『大追跡 Season2』第5話では、研修医・深堀健一のバイクが放火される事件から始まる。
ところが捜査を進めると、火災現場には被害者とまったく同じ「深堀健一」という名前の男がいたことが判明。そこで警察は、研修医を「深堀A」、もう一人を「深堀B」と呼ぶことに。
もうこの時点でだいぶ面白いのだが、今回はそれだけでは終わらない。
深堀Bの弁護士として現れたのは、八重樫の高校野球部時代の先輩。そこで明かされる「悪夢の双子トンネル」という過去。
さらに女性用ウィッグの広告が捜査の手がかりになったり、半年間続いていた連続放火犯が最後にあっさり捕まったりと、今回も突っ込みどころには事欠かない。
深堀Aと深堀B、そして悪夢の双子トンネル。第5話で気になったところを振り返ってみたい。
深堀Aと深堀Bという呼び方が強すぎる
同姓同名だからAとBで区別する警察
研修医の深堀健一が被害に遭った放火事件を調べていると、現場近くにいた別の男も「深堀健一」という名前だった。
漢字までまったく同じ。ややこしいので、名波は研修医のほうを「深堀A」、もう一人を「深堀B」と呼ぶことを提案する。
確かに分かりやすい。分かりやすいのだが、人をAとBで呼び始める警察というのもなかなかである。
しかも「研修医の深堀A」「港区男子の深堀B」という分類まで加わり、急に事件関係者が実験サンプルのようになった。
そのまま普通に定着していく深堀Aと深堀B
最初は単なる便宜上の呼び方だったはずなのに、その後は誰も疑問を持たない。
「深堀Bのスマホ」「深堀Aに確認」と、完全に正式名称のような扱いで捜査が進んでいく。
本人たちが聞いたらどう思うのかはさておき、視聴者としては非常に分かりやすい。今回ばかりは警察の雑なネーミングセンスに助けられた気もする。
そして気づけば、本名の「深堀健一」より「深堀A」「深堀B」のほうが頭に残っている。
葛原まで「もう少し深堀すると」と言い出す
さらに葛原は、同姓同名の2人について話しながら「もう少し深堀すると」と口にする。
深堀健一を深堀している最中に「深堀する」。
狙ったのか偶然なのか分からないが、ここまで来ると名前そのものが事件に参加している。
ちなみにエンドロールのキャストでも「深堀健一A」と書かれていた。どうやら公式の呼び名らしい。
第5話は放火や殺人を扱っているはずなのに、序盤から「深堀A」「深堀B」「深堀する」が並び、別の意味で情報量が多かった。
今回も八重樫は犯人を決めるのが早い
深堀Bが現場にいた
放火現場の野次馬写真を調べていると、そこにはなぜか深堀Bの姿が写っていた。
しかも火事を見ているだけならまだしも、現場で笑っているようにも見える。さらに防犯カメラを追うと、火災現場近くに車を止めていたことまで判明した。
ここまで来ると、確かに怪しい。
そして八重樫に「怪しい人物」を見せると、だいたい次に何を言うかはもう決まっている。
同じライターを持っていて右手にはやけど
深堀BのSNSには、放火現場に落ちていた高級ブランドのライターと同じものを持っている写真まであった。
さらに防犯カメラでは、車へ戻る際に右手を押さえている。調べると実際にやけどを負っており、近くの病院で治療まで受けていた。
現場にいた。同じライターを持っていた。手にはやけど。
ここまで材料が並べば、視聴者だってかなり疑いたくなる。
そこまで揃ったら八重樫はもう犯人認定
もちろん八重樫は待たない。
まだ本人から事情を十分に聞いたわけでもないのに、早々に「こいつが犯人だ」と決めてしまう。
第1話から何度も見てきた光景なので、もはや八重樫が誰かを犯人認定すると、「さて今回はどこからひっくり返るのだろう」と思ってしまう。
とはいえ今回は珍しく、その読み自体はかなり当たっていた。
深堀Bは実際にバイクへ放火していたのである。
ただし、その先にもっと大きな事件が待っていたあたりが、やはり『大追跡』だった。
悪夢の双子トンネルに弱すぎる八重樫
深堀Bの弁護士は高校野球部の先輩だった
深堀Bを任意同行しようとしたところ、母親がすぐに弁護士を呼ぶ。
やってきた番場正義は、深堀家の顧問弁護士。そして八重樫にとっては、高校野球部時代の先輩でもあった。
普段なら「とっとと捕まえろ」と勢いのいい八重樫だが、番場の前では急に様子がおかしくなる。
警視庁捜査一課長を一瞬で高校球児に戻してしまう男。それが番場だった。
双子そろってトンネルしてサヨナラ負け
なぜ八重樫がそこまで番場に弱いのか。
原因は高校時代の試合にあった。
八重樫の兄がトンネルし、続いて弟の八重樫もトンネル。そのままサヨナラ負けしたという。
しかも青森では今なお「悪夢の双子トンネル」として語り草になっているらしい。
高校野球の一試合にしては、ずいぶん長く語り継がれている。
殺人や放火を扱う刑事ドラマの途中で、突然こんな強烈な過去を差し込まれたら、事件よりそちらが気になってしまう。
警視庁捜査一課長になっても消えない高校時代の傷
八重樫はいまや警視庁捜査一課長である。
それでも野球部の先輩を前にすると萎縮し、深堀Bのスマホ提出を求めることにも及び腰になってしまう。
名波から「天下の警視庁捜査一課長でしょ!」とまで叱咤され、ようやく腹をくくる始末だ。
高校時代のトンネルが、何十年後の捜査にまで影響するとは誰が想像しただろう。
八重樫にとっては、殺人事件より消えない傷だったのかもしれない。
最後は「もうエラーはしねえよ」で克服
