『相棒 season23』第17話「盗まれた死体」は、闇バイトを使って犯罪を繰り返す反社会的組織「スカル」を追う話だった。
死体入りのスーツケースが盗まれ、組織犯罪対策部の刑事が拉致され、その娘まで犯罪に巻き込まれていく。
かなり多くの出来事を1時間に詰め込んでいるので、少々忙しさはある。
それでも、闇バイトに巻き込まれる人間の事情、住田と美香のかなわない恋、そして正体不明だったスカルのトップ「ユキチ」の意外な迂闊さまで、『相棒』らしく最後まできれいに片づけてくれた。
弱みにつけ込んで逃げられなくする闇バイト
今回まず怖かったのは、園宮芽瑠が闇バイトへ巻き込まれた経緯。
芽瑠は道で男とぶつかり、皿を割ったとして弁償を要求される。
その際に免許証の写真を撮られ、それを材料に脅されて「運び」の仕事をするようになった。
最初から犯罪に手を染めようとして応募したわけではない。
ちょっとしたトラブルをきっかけに個人情報を握られ、逃げられなくなっていく。
一方で、自ら闇バイトへ足を踏み入れた人物も登場する。
今回の話では、同じ犯罪組織に使われている人間でも、そこへ至るまでの事情はそれぞれ違っていた。
スーツケースの「死体」がいなくなる
芽瑠が運んでいたスーツケースには、血まみれの男が入っていた。
ところが、スーツケースを見つけた時には中身が消えている。
調べると、中に入っていたのはスカルのメンバーである住田龍介だった。
ただし住田は死んでいなかった。
組織に粛清されて刺されたものの一命を取り留め、スーツケースから脱出していた。
「盗まれた死体」というタイトルから、遺体を巡る事件なのかと思わせておいて、そもそも死体ではなかった。
こういう少し変則的な入り口は『相棒』らしくて面白い。
住田はなぜ羽藤刑事を拉致したのか
住田が守ろうとしていたのは、かつての恋人・羽藤美香だった。
美香の父親は、スカルを追う組織犯罪対策部の刑事・羽藤真一。
警察官の娘と反社会的組織の一員。
住田はこの関係が成立しないと考え、美香へ一方的に別れを告げていた。
ところがユキチは二人の関係を知り、美香を犯罪へ巻き込むことで羽藤刑事を追い詰めようとする。
住田はそれを阻止しようとして粛清された。
そして自分の力では美香を助けられないと考え、羽藤刑事を拉致して警察に捜索させようとする。
やっていることだけを見れば、とんでもなく回りくどい。
しかし住田には、警察へ普通に助けを求めても信じてもらえないという思いがあった。
犯罪者になってしまった人間が、警察官の娘を救いたいと言っても信用されない。
その諦めが、さらに別の犯罪へつながってしまった。
出会わなければよかったとは言い切れない
住田と美香が出会っていなければ、美香がスカルに狙われることもなかった。
そう考えれば、二人の出会いは不幸の始まりだったとも言える。
しかし、美香が犯罪へ巻き込まれそうになった時、命がけで助けようとしたのも住田だった。
出会わなければ危険にも遭わなかった。
けれど出会ったからこそ、住田は最後まで彼女を守ろうとした。
どちらが正解なのかは簡単には決められない。
このあたりは、事件が解決した後の小手鞠さんの言葉につながっていく。
正体不明の「ユキチ」は意外と迂闊だった
今回、個人的に一番ツッコミたくなったのはスカルのトップ・ユキチである。
警察が特別班まで作って追っているのに、素性すら分からない。
そこまで慎重な人物なのかと思いきや、自分で現場を監視している。
しかも、自分で撮影した動画の窓ガラスにスマートフォンのストラップが映り込んでしまう。
そのストラップが決め手となり、右京さんに正体を見破られた。
隠し続けてきた犯罪組織のトップが、まさかの「映り込み」で終了である。
しかもそのストラップは職人の手作りで、同じものが二つとない。
そんな特徴的な物を付けたまま犯罪用の動画を撮るあたり、かなり大胆というか迂闊というか……。
闇の犯罪組織を率いる大物感を出していた割には、最後の最後で急に生活感のあるミスをしてしまった。
「金のない奴らが悪い」では済まされない
捕まったユキチは、自分は仕事を与えただけであり、簡単についてくる人間が悪いという趣旨の言葉を口にする。
そこで右京さんが激怒する。
闇バイトでは、実行犯だけを捕まえて終わりというわけにはいかない。
弱みにつけ込んだり、金に困っている人間を利用したりしながら、自分自身は安全な場所から指示を出す。
そして問題が起きれば、その人間を簡単に切り捨てる。
今回の右京さんが強く怒ったのは、その「使い捨てにして当然」という考え方そのものだったのだと思う。
なぜか気になる雀荘「七対子」
事件とは直接関係ないが、妙に頭に残ったのが雀荘の名前である。
その名も「七対子」。
麻雀を知っている人ならすぐ分かる、七対子である。
なぜその名前にしたのか。
店主が七対子好きなのか。
単純に麻雀っぽい言葉から選んだだけなのか。
こういう本筋とはまったく関係ないところが妙に気になってしまう。
殺人、拉致、闇バイトと重い話が続いている中で、突然「雀荘 七対子」が出てくるので、変なところで記憶に残った。
小手鞠さんの「かなわなかった恋にも意味がある」
最後は「こてまり」で今回の事件を振り返る。
亀山くんは、住田と美香について、二人は出会わなかったほうがよかったのかと疑問を口にする。
そこで小手鞠さんが、
「かなわなかった恋にもそれぞれ意味があるんですよ」
と答える。
やはり今回も小手鞠さんはかっこいい。
結ばれなかったから失敗だったとも、出会ったから幸せだったとも単純には言わない。
かなわなかったとしても、その人と出会ったこと自体には意味がある。
今回の事件を全部説明した後に、最後だけ少し余白を残してくれる。
こういう締め方は『相棒』らしくていい。
まとめ|闇バイトよりユキチの映り込みが気になった第17話
『相棒 season23』第17話は、闇バイト、犯罪組織、住田と美香の恋、羽藤刑事の拉致と、かなり多くの要素が詰まった一話だった。
弱みにつけ込まれて犯罪へ巻き込まれる人間がいる一方、自ら足を踏み入れて戻れなくなる人間もいる。
その中で住田は、自分が犯罪者になってしまったからこそ、美香だけは同じ場所へ引きずり込みたくなかったのだろう。
重い題材ではあるが、最後はスカルのトップが自分の動画への映り込みから特定されるという、少々拍子抜けする決着でもあった。
そして締めは、小手鞠さんの「かなわなかった恋にもそれぞれ意味がある」。
事件そのものはいつもの『相棒』という印象だったが、ツッコミどころも含めて気軽に見られる一話だったと思う。
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▶ 【相棒23】第16話感想|「どこで咲いても花は花」が描いた才能と親子の関係
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