『大追跡 Season2』第4話では、元暴力団員の辻村が殺害され、兄弟分だった住崎が自ら敵討ちに動き始める。
一方の警察は、事件の裏に半グレ集団の存在があると知るや、久世の「トクリュウ撲滅」の号令を意識した八重樫がいつも以上に前のめり。とにかく逮捕へ走りたがる。
重いはずの敵討ちとトクリュウ捜査が、なぜかところどころ妙にゆるい。第4話も気になったところへ好き勝手につっこんでいく。
トクリュウ撲滅の号令で勝手に焦る
今回の八重樫は、いつにも増して逮捕を急いでいた。
きっかけになったのは、久世がトクリュウ撲滅を強く打ち出していたことだった。本人はしっかりプレッシャーを受け取ってしまったらしい。
その結果、辻村殺害事件を追っていたはずが、山野井たちが半グレだと分かった途端、捜査の優先順位まで怪しくなっていく。
半グレと分かった途端に「証拠なんていい」
山野井のパソコンから、強盗被害に遭った南青山時計店の検索履歴が見つかる。
さらに仲間たちの証言から、山野井たちが闇バイトを使った強盗や特殊詐欺に関わっている可能性も浮上した。
すると八重樫は、待ってましたとばかりに「証拠なんていいから逮捕しろ」と言い出す。
いや、証拠はいる。
しかもここまで捜査してきたのは辻村殺害事件である。
トクリュウの摘発を急ぎたい気持ちは分かるが、一課長自ら証拠を置き去りにしてどうするのか。
殺人事件よりトクリュウ逮捕
青柳が「殺人事件のほうは」と確認すると、八重樫はさらに勢いよく「そんなのはどうでもいい」とまで言ってしまう。
いや、どうでもよくはない。
目の前には辻村が殺害された事件があり、その犯人を追っていたはずである。
ところが「半グレ」「闇バイト」「トクリュウ」という単語が並んだ瞬間、八重樫の頭の中では逮捕へ一直線だ。
今回も名波にお馴染みのあのやり取りでたしなめられ、軌道修正することになった。危ういところだった。
敵討ちがだんだんおつかいに
辻村を目の前で殺された住崎は、警察に任せるつもりなど最初からなかった。
元翔嶋会の若頭であり、今でも暴力団関係者とのつながりが残っている。葛原も「住崎なら犯人を見つけるのは簡単だろう」と警戒し、警察との競争になると考えていた。
こちらも、てっきり裏社会の情報網を駆使して一気に犯人へ近づくのかと思っていた。
ところが始まったのは、思っていたのとは少し違う敵討ちだった。
元暴力団の情報網ならすぐ見つかるはずだった
住崎はまず、現役暴力団員の長谷部から山野井と堺の名前を聞き出す。
ここまではさすが元若頭。警察とは違うルートから、かなり早い段階で犯人候補へたどり着いた。
さらに銃まで入手し、いよいよ裏社会ならではの追跡が始まるのかと思いきや、長谷部は2人の居場所までは知らなかった。
そこで「甥っ子が半グレだから」と合田を紹介される。
甥っ子が半グレだと何が分かるのか?とにかく会いに行くことに。
長谷部から合田へ、合田からさらに探偵へ
住崎は長谷部から紹介された合田に会い、2人の行方を聞く。
ところが合田も居場所までは知らない。
しかもその後、再び合田を頼ると、今度はなぜか探偵を紹介される。
長谷部に聞く。
合田に聞けと言われる。
合田に聞く。
探偵を紹介される。
いつの間にか敵討ちが完全におつかい形式になっている。
次の人物へ話しかけるたびに新しい目的地が表示されそうな勢いである。
公衆トイレで1時間待つ元若頭
さらに妙なのが、合田との待ち合わせ場所である。
住崎は公衆トイレで、合田が来るまで1時間も待っていた。
元若頭が兄弟分の敵討ちに燃え、拳銃まで持って動いているという緊迫した状況なのに、やっていることは公衆トイレで待ちぼうけ。
しかも1時間である。
その間、住崎自身も落ち着かなかっただろうが、普通にトイレを使いたかった人たちも相当落ち着かなかったはずだ。
復讐劇の途中に、なぜこんな生活感のある待ち時間を挟んだのか。
探偵が警察より先に見つけたらSSBCの立場がない
そして最終的には、合田から探偵まで紹介される。
ここまで来ると別の問題が出てくる。
