『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~Season2』第1話では、元ヤンキーを売りに当選した市長をはじめ、過去に同じカラーギャングへ所属していた3人が相次いで殺害される。
事件そのものは復讐をめぐる重い内容だが、捜査では遠隔視線検知や歩容認証といった最新技術が次々に登場。その一方で、スクランブル交差点に紛れた人物を大勢で目視するという、かなり人力寄りの場面もあった。
名波の復帰によって新しい技術は増えたが、捜査一課の思い込みや、犯人側の不可解な行動も健在である。この記事では、第1話を見ながら気になった点にほどよく突っ込みつつ、『大追跡』らしい安定感について振り返る。
『大追跡』は相変わらず気軽に見られる
『大追跡』は、Season2になっても相変わらず気軽に見られる刑事ドラマである。今回扱われたのは、過去にカラーギャングから被害を受けた人々による復讐だった。妹を亡くした和久井や、野球選手になる夢を断たれた寺内の事情は重く、事件だけを見れば決して軽い話ではない。
それでも、ドラマ全体の空気は必要以上に暗くならない。捜査一課とSSBCのやり取りには適度にコメディが入り、名波がアメリカから戻ってきても、チームの雰囲気は前作とほとんど変わっていなかった。Season1を見ていなくても、誰がどの立場にいるのかは何となく分かる。人物関係を細かく覚えていなくても事件を追ううえで困ることはなく、途中からでも入りやすい。
何かを深く考察したり、伏線を一つずつ拾ったりするタイプの作品ではない。事件を一話で追いかけ、最後に犯人を確保し、少しだけ人情を添えて終わる。その安定した作りこそが、『大追跡』の見やすさなのだろう。
名波はアメリカで便利なソフトを覚えて帰ってきた
アメリカ留学から戻ってきた名波は、犯罪心理学と最新のデジタル捜査を学び、再びSSBC強行犯係へ復帰した。キャリアであれば警察庁へ戻るか、どこかの刑事部長になってもおかしくないらしい。しかし名波は、民間からの中途採用という立場を生かし、自ら希望して以前の部署へ戻ってきた。出世より現場を選んだというより、このドラマには名波がいないと、新しい捜査技術を説明する人物がいなくなるからなのかもしれない。
第1話で名波が持ち込んだのは、対象人物の年齢を変化させた顔を予測して写真を探す「サーチフェイスデジタル」と、映像内の人物がどこを見ているのかを判別する「遠隔視線検知ソフト」だった。顔を若返らせて過去の写真を探し、防犯カメラを気にしている人物を視線から見つける。アメリカで学んできたという一言があれば、日本ではまだ使われていない技術も自然に捜査へ投入できる。名波の留学は、便利な新機能を追加するための、大型アップデートだったようである。
もっとも、ソフトが自動的に事件を解決してくれるわけではない。怪しい人物を見つけた後は、SSBCの面々が映像をつなぎながら地道に追いかけていくことになる。最新技術を紹介する名波と、それを人海戦術で使いこなす仲間たち。この新しさと昔ながらの捜査が同居しているところも、『大追跡』らしさなのかもしれない。
最新技術の先で始まった人力捜査
遠隔視線検知ソフトによって、SSBCは防犯カメラを気にしながら歩いている人物を見つけ出した。スマートフォンを見ているように装いながら、実際にはカメラの位置を確認している。普通に映像を眺めているだけでは見落としそうな動きを検知できるのだから、確かに便利な技術である。
ところが、その人物がハチ公前のスクランブル交差点へ入ったところから、捜査は急に人力へ切り替わる。大勢の通行人が行き交う映像を前に、SSBCの面々は対象人物がどこへ向かったのかを目で追い続ける。最新ソフトによって怪しい人物を発見したはずが、その先に待っていたのは、画面いっぱいに広がる壮大な間違い探しだった。
顔や服装を指定して自動追跡できないのかとも思うが、そう簡単に終わってしまえば、SSBCの面々が忙しそうに映像を見る場面がなくなってしまう。名波が新しい技術を提案し、それを大勢で地道に運用するところまでが、『大追跡』におけるデジタル捜査なのだろう。
さらに、地下へ入られると防犯カメラによる追跡も途切れてしまう。東京中に張り巡らされたカメラを使っても、映っていない場所へ逃げられれば追えない。この万能ではない感じは、かえって現実的でもある。最先端の技術で入口を見つけ、最後は人の目と根気で追いかける。デジタル捜査というより、デジタル技術を使った人海戦術である。
寺内を犯人と決めつける捜査一課
青柳は、レッドヘルによって野球選手への道を断たれた寺内敬二郎へたどり着く。寺内には3人を恨む十分な理由があり、映像に映っていた人物とも歩容認証が一致した。ここまで材料がそろえば、疑うのは当然である。
ただ、八重樫はかなり早い段階で「3人を殺したのはこいつだろう」と判断してしまう。さらに、伊垣たちが別の人物も現場付近にいた可能性を伝えても、青柳は捜査を混乱させるなと取り合わない。結果的に、寺内が殺したのは橋本紗希だけであり、森田と原口を殺したのは和久井だった。つまり、SSBCが抱いた違和感のほうが正しかったことになる。