最終的に八重樫は番場にひるまず、深堀Bを放火容疑、冴子を殺人容疑で逮捕したことを伝える。
そして最後に飛び出したのが、
「もうエラーはしねえよ。俺は天下の警視庁捜査一課長だかんな」
という一言だった。
ここまで野球で引っ張った以上、最後も野球で締める。
深堀親子の事件と並行して、八重樫が「悪夢の双子トンネル」を乗り越える物語まで完結してしまった第5話だった。
女性用ウィッグの広告が捜査の決め手になる
龍村の話し相手だけ防犯カメラに映っていない
龍村と深堀Bがどこかで接触していたはずだと考えた伊垣たちは、防犯カメラを追っていく。
するとショッピングモールの映像に龍村の姿があった。
誰かと話しているのだが、肝心の相手だけがカメラの死角に入っていて映っていない。
こういう時こそ別角度の防犯カメラ、と思ったらそれもない。
最新のデジタル捜査を売りにしているドラマなのに、肝心なところだけ妙にカメラが足りない。
デジタルサイネージには女性向け広告
そこで名波たちが注目したのが、龍村の近くにあったデジタルサイネージだった。
この広告は、カメラでその場にいる人の性別や年齢を判定し、それに合わせた広告を表示する仕組みだという。
そして龍村が誰かと話していた時、画面に出ていたのは女性用ウィッグの広告だった。
防犯カメラには相手が映っていない。
しかし広告は相手を見ていた。
見えない人物を広告から絞り込むSSBC
その結果、龍村と会っていたのは深堀Bではなく、母親の冴子ではないかと捜査が進んでいく。
人物そのものは映っていないのに、その人へ向けて表示された広告から正体に近づく。
これまで顔認証や歩容認証などいろいろ登場してきたが、今回はとうとう広告まで捜査員になった。
防犯カメラが見逃しても、デジタルサイネージは見ている。
街中の広告も油断ならない時代である。
「親が子どもを守る」はどこまでなのか
冴子は息子を守るため龍村を殺害
深堀Bの放火を知った龍村は、動画をネタに冴子へ3000万円を要求する。
冴子は金を渡すふりをして龍村と会い、隙を見て包丁で刺した。
しかも一度刺して終わりではない。「あなたが生きてちゃ、意味ないのよ」とさらに手をかける。
息子を守りたいという気持ちは分かるとしても、やっていることは完全に別の犯罪である。
放火まで自分の犯行だとかばおうとする
それだけではなく、冴子は深堀Bが起こした放火まで自分がやったと認めようとする。
殺人だけでなく、息子の罪まで全部引き受けるつもりだった。
本人は「親が子どもを守るのは当然でしょ!」と言うが、25歳の息子をここまで守るとなると、さすがに話は変わってくる。
何をしても親が後始末してくれるのなら、本人が自分の行動に責任を持つ機会はなくなってしまう。
守ることと責任を肩代わりすることは同じなのか
冴子は最後まで、自分は息子を守っているつもりだったのだろう。
しかし、犯罪を隠し、脅してきた相手を殺し、その罪まで引き受けようとすることは、本当に「守る」ことなのか。
むしろ何でも親が片づけてしまうからこそ、深堀Bは25歳になっても自分の責任と向き合えないままだったようにも見える。
親が子どもを守ることと、子どもの責任まで肩代わりすることは同じではない。
深堀Aと深堀B、悪夢の双子トンネルと妙な言葉が飛び交った今回だが、最後に残ったのは意外と重たい親子の話だった。
半年間追っていた連続放火犯は最後に偶然捕まる
地理的プロファイリングまでしていた連続放火
深堀Aのバイク放火を調べる中で、半年前から調布・府中・三鷹で続いていた連続放火事件との関連も疑われる。
そこでSSBCは、犯行現場の位置から犯人の居住地を推測する地理的プロファイリングまで開始した。
ところが木沢いわく、今回の放火だけはそれまでの事件と少し違う。
かなり大がかりに分析を始めたわりに、早い段階で「これは別件かもしれない」となる。
深堀Bとは別の犯人だった
結局、深堀Aのバイクに火をつけたのは深堀Bだった。
つまり、半年間続いていた連続放火事件とは無関係である。
ここまで来ると、最初に出てきた連続放火事件はどうなるのかと思うが、その答えはラストに用意されていた。
最後は巡回中の機捜が発見
事件が解決したあと、沢村と牧島が連続放火犯を警戒して巡回している。
すると、ちょうど放火している人物を発見。
そのまま現行犯逮捕となった。
半年間捕まらず、SSBCが地理的プロファイリングまでしていた犯人が、最後は巡回中の機捜の目の前で火をつける。
確かに木沢のプロファイリングがあったから、次はここかもと予想できたのかもしれない。
それにしても急な解決だった。
まとめ|深堀Aと深堀B、そして悪夢の双子トンネルだった第5話
第5話は、同姓同名の二人を「深堀A」「深堀B」と呼び始めた時点ですでにかなり強かった。
そこへ八重樫の高校時代の黒歴史「悪夢の双子トンネル」まで加わり、事件とは別のところで妙に印象に残る言葉が次々と飛び出してくる。
一方で、女性用ウィッグの広告から冴子へたどり着くデジタル捜査は今回らしい面白さがあり、冴子の「親が子どもを守る」という言葉には少し重たいものも残った。
そして半年間捕まらなかった連続放火犯は、最後に巡回中の機捜が発見して現行犯逮捕。
最新技術を駆使しているはずなのに、最後は人の目と偶然が勝つ。
深堀Aと深堀B、悪夢の双子トンネル、そして最後のあっさり逮捕まで、今回も『大追跡』らしい妙な味わいのある一話だった。
