池井戸作品はあまり見ないけれど、『かばん屋の相続』は全4話で1話完結というので全話見てみた、姉です。
今回は第3話「セールストーク」、第4話「かばん屋の相続」の少しネタバレを含む感想と、全4話を見終えて個人的に面白かった順番について書いていきます。
第3話は銀行支店長の不正を部下たちが暴いていく話、第4話は老舗かばん店の相続をめぐる兄弟の話。
どちらも最後にはスッキリするところがあり、全4話を見終えてみると、個人的な順位もかなりはっきりした。
第3話「セールストーク」
ちょっとネタバレ
おおまかな流れとしては……。
融資を断られた印刷会社の社長・小島が5000万円の資金を調達したのを不思議に思った融資課長・北村とその部下・江藤は、小島に5000万円について尋ねると「昔、困りごとを解決して助けた人から貸してもらった」という。
しかし、同じ支店の2つの会社に翌月、翌々月と同額の5000万円が出入金されていたりする奇妙な状態であることがわかってくる。
北村は支店長が運転資金として5000万円をここ最近2社に融資していることを思い出し、その2社の社長と話をするも、二人とも話をはぐらかし本当のことはわからない。
小島は過去に支店長・田山の不倫問題の解決のため、不倫相手に手切れ金300万円を支払い、田山を助けていた。そこで融資がおりず困った小島は、支店長の田山に相談。借りのある田山は銀行の金5000万円を小島に用意した。
田山は他の会社(塗装店)の運転資金の融資という名目で5000万円を用意し、そのまま小島の会社に回すよう塗装店の社長に指示していた。塗装店の社長は難色を示すも、自分の会社も融資を受けている立場上、田山の話を受けざるを得なかった。
すると、印刷会社の社長・小島は北村と江藤を呼び出し、提出している書類(附属明細書)の内容に一部虚偽があったので、正しいものと差し替えてほしいという。
小島は5000万円の出どころをずっと黙っていようかと思っていたが、他の会社が巻き込まれるのは話が別、と書類の中のコンサルティング料300万円の支払先名を「田山勝治」と修正した書類を渡したことで、北村たちはことの全貌を知る。
そして「与信検査」で支店長の悪事が暴かれる、という感じの話。
支店長が追い詰められていくのが痛快
ギリギリで中小企業を経営する社長にとって、融資を受けている銀行の支店長は絶大な力を持っていて、逆らうことは難しいことなのだということがわかりやすく描かれていたと思う。
支店長という立場を利用し、融資をしている会社(立場が弱く言いなりになる会社)に無理を通させていた田山が「与信検査」で言い逃れができず、どんどん窮地に追い込まれていく様は痛快で、最終的に懲戒免職となるのも気分がすっきりして良かった。
支店長の不正を同じ支店の部下が暴くという話で、話の中に出てくる中小企業の社長たちは巻き添えを食らい会社を潰すこともなかったのでほっとした。
いつの時代設定の話か正確にはわからないけれど、皆ガラケーを使っていて、銀行の看板や備品のファイルなど、ところどころに「水色」が使われていたのが印象的な面白い話だった。
第4話「かばん屋の相続」
ちょっとネタバレ
この話は老舗のかばん屋、松田かばんの社長・松田義文が亡くなった後に、会社の株式をすべて、本来家業を継ぐと思われていた次男の均ではなく、元銀行員の長男・亮に相続させるという遺言状を残していたことで起きる様々な問題。生前父親が次男に話していた話や、遺言状の真相など見どころがたくさん。
プライドの高い長男・亮は銀行員だった時代、父親の会社や一緒に働いている次男・均をバカにして見下していた。しかし、銀行でヘマをやらかし出世コースから外れたことに耐えきれず銀行を辞め、父親の死後、「会社の株は全て長男に」という遺言状を盾に社長となる。
弟は新たに会社を起こし、共に働いてきた職人たちもそちらに移りたいとついてきてくれた。
そうこうしているうちに、先代社長が連帯保証(5億円までの借金を全て保証)している会社が不渡りを出し、社長(兄)は連帯保証については知らなかった、と信用金庫に話をしに行く。
そこに弟が登場。
入院している父親に自分が会社を継ぐと言った時、父親から「この会社はおそらく潰れる。相続を放棄して会社は潰し、職人たちと別の会社を作れ」と言われ、その時に連帯保証の件も聞かされていたことを明かす。
弟は、そんな危ない会社を父親が何も知らない兄に黙って継がせるはずがないと考え、遺言状が父親の意思とは関係なく兄に書かされたものだとわかっていた。