もしこの探偵が山野井と堺を警察より先に見つけてしまったら、SSBCはどうするのか。
警察は大量の防犯カメラ映像を解析し、携帯電話の電波を追い、経歴まで調べて2人の行方を追跡している。
一方の住崎は、知り合いに聞いて、また知り合いを紹介され、最後は町の探偵頼みである。
それで探偵側が勝ったら、「最先端のデジタル捜査」とは何だったのかという話になってしまう。
幸い今回は警察が先に2人へたどり着いた。SSBCの威信は、どうにか守られた。
銃を買ったら弾が2発
住崎は長谷部から山野井と堺の名前を聞き出したあと、金を渡して拳銃まで手に入れる。
いよいよ本気で敵討ちへ向かうのかと思ったところで、長谷部から渡された銃を確認すると、入っていた弾はたったの2発。
住崎は思わず「2人なのにどうすんだ」と文句を言う。
いや、むしろ人数分はある。
住崎が狙っているのは山野井と堺の2人。
弾も2発。
数字だけ見れば足りている。
敵討ちを前にしているのに、やけに在庫確認のような会話になっているのが面白い。
「ケチるからだ」で済まされる銃の売買
住崎が弾の少なさに文句を言うと、長谷部は「ケチるからだ」と返す。
どうやら払った金額に応じて弾数が変わるらしい。
住崎が金がないと答えると、長谷部も「なら仕方ない」とあっさり納得する。
拳銃の売買なのに、妙に値段交渉の温度が軽い。
もっと買いたければ追加料金、予算が足りなければ最低限。復讐も金次第だ。
復讐劇なのに妙に生活感がある
今回の住崎パートは、全体的に妙な生活感がある。
兄弟分を殺され、自分も元ヤクザとして最後の落とし前をつけようとしている。
設定だけ見ればかなり重い。
ところが実際には、知り合いを紹介され、公衆トイレで1時間待たされ、銃を買えば「弾が少ない」「金がない」「なら仕方ない」とやり取りする。
復讐というより、予算の限られた買い物と人探しである。
住崎本人はいたって真剣なのに、周囲の段取りだけが妙に庶民的なのが、第4話の不思議なところだった。
しかも長谷部役が錦鯉の渡辺さんだったことが、余計に漫才でもしているように見えて面白かった。
シークレットスパイダーを素直に入れる半グレ
山野井と堺の身柄を確保し、あとは終わりかと思いきや、名波はさらに一歩踏み込む。
2人が所属する半グレ集団の仲間まで、自分たちで捕まえてしまおうというのだ。
そこで始まったのが、警察とは思えないほど怪しげなネット工作だった。
警察がAI画像を使って半グレを釣る
まずSNSのDMから、「山野井と堺を見つけた」と半グレ側へ連絡する。
もちろん本当に一般人が見つけたわけではない。
警察が正体を隠して接触し、証拠として送る写真までAIで作る。
前回はネットの情報に振り回されていたSSBCが、今回は自分たちで偽情報を作って流し始めたのだ。
50万円まで報酬を吊り上げる謎の交渉
相手は情報の報酬として、最初に10万円を提示する。
すると伊垣は「安売りしたら怪しまれる」と判断。
こちらから金額を提示せず、相手が値段を上げるのを待つことにする。
その結果、報酬は最終的に50万円まで上昇した。
警察が半グレを逮捕するため、架空の情報提供者を演じながら報酬額の値上げ交渉までしている。
捜査というより、だんだん闇取引の商談になってきた。
怪しいアプリを送られてそのままインストール
そして本番である。
SSBCは「自分の身を守りたいので、今後はこちらで連絡してください」と言って、光本が作ったアプリを送りつける。
その名も「シークレットスパイダー」。
名前からしてかなり怪しい。
しかも送ってきたのは、ついさっきSNSで突然接触してきた正体不明の人物である。
闇バイトや特殊詐欺に関わっている連中なら、知らない相手から送られてきたアプリなど真っ先に警戒しそうなものだ。
ところが半グレ側は、素直にインストール。
シークレットスパイダーは無事に位置情報を取得し、アジトが判明する。
半グレを捕まえたというより、半グレが自分から居場所を教えてくれた。
