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【相棒23】最終回感想|一岡を倒しても終わらない、「新世代のフィクサー」浦神鹿の不気味さ

相棒シーズン23 ドラマ感想(コラム)
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『相棒 season23』最終回・第19話「怪物と聖剣~決戦」は、前回から続く都政の闇と、その裏で動く人間たちを描いた話だった。

年間100億円を超える税金の不可解な流出、都知事・一岡光と唐揚げ店主・木原健二の関係、さらにその上にいる「新世代のフィクサー」浦神鹿。

かなり大きな話ではあるが、最終的には一岡が国政へ進出する直前で失脚するところまでに収まり、個人的にはちょうどよかったと思う。

政治の闇を扱う『相棒』は、ともすると話が巨大化しすぎることもある。

今回は世界を動かす秘密結社のようなところまで行かず、最後まで「目の前の権力者をどう止めるか」という話として見られた。

木原と一岡の関係は最後まで少し分かりにくい

今回の実行役として浮かび上がったのが、「キズナチキン」の店主・木原健二だった。

木原は一岡が都知事になる前から関係を持ち、邪魔になる人物を排除してきた。

前都知事の死にも関与し、橋迫倫子の自宅襲撃にも手を貸している。

さらに木原は、一岡との会話を自分を守るための証拠として残していた。

その映像によって、一岡が木原へ前都知事の排除を示唆していたことまで明らかになる。

ここまで来れば二人がかなり深い関係だったことは分かる。

ただ、そもそもなぜこの二人がそこまで強く結びついたのかは、最後まで少し分かりにくかった。

金だけの関係だったのか。

一岡がまだ何者でもなかった頃から、木原が何かしらの夢を託していたのか。

あるいは単純に、お互いの欲望が都合よく一致しただけなのか。

犯罪の経緯は分かっても、二人の関係が始まったきっかけまではあまり描かれなかったので、そこだけ少し消化不良が残った。

「キズナチキン」はやっぱり怪しかった

前回から妙に気になっていた「キズナチキン」。

高校生以下には無料で唐揚げを提供する、いかにも地域に優しい店だった。

やはり単なる善意だけではなかった。

木原自身が幼い頃に苦労していたため、困っている子どもを助けたいという気持ちはあったのかもしれない。

しかし同時に、行き場のない若者を囲い込み、犯罪に利用できる人間を集める場所にもなっていたように見える。

善意と搾取が同じ場所に存在している。

ここが木原という人物の嫌なところである。

自分では人を助けているつもりなのかもしれない。

だが、その人間を最後には自分のための道具として使ってしまう。

店名が「絆」なのも、改めて考えるとなかなか皮肉だった。

上から止められても右京さんと亀山さんは止まらない

木原を逮捕したところで、警察上層部は事件を終わらせようとする。

一岡との関係まで追えば、政治的な問題になる。

そこで右京さんたちには捜査をやめるよう命令が出る。

しかし当然、二人は止まらない。

右京さんは、疑わしい人物が権力者だからという理由で捜査をしないのであれば、警察そのものの存在理由がなくなると主張する。

亀山くんも、「上の命令」があるなら現場で働く「下の人間」にも意思があると訴える。

最終回らしい場面だった。

『相棒』では何度も「組織と個人」という話を描いてきた。

今回も結局、制度や命令より前に、一人の警察官として何をするのかというところへ戻ってくる。

一岡の正体は「大物」ではなく軽い人だった

前回では、一岡が大きな権力を持つ怪物のように見えていた。

ところが真相が明らかになるほど、その中身は意外なほど軽い。

木原に前都知事を消してほしいと話したことも、橋迫都議について口にしたことも、本人に重大な犯罪を指示しているという自覚が薄いように見える。

追及されても、責任は木原や職員にあると言い逃れようとする。

最後まで「自分は悪くない」で押し通そうとする。

右京さんが一岡の言動の「軽さ」を指摘したのも納得できる。

巨大な悪だから怖いのではない。

深く考えないまま大きな権力を持ってしまった人間だから怖い。

今回の一岡は、そんなタイプの怪物だった。

SNSで作った人気をSNSで崩す

一岡はSNSや動画配信を利用し、大勢の支持者を集めてきた。

そこで右京さんは、同じ場所を使って一岡を追い詰める。

一岡の街頭演説で、木原が都庁へ出入りしていた証拠を公開し、疑惑を一気に表へ出す。

隠された真実には、さらに大きな声で真実をぶつける。

一岡が作り上げた人気そのものを逆利用する形だ。