弟は父親が生前贈与してくれた1000万円の小切手を少しでも足しになればと兄に渡そうとするも、兄は「バカにすんな!」と受け取らない……が、弟を抱きしめる。結局、兄は受け継いだ会社を潰してしまう。
信用金庫の融資担当・小倉は、先代が遺言状にサインをしたのは薬で朦朧としていたからではなく、あえて言いなりになったんじゃないか?こういう結果になると最初からわかっていて、だまされたフリをした。亮さん(兄)に人の道を、まっとうなビジネスマンとはどうあるべきかを教えようとしたんじゃないか?痛い目にあえば気がつくだろうって。あの先代のことを考えるとやりそう、ひょうひょうとして……と思いを巡らす。
その後、松田かばんの本社社屋が競売にかけられ、絶対に落札したい均(弟)は小倉に7000万円の融資を頼み、無事落札することができた。小倉は均に、自分だけでなく父親も松田かばんが好きで、何十年も使い続けていると話す。
チラシを配っていたサンタは、かばんを修理してもらおうと松田かばんへ。20年以上使っていて、亡くなった妻からのプレゼントなので思い入れがあると話す。
均が預かり表に書く名前を尋ねると「小倉です」。
ここで均はピンとくる。
信用金庫の融資担当・小倉太郎の父親だった。
店を出ると、そこには息子の太郎がいる。太郎がクリスマスプレゼントとして焼肉をごちそうすると話すと、父親は、もうプレゼントはもらったと言う。
社長が太郎のことを「あんなに親身になってくれる融資担当者は初めてだ」と褒めていた。それが父親にとっては何よりのプレゼントだった……という感じ。
父親の遺言は最初から計算だった?
この話で一番印象に残ったのは、やはり兄が父親の遺言で社長となった会社が他の会社の連帯保証をしていて、その会社が不渡りを出し、ピンチになった時の弟とのやりとり。
遺言状を書いた時の父親は、本来、継がせるつもりのない会社の株をすべて兄に……と、薬で朦朧としていてわけもわからず書いたのか。
はたまた、こういうこと(意思とは関係なく遺言を書かせる)をするなら、痛い目にあっても知らないぞ……という気持ちで書いたのか?
どちらにしてもプライドが高く、人を見下し欲深い兄が痛い目を見るのは、まさにざまあみろといった感じ。
そんなわけでとんでもない兄だけど唯一、少しでも足しにと弟が父親から生前贈与された1000万円の小切手を渡そうとした時に、受け取らなかったのは良かった。
ストーリーが面白いのはもちろんだが、弟・均の中尾明慶さん、兄・亮の青柳翔さんはピッタリの配役で、純粋に物語を楽しむことができた。
こちらの話もいつの時代設定の話か正確にはわからないけれど、皆ガラケーを使っていて、銀行の看板や備品のファイルなど、ところどころに「オレンジ」が使われていたのが印象的な話だった。
全4話で一番面白かったのは……
先日、第1話・第2話について書いています。
【かばん屋の相続】第1・2話感想|2つの銀行ドラマを見比べて感じたこと
2日間で一話完結のドラマが4話配信されたので、自然と4つを比べてしまう。
ちょっと酷だけれど、個人的に面白かった順番をつけると……。
4位:第2話「芥のごとく」
3位:第3話「セールストーク」
2位:第1話「十年目のクリスマス」
1位:第4話「かばん屋の相続」
4位の「芥のごとく」は、毎月の支払いの資金調達に奔走する中小企業の社長と融資担当の話で、最終的に社長は逃げてしまい……という話。
3位の「セールストーク」は、銀行の支店長が借りのある中小企業の社長に金を融通するために起こした不正を部下たちが暴き、支店長が懲戒免職になる話。
2位の「十年目のクリスマス」は、中小企業の社長が会社を潰す際に以前から用意していた計画で銀行の支店長と融資担当に復讐。その後の社長は成功しているという話。
1位の「かばん屋の相続」は、兄は父親の会社に問題があるのも知らず、父親に遺言書を書かせ会社を乗っ取るも、その問題により会社は倒産。弟は父親の言葉通り、新しく会社を作り、倒産したかばん屋の看板を守るという話。
どの話もそれなりに面白く、さすが池井戸作品といったところ。4話とも50~54分で話が完結していてサクッと見られるのもとても良い。
何かハッピーエンドでスッキリする面白いドラマを1時間くらいで見たいな……なんて時には、「かばん屋の相続」「十年目のクリスマス」「セールストーク」はピッタリだと思う。
