供を殺されました。子供を殺されて犯人が反省したら…それで許せると思いますか?」と言うと、花恵は何も言えなかった。

「昔、一つの命を奪ったかもしれない」と言いながら、「どうか見逃してください」と頼む花恵。

しかし沙織は自首するつもりなのだから、小夜子に見逃してくれと頼んだところで、どうにかなる問題でもない。

史也を守りたいというよりも、この時の花恵は、自分と翔の生活を失いたくないという自己保身のほうが強く見えてしまった。

半端な十字架

小夜子はさらに話を続ける。

自分の娘は、反省が認められて釈放された殺人犯に殺された。人を殺した人間がいくら反省しても、それは所詮「虚ろな十字架」だと小夜子は言う。

そして、本来なら人を殺した者は死刑にすべきだと思っているものの、現実にはそうならない。

「そんな半端な十字架でも、せめて刑務所の中で背負ってもらわなきゃ…亡くなった子供が浮かばれません」花恵の目を見てはっきり告げる。

小夜子が帰ったあと、花恵は泣き崩れる。そして父親の町村がいなくなっていることに気づく。後に、キッチンから包丁が1本なくなっていたこともわかる。

小夜子と花恵の会話は、町村にすべて聞かれていた。

ここまで見ていると、自己保身が強く見える花恵は、むしろ父親に聞いてほしかったのではないかとすら思えてくる。

また、小夜子は「せめて刑務所の中で背負ってもらわなければ」と言っている。

人を殺した者は死刑にすべきだと考えていても、現実にはそうならない。刑務所にすら入らないなんてとうてい許せないし、史也と沙織は裁きを受けるべきだと思っているのだ。

花恵の「見逃してください」が、小夜子に受け入れられるはずもない。

どちらが真の償いだと思いますか?

中原は小夜子の話を聞き、涙を浮かべる。家を出ると、花恵が追いかけてきて中原を呼び止め、そこへ史也もやって来る。

花恵は、小夜子は間違っていたと思うと話し始める。史也が背負ってきた十字架は虚ろなものではなく、とても重いものだった。自分の罪を忘れたことはなく、誰にも言えないまま1人で苦しみ、それでも自分と翔を救ってくれたのだと訴える。

史也は「やめろと言ってるだろ!」と制止するが、花恵はさらに中原へ問いかける。

「かつてお子様を殺されたご遺族としてお答えください。ただ刑務所で過ごすのと、主人のような生き方と……どちらが真の償いだと思いますか?」

中原は何も答えなかった。

この言葉を聞いて、花恵はとんでもない人物だと思ってしまった。

史也が人を殺したことを忘れず、重い十字架を背負うのは当然のことだし、誰にも言えずに苦しんだのは、自首せずに罪を隠し続けたからだ。

まずは刑務所で“虚ろではない重い十字架”を背負って過ごし、出所後も“死ぬまで重い十字架“を背負い続ける。人を殺したことを隠したまま刑罰を受けず、自分なりの償いを続ければ、それで「真の償い」になるのか?

花恵の言葉は、真実を知った時「見逃してくれ」と言った時点で、何を言っても自分本意で自己保身に聞こえる。そもそも中原に言う必要があるのか?かなり引っかかる場面だった。

町村の裁判①

10か月後。

検察官の後方には浜岡夫妻と中原が座り、傍聴席には花恵と沙織の姿もあった。

全部引き受けてムショに入る

史也は証言台に立ち、町村が小夜子を殺害した翌日の夜、家を訪ねてきた時のことを話す。

町村から小夜子を殺したと聞かされた史也は、警察へ行こう、自分も21年前のことを自首すると伝えた。

しかし町村は、「それじゃ何のためにあの女を殺したかわかんねえだろ。俺が全部引き受けてムショに入るからさ」と言い、今のまま花恵と翔を幸せにしてほしいと土下座する。

さらに花恵まで、「お父さんの願いを聞いてやって」と泣きながら史也に頼み込む。

史也は、あの時に一緒に自首するべきだったと思っていると証言する。

弁護士から、町村は自分の利益のためではなく、史也たち夫婦と翔の将来を案じて犯行に及んだということかと確認されると、史也は「はい」と答えた。

21年前の罪を自首すると言う史也を、町村と花恵の親子がそろって止めている。

町村は本当に1人で勝手に暴走して小夜子を殺したのだろうか。

ここまでの花恵の言動と史也の証言を聞いていると、花恵が小夜子を殺すよう父親を誘導したんじゃないかと思えてくる。

なぜ沙織を殺さなかったのか?