「違法捜査じゃないか」を「俺が責任を取る」で突破
さすがに伊垣も、この方法には疑問を抱く。
「違法捜査じゃないか」と確認するのだが、葛原は「俺が責任を取る」と言って実行を認める。
それでいいのだろうか。
「責任を取る」と言えば、正体を偽ってアプリを送り込み、相手の位置情報を取得しても大丈夫になるわけではないはずである。
とはいえ『大追跡』では、葛原が責任を取ると言えば大体なんとかなる。
こうして最新のデジタル捜査によって半グレのアジトは特定された。
もっとも今回一番必要だった技術は、AIでも位置情報取得でもなく、知らない人から送られてきたアプリを疑いながらも入れてくれる半グレの素直さだった気もする。
警察も住崎も犯人探しが妙に雑
山野井と堺をめぐっては、警察だけでなく住崎、さらには半グレ仲間まで動き出す。
だんだん「誰が最初に見つけるのか」という競争になってくる。
しかも、そのわりに決着のつき方はかなりあっさりしていた。
山野井たちは警察・仲間・住崎から同時に追われる
山野井と堺は警察から追われるだけでなく、グループの金を持ち逃げしたことで半グレ仲間からも狙われる。
さらに辻村の敵討ちに燃える住崎まで加わった。
つまり2人は、
警察から逃げる。
仲間から逃げる。
元ヤクザからも逃げる。
という三方向からの追跡を受けている。
ここまで来ると、むしろどこへ逃げれば安全なのか分からない。
しかもネット上では懸賞金までかけられている。
今回の山野井と堺、犯人というより逃走イベントの参加者みたいになっていた。
最終的には携帯の電源を入れて居場所が判明
警察は防犯カメラを追い、過去の経歴を調べ、2人がどこへ逃げたのかを推測していく。
ところが最終的な決め手になったのは、山野井が携帯電話の電源を入れたことだった。
そして松丸へ電話。
その結果、三浦方面にいることも、誰を頼ったのかも一気に判明する。
あれだけ警察、仲間、元ヤクザから追われている状況で、普通に携帯を使ってしまう。
「シークレットスパイダー」をインストールする仲間といい、今回の半グレ周辺はデジタル方面の警戒心がかなり薄い。
住崎は三浦海岸まで行ったのに犯人に会う前に逮捕
一方、住崎もようやく三浦海岸までたどり着く。
拳銃を用意し、服装まで完全に昔へ戻ったような姿で現れ、「逃げ切れると思うなよ」と気合も十分。
長いおつかいを乗り越え、ついに敵討ちの時が来た。
……と思ったら、待っていたのは山野井でも堺でもなく警察だった。
そのまま身体検査をされ、拳銃が見つかって銃刀法違反の現行犯で逮捕。
犯人に一度も会えていない。
知り合いを何人もたどり、公衆トイレで1時間待ち、探偵まで紹介され、拳銃まで用意して三浦海岸へ来たのに、最後は駅前で警察に捕まって終了である。
敵討ちへの道のりはあれほど長かったのに、逮捕だけは驚くほど早かった。
まとめ|最新デジタル捜査より元ヤクザのおつかいが気になった第4話
第4話は容疑者2人で犯人は別というパターンから抜けて、最初から犯人は分かっているパターンだった。
そして、元暴力団員の社会復帰やトクリュウ犯罪といった重い題材を扱いながら、ところどころ妙に力の抜けた展開が目立つ回だった。
久世のトクリュウ撲滅の号令を、勝手に重く受け止めて暴走する八重樫。知り合いをたどっているうちに、敵討ちがおつかい状態になる住崎。そして、正体不明の相手から送られてきたアプリをインストールしてしまう半グレたち。
最新のデジタル捜査を売りにしているドラマなのに、今回もっとも気になったのは、公衆トイレで1時間待たされながら人づてに犯人を探す元若頭の姿だった。
しかも住崎は拳銃まで用意して三浦海岸へ向かったものの、山野井と堺に会う前に警察に捕まって終了。
一方の警察も、半グレ側が携帯の電源を入れたり、怪しいアプリを入れてくれたりと、相手の素直さにかなり助けられている。
警察と元ヤクザと半グレ、誰が先に犯人へたどり着くのか。
そんな競争を見せられた末、最後に残った印象は意外と、元ヤクザの社会復帰は大変そうだなということだった。