ただ、これだけでは一岡を完全に失脚させることはできなかった。

彼の周囲には、まだ政治家や財界人など多くの支援者が残っていた。

そこで動いたのが社美彌子だった。

一岡を完全に失脚させた社美彌子さん

右京さんたちが一岡の犯罪を明らかにしても、それだけで政治的な影響力まで消えるとは限らない。

そこで社美彌子は、一岡の取調べ映像を材料にして支持者たちへ圧力をかける。

一岡が取調室で見せた軽薄な態度が世間へ流れれば、彼を支えている側まで傷を負う。

そう示したことで、一岡を守ろうとする人間は一人もいなくなった。

右京さんが事件を解き、社美彌子が政治の世界で逃げ道を塞ぐ。

今回はこの役割分担がかなり面白かった。

そして右京さんは、そもそも今回の事件へ特命係を引き込んだのも社美彌子だったことまで見抜く。

右京さんも相変わらずだが、社美彌子も相変わらずである。

「怪物」を倒した聖剣は現場の警察官だった

タイトルにある「聖剣」が何なのか。

最後に右京さんがその答えを口にする。

特別な武器でも、秘密の証拠でもない。

亀山くんをはじめ、現場で働く警察官たちの正義の心だった。

少しきれいなまとめではある。

しかし今回は、上層部から捜査を止められても現場の人間たちが少しずつ協力し、最終的に一岡へたどり着いた。

角田課長も、大河内さんも、それぞれの立場でできる範囲のことをしている。

巨大な権力に対して、一人の英雄が戦ったわけではない。

それぞれが少しずつ自分のできることをした。

だから「聖剣」という言葉も、それほど大げさには感じなかった。

本当の怪物は浦神鹿なのか

一岡は失脚した。

しかし、その一岡を政治の世界へ押し上げた人物が残っている。

浦神鹿だ。

海外にレアメタルの鉱山を所有し、政財界の大物たちですら意向を気にする「新世代のフィクサー」。

一岡を推薦した理由を問われても、浦はまるで人間を実験材料のように扱う。

一岡が成功しても失敗しても、本人にとってはどちらでもよかったように見える。

ここが怖い。

金や権力そのものを欲しがっている人なら、まだ目的が分かる。

浦の場合は、人間同士の正義や欲望がぶつかり、世界が壊れていく様子そのものを楽しんでいるように見える。

何をしたいのか分からない人間ほど厄介だ。

笑顔で「これから僕と遊んでください」が怖い

事件が終わり、「こてまり」で皆が一岡失脚を祝っているところへ、浦が現れる。

小手鞠さんは浦を「最近よくいらしてくださる」と紹介する。

そして浦は右京さんへ、

「友だちですよね。これから僕と遊んでください」

と近づいてくる。

言葉だけなら親しげなのに、まったく楽しそうには見えない。

むしろ次の事件の予告にしか聞こえない。

右京さんも何も答えず、何とも言えない表情をする。

浦を演じる毎熊克哉さんの笑顔がまた不気味で、今回の最終回で一番印象に残った場面かもしれない。

一岡という怪物を倒したと思ったら、その後ろからもっとよく分からない人物が出てきた。

これで終わりというより、完全に次の登場を予告する締め方だった。

「僕達はやれることをやる。それだけです」

最後、亀山くんは世界がどんどん壊れていき、自分には何もできないような気がすると話す。

そこで右京さんは、

「僕達はやれることをやる。それだけです」

と答える。

浦のような人物が裏で社会を動かしているとしても、すべてを一度に解決することはできない。

それでも目の前の事件を一つずつ追う。

できることを続ける。

長く続いてきた『相棒』という作品そのものにも重なる言葉だったように思う。

まとめ|一岡を倒しても「怪物」はまだ残っている

『相棒 season23』最終回は、一岡都知事を失脚させ、前回から続く事件には一応の決着をつけた。

話の規模も必要以上に大きくならず、最終回としてはきれいにまとまったと思う。

一方で、木原と一岡がどうしてそこまで深い関係になったのかなど、少し説明不足に感じる部分も残った。

そして何より気になるのは浦神鹿だ。

一岡よりもはるかに大きな影響力を持ちながら、目的がまったく見えない。

笑顔で右京さんへ近づき、「これから僕と遊んでください」と言う姿は、一岡とは別種の怖さがある。

season23はこれで終わったが、浦については何も終わっていない。

毎熊克哉さん演じる「新世代のフィクサー」が、次に右京さんたちの前へどう現れるのか。

その時を楽しみにしたい。

前回の感想はこちら。

【相棒23】第18話感想|100億円の税金と都知事、その背後にいる「怪物」とは

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