もちろん、捜査では有力な容疑者を追う必要がある。しかし、歩容認証が一致しない人物まで出ているのに、「もう犯人は寺内でよい」と進んでしまうのは少々危うい。『大追跡』では、SSBCが映像から違和感を拾い、捜査一課がそれを勢いで押し切ろうとする。
この対立によって話が動くのだが、今回も捜査一課の見込み捜査がかなり露骨だった。そして毎回のこと、名波が自分はいずれあなたの上司になる人間だといって説得が始まり、八重樫が「はうっ!」というコンボも健在だった。
その後、青柳は取り調べで寺内を挑発し、ようやく真相を引き出す。決めつけは危ういが、口を開かせる力はある。青柳は、捜査の精度より圧で前へ進むタイプなのかもしれない。
「一切同情しない」という青柳の言葉
寺内は、和久井がレッドヘルへの復讐を果たしたことに感謝していた。自分は森田を殺そうとしても実行できなかった。その後、原口と森田が相次いで死亡し、紗希を突き落とした和久井とも出会う。寺内にとって和久井は、自分ができなかったことを代わりにやってくれた人物でもあった。
だからこそ、寺内は和久井をかばおうとする。妹を傷つけられ、その後も深い苦しみを抱えたまま亡くした。しかも和久井自身は余命3か月だった。事情だけを聞けば、同情したくなる部分は確かにある。
しかし青柳は、そんな寺内に対して「私は一切同情しない」と言い切った。この言葉は少し強すぎるようにも聞こえる。被害者としての和久井に同情することと、殺人を正当化することは別だからである。実際、和久井が背負ってきた苦しみまで否定する必要はない。
ただ、青柳があえて強く突き放したのは、寺内が復讐を肯定しかけていたからだろう。和久井には事情がある。余命も短い。それでも、人を殺してよい理由にはならない。その一線を曖昧にしないために、青柳は共感ではなく拒絶を選んだ。言葉としては乱暴だが、寺内を復讐への共感から引き戻すには必要な強さだったのかもしれない。
最後だけ急に手加減する和久井
和久井は、森田と原口、そして紗希を次々に殺害した。防犯カメラの位置を気にし、スマートフォンを別の車両へ乗せて警察をかく乱するなど、行動はかなり計画的である。最後の標的である梶の居場所にも自力でたどり着き、ナイフを手に襲いかかった。
ところが、いよいよ梶を殺せそうになった場面で、和久井はなぜかナイフを捨て、首を絞め始める。
それまでの手際を考えると、急に効率が悪くなった。しかも、ちょうどそこへ名波たちが到着し、梶は間一髪で助かる。刑事ドラマでは、警察が駆けつける直前になると犯人の動きが少しだけ遅くなることがあるが、今回もその法則が静かに発動していた。もちろん、和久井が最後の瞬間にためらったとも考えられる。梶を目の前にして怒りがあふれ、計画よりも感情が先に出たのかもしれない。
ただ、映像だけを見ると、警察の到着時間に合わせて殺害方法を変更したようにも見える。ここまで周到に動いてきた和久井が、最後だけ妙に手間のかかる方法を選ぶ。そのおかげで梶は助かったのだから、物語としては必要な手加減だったのだろう。
Season2で始まった謎の人事異動
Season2では、名波がSSBCへ復帰した一方で、機動捜査隊にも人事異動があった。新たに牧島鈴花が配属され、これまで機動捜査隊にいた源晋太郎は鑑識課へ異動している。
しかし、機動捜査隊から鑑識という移動は、ずいぶん思い切った配置換えである。本人の希望なのか、何か専門的な経験があったのか、第1話では特に説明されない。ただ、源自身は次は捜査一課に行くと張り切っていた。
わざわざ所属まで変えた以上、今後の事件で鑑識として登場するのだろう。単なるキャスト整理であれば、ここまで具体的な異動先を設定する必要もない。牧島を機動捜査隊へ加え、源を鑑識へ移す。Season2では、それぞれの部署に必要な人物を先に配置しているようにも見える。
事件そのものに大きな縦軸はなさそうだが、この唐突な人事異動には、脚本上の明確な都合がありそうだ。今後、現場に残された証拠を源が都合よく見つける日も、そう遠くないのかもしれない。
Season2も変わらず安定運転
Season2の第1話を見終えても、『大追跡』の印象は前作とほとんど変わらなかった。最新のデジタル技術を使って事件を追いながら、捜査一課とSSBCがぶつかり、最後は犯人の事情にも少し触れて終わる。途中には適度なコメディも入り、重い事件を扱っていても、必要以上に暗くならない。
今回の事件も、特別に驚くような展開ではなかった。犯人が1人ではないことや、寺内とは別に和久井が動いていることも、途中からある程度は予想できる。それでも、まったく退屈というわけではない。防犯カメラ映像を追い、少しずつ真相へ近づいていく流れは分かりやすく、気軽に見ていられる。
突っ込みどころはある。むしろ、そうした部分を含めて見られるのが『大追跡』なのだと思う。何かを深く考察したくなる作品ではないが、毎週の刑事ドラマとしては安定している。Season2になって大きく変わったわけではない。その変わらなさこそが、このシリーズの強みなのだろう。