検察官は町村に、娘を守るために小夜子を殺害したというのなら、なぜ秘密を知る沙織は殺さなかったのかと問いかける。

町村は、小夜子の持ち物から沙織の住所を知り、家に押し入っていた。

しかし沙織を包丁で殺そうとした際、沙織が「殺してくれ」と言ったため、亡くなった妻の口癖を思い出し、殺すことができなかったと話す。

町村は、自分が娘を守らなければ亡き妻に申し訳が立たないと思っていたこと、そして自分のせいでこんなことになったと涙を流す。

つまり町村は、「殺してくれ」と言った沙織に亡き妻を重ね、手を下せなかったということなのだろうか。う~ん、よくわからない。

町村は沙織に、赤ん坊を殺したことも小夜子を殺した理由も「一切知らない」で押し通せと念を押していた。

それなら、小夜子以上に、史也と一緒に赤ん坊を殺した当事者である沙織のほうが、生きていれば都合が悪いようにも思える。

それでも殺さなかった理由が、亡き妻の口癖を思い出したから、という説明だけでは少し腑に落ちなかった。

史也と沙織

裁判が終わると、史也は沙織を見つけて声をかける。その様子を中原は少し離れたところから見ていた。

史也は「いろいろと本当に……なんて言ったらいいのか」と言葉を詰まらせる。沙織は「いいえ、気にしないでください」と答えた。

花恵は沙織に頭を下げ、沙織も頭を下げる。そして、そのまま立ち去っていく。

その後、別室では被殺害者遺族会の弁護士・山部が、浜岡夫妻と中原に裁判の争点を説明する。町村の弁護人は情状酌量を訴える方針であり、「娘夫婦と孫を守るため」という動機がどこまで成立するのかが焦点になるという。

史也と沙織が言葉を交わす場面は、正直少し拍子抜けした。

ドラマの中で史也は沙織に一度も謝罪の言葉を言わない。

もちろん21年前、当時高校1年生だった史也が、中学3年生の沙織を妊娠させてしまったことについて、すでに何度も謝っていたのかもしれない。

それでも、その後の21年間はあまりにも対照的だ。

医者になり、結婚し、翔を育てる史也と、自殺未遂多数で万引き依存症の沙織。2人の21年後はあまりにも違う。2人が背負った十字架に違いがあるからなのか?

裁判②

中原は伯父・竹井に会いに行く。

町村の裁判が進むにつれ、「小夜子の人生は何だったんだろう」「結局、人を殺した人間に罪を償うことができるのか。いや、そもそもそういう問題なのか」と考えてしまうと話す中原。

すると竹井は、それなら小夜子のことを裁判で話してみたらどうか、君だって彼女の人生の一部だったんだぞ、と勧める。

中原は小夜子の遺品が入った段ボールの中からラップトップを取り出し、電源を入れる。

表示されたパスワード画面を見て、愛美が亡くなった平成28年7月3日に思い至り、「0703」と入力するとログインできた。

そして「思い出」というフォルダの中に残されていた動画を見る。

小夜子は確かに生きていた

中原は裁判で意見陳述をする。

自分は小夜子の元夫であり、11年前に2人で一人娘・愛美を失い、それをきっかけに離婚したこと。

かつては、小夜子の人生を平凡で代わり映えのしない毎日だと思っていた。しかし小夜子自身は、それがどれほどかけがえのない時間だったのかを知っていた。

娘を殺され、その日常を失っても、小夜子は前を向いて闘っていた。

「小夜子は確かに生きていた」

そして中原は、小夜子が人を殺した者は死刑にすべきだと考えていたことにも触れる。

「私には正解が分かりません。人を殺した人間はどう罪を償うべきなのか、この問いに完璧な答えはないのかもしれません。そもそも人間に…完璧な審理は不可能なのかもしれません」と語って意見陳述を終える。

小夜子のラップトップに残されていたのは、家族3人で愛美の誕生日を祝った時や、海へ遊びに行った時など、楽しかった頃の動画だった。

そして印象に残ったのが、中原の呼び方。

意見陳述の最初では「小夜子さん」と呼んでいたのに、途中から「小夜子」に変わっていた。

元妻でも、事件の被害者でもなく、かつて一緒に家族として生きた「小夜子」に戻ったようにも感じた。

一方で、中原は「私には正解がわかりません」「完璧な答えはないのかもしれません」「人間に完璧な審理は不可能かもしれません」と繰り返す。

中原はこの意見陳述で、いったい何を伝えたかったのだろう?

あなたに生きてほしい

裁判が終わると、沙織は中原に伝えたいことがあると声をかける。

沙織は以前、小夜子と一緒に赤ん坊の遺体を埋めた樹海へ行っていた。

そこで小夜子から、「私は…あなたに生きていてほしい。あなたは…自分が奪った命のことを忘れないで。罪と向き合いながら…それでも生きて」と言われた。

死にたいと思い続けていた沙織にとって、その言葉は救いになった。沙織は中原に「ありがとうございました」と頭を下げる。

中原は、小夜子が最後に撮影した森の写真を沙織に見せる。沙織はその場所で間違いないと答え、小夜子はそこでずっと森を見つめていたと話す。

回想では、小夜子が何かに惹きつけられるように森の奥へ歩いていく。そして立ち止まり、木々の間から差し込む光を見上げていた。

小夜子はなぜ、赤ん坊を殺した沙織に「あなたに生きていてほしい」と言ったのだろうか。

沙織は21年間、自分のしたことを悔やみ、自殺未遂を繰り返すほど苦しみ続けていたからだろうか?

見つからない遺体

沙織と史也の立ち会いのもと、警察は赤ん坊の遺体を埋めたという場所を大人数で掘り返す。

しかし、遺体は見つからなかった。

赤ん坊を殺したという2人の供述はあっても、遺体が見つからず殺人を裏付ける証拠がないため、史也と沙織を起訴することはできないという。

その後、中原は森の中で史也と会う。

史也は、法律で裁かれなかったとしても、自分がこの手で赤ん坊を殺したこと、その結果として浜岡小夜子が亡くなったことだけは決して忘れないと話す。

中原は、小夜子が殺されたと聞いても悲しむことができなかったという。

小夜子のことを考えれば考えるほど、ただむなしかった。事件の真相がわかれば少しは何かが変わるのかと思っていたが、結局は余計にむなしくなっただけだった。

21年前の殺人は、遺体が見つからなかったことで史也も沙織も起訴されない。

なんとなく、そんな結末になるのではないかと思っていた。

では史也と沙織は、本当に遺体が見つかってほしかったのだろうか。

結局残ったのは、史也たちが21年前の罪を隠し続けたことで、21年後に小夜子が殺されたという現実だけだった。

何かが壊れた中原

中原は史也に、赤ん坊の遺体が見つかれば何か変わるのだろうか、いや、きっと見つかっても何も変わらないと話す。そして、「自分でも変なんです。ずっとおかしな気分なんです」と言い、小夜子が見つめていたという森の奥へ入っていく。

史也は、帰り道がわからなくなるからそれ以上は駄目だと止めるが、中原は歩みを止めない。

やがて足を滑らせて倒れた中原は、「僕は……小夜子のことを考え続けることしかできない」とつぶやく。すると史也も、自分もあの日のこと、殺してしまった赤ん坊のことを思い続けるしかないと答える。

仰向けに倒れた中原の顔に木漏れ日が差し込み、森の中が明るくなる。その時、中原には明るい光の中に立つ小夜子の姿が見える。

「闇ばかりじゃないの。光もあるのよ」

小夜子はそういうが、どういうことなのか?だから希望を持って生きろ、ということなのか?

かつて小夜子は、愛美を殺されたことで「心が死んだんだと思う」と沙織に話していた。そして今、愛美だけでなく小夜子まで失った中原も、何かが壊れてしまったように見えた。

判決、そして

「主文、被告人を懲役15年に処する」

判決を聞き、小夜子の両親は動揺する。中原は表情を変えず、町村は目を閉じ、どこかホッとしたようにも見える。史也と花恵も表情を変えなかった。

裁判後、史也は中原に、近いうちに家族で富山へ引っ越し、花恵の生まれ故郷にある無医村で働くつもりだと話す。中原は、自分は今の仕事を続け、これからも代わり映えのしない毎日を送ると答える。

そして史也に歩み寄り、「お元気で」と右手を差し出す。史也は少しためらいながらその手を握り、「中原さんも」と返す。中原は何も言わず、表情も変えないまま、その場を立ち去った。

その後、中原はいつも通り仕事に戻る。

従業員の神田から、火葬の際に一緒に棺へ入れてほしい物があったと言われ、中原は事務所へ取りに行く。そこで小夜子の遺品が入った段ボールから、愛美が描いた家族3人で海へ行った時の絵を見つける。

裏には、「パパへ 絵なおしたよ また3人で海に行こうね」と書かれていた。それを見た中原は、「愛美、ごめんね。小夜子……ごめん」と声を上げて泣く。しかししばらくすると自分を落ち着かせ、紙袋を持って事務所を出ていく。

机の上には愛美の描いた海の絵が残され、波の音と、かつて家族3人で海で遊んでいた声が重なる。

史也はこのあと、花恵の生まれ故郷である小さな村へ移り住むという。ただ、父親の町村が殺人犯となった花恵が、その故郷で本当に平穏に暮らしていけるのかは少し気になった。

そして中原。荷物を取りに行ったわずかな時間に事務所で声を上げて泣き、それでも自分を落ち着かせて、待っている神田のもとへ戻っていく。代わり映えしない毎日を送るという中原だが、以前とは違い何かが壊れているように見えた。

まとめ|罪を償っても、壊れたものは元に戻らない

最終回はモヤモヤした結末になるのだろうなと思っていた通り、見終えて「結局なんだったんだろう?」という感じだった。

特に印象に残ったのは、死刑や償いそのものよりも、花恵の言動だった。

小夜子から史也の過去を聞いて「見逃してください」と頼み、中原には「ただ刑務所で過ごすのと、主人のような生き方と、どちらが真の償いだと思いますか?」と問いかける。

さらに、史也が町村と一緒に警察へ行き、21年前のことも自首すると言った時には、「お父さんの願い聞いてやって」と止めてしまう。

どれも史也を守るためなのだろうけれど、花恵の自分本意な数々の言動に嫌気が差した。

小夜子が家に来た日も、なぜ花恵は町村を帰らせなかったのか。父親に史也の秘密を聞かせるためだったのではないか、小夜子を自分のために排除してほしかったのではないか、とすら思えてしまった。

そして町村もよくわからない。

小夜子は殺したのに、史也と一緒に赤ん坊を殺した当事者である沙織を殺さなかった理由が、「亡くなった妻の口癖を思い出したから」というのは、どうにも腑に落ちなかった。

本当に娘を守るためなら、小夜子以上に沙織のほうが生きていて困る存在だったはずではないのか。

史也についても同じように引っかかる。

赤ん坊を殺したこと、樹海に埋めたことについては触れるが、沙織を妊娠させたことについて深く懺悔する姿は、どこにも描かれていないのが不思議。

若気の至りというにはあまりにもひどいし、沙織に対して何か責任はとったのか?花恵と翔を救い、町村を金銭的に援助するよりも、本来もっと向き合うべきだったのは沙織ではなかったのかと思ってしまう。

そしてもう一つ気になったのが、結局見つからなかった赤ん坊の遺体。

警察が樹海を捜しても見つからないのではないかと思っていたのは、史也の母・妙子の存在があったからだ。探偵を雇って翔の父親まで調べ、花恵との離婚を迫るような妙子が、21年前の史也の異変にまったく気づかなかったとはどうしても思えない。

何度も樹海へ通っていた史也の秘密を知り、史也の知らないところで妙子が遺体を掘り返して処分していたのでは……なんてことまで考えてしまった。

人を殺した人への判決、そして被害者家族、加害者家族。扱われた題材は難しく、罪を償うということについて考えさせられる作品だったが、被害者家族にとっては、犯人が償いとして何をしたとしても心の傷が癒えることはないのだろうと思った。そして一度壊れた心はもう元には戻らないようにも思う。

小説が原作だけあって、重みのあるドラマだった思う反面、この手の内容や結末は楽しめる人を選ぶ作品だとも思った。

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