『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~Season2』第2話では、多摩川で発見された女性の遺体をきっかけに、伝説の結婚詐欺師と警察内部の不正が絡む事件が描かれた。
被害者の身元特定、盗難車の追跡、SNSの復元、テキストマイニング。今回もSSBCらしく、さまざまなデジタル捜査が登場する。
しかし、最後に犯人を追い詰めたのは、壮大な解析システムでも最新鋭の機器でもなかった。
スプーンの上にタピオカ。
そして、タピオカの中には警察官。
サブタイトルの「一粒の証拠」が、本当に一粒のタピオカだったことには驚くしかない。しかも事件解決後には、SSBCのメンバー全員でタピオカを食べ始める。証拠として働いた後は、打ち上げにも参加する。かなり忙しい食べ物だ。
警察官による殺人という重い事件を扱いながら、最後は八重樫の記者会見と田中太郎の投げキッスで、すべてを『大追跡』らしい温度へ戻していく。
今回は、そんな第2話の気になったところを、タピオカを中心に振り返る。
第2話は一粒のタピオカがすべてを持っていった
第2話の事件は、警察官である奈良岡が捜査で得た情報を悪用し、栗原千香を殺害して金を奪ったという重いものだった。
しかも奈良岡は、自分へ疑いが向かないよう、伝説の結婚詐欺師・田中太郎と、その被害者である大村和美を犯人候補として用意していた。かなり周到な計画である。
しかし、そんな計画を最後に打ち破ったのは、一粒のタピオカだった。
犯行動機も偽装工作も警察内部の不正も、すべてがタピオカの表面に映った小さな顔によって回収される。第2話を見終えた後に残るのは、奈良岡の執念でも田中太郎の恋愛論でもない。
タピオカである。
本当に「一粒の証拠」だった
第2話のサブタイトルは「一粒の証拠」。
ドラマが始まった時点では、遺体から見つかる微細な付着物や、犯行現場に落ちていた小さな証拠品を想像するところだろう。
ところが、実際に犯人を追い詰めた一粒はタピオカだった。
千香のSNSに投稿された写真を拡大すると、彼女が持っていた飲み物のスプーンにタピオカが乗っている。そして、その黒く丸い表面には、サングラスをかけた奈良岡の姿が映り込んでいた。
比喩でも何でもない。本当に一粒の証拠である。
タイトルをここまで正面から回収されると、もはや感心するしかない。タピオカが出た瞬間、それまで積み上げてきた捜査の緊張感まで一緒に吸い込まれていった。
タピオカの表面から顔認証できるSSBC
奈良岡は、自分が写真に映っているはずがないと最後まで否定した。
そこで伊垣たちが示したのが、タピオカの表面に映る人物像だった。さらにSSBCは、その小さな反射像を顔認証にかけ、奈良岡本人だと特定している。
防犯カメラ、歩容認証、テキストマイニングに続き、ついにタピオカまで捜査対象になった。
球面に映ったサングラス姿の人物から本人を割り出せるのだから、SSBCの技術力は相当なものである。もはや街中の光沢がある物体は、すべて防犯カメラ候補と考えたほうがよい。
もっとも、奈良岡のDNAは犯行車両からも検出されていた。
タピオカがなくても最終的には逮捕できたような気もするが、それでは「一粒の証拠」にならない。奈良岡を追い詰めるだけならDNAで十分でも、第2話を完成させるにはタピオカが必要だったのである。
最後は全員でタピオカを食べる
事件解決後、SSBCのメンバーは全員でタピオカを食べていた。
犯人を映し、顔認証に耐え、記者会見を混乱させた後は、捜査員たちの腹まで満たす。第2話におけるタピオカの働きぶりは、誰よりも大きい。
普通なら、事件を解決へ導いた証拠品と同じ食べ物を、その日のうちにみんなで楽しもうとは思わないかもしれない。
しかし、そこを気にしないのが『大追跡』である。
しかもタピオカをきっかけに、今度は仁科の失恋話が始まる。殺人事件を解決した直後とは思えない軽やかさだが、重い空気をいつまでも引きずらないところも、このドラマらしい。
最新デジタル捜査の裏で、今回も始まる人海戦術
『大追跡』といえば、防犯カメラ映像や顔認証、各種デジタル解析を駆使するSSBC強行犯係の活躍が見どころである。
今回も、破損したスマートフォンからデータを復元し、結婚詐欺師たちのメッセージをテキストマイニングで分析し、SNS写真の小さな映り込みまで拡大した。
ここまで聞けば、すべてが最新技術によって鮮やかに解決したように思える。
しかし、その裏では捜査員たちが映像を一つずつ確認していた。
どれだけ技術が進歩しても、最後に必要なのは人の目と根気。第1話に続き、第2話でもSSBCの本当の強みは忍耐力なのかもしれない。
顔認証でも身元不明だった千香
多摩川の河川敷で発見された女性は、身元を示すものを何も持っていなかった。
警察の指紋データにも該当せず、顔認証を使っても誰なのか分からない。そこで遺体のDNAを調べ、親子関係にあるとみられる栗原政則へたどり着いた。
政則は、遺体の写真を見てすぐに娘の千香だと認めている。
ただし、政則が千香と最後に会ったのは、彼女が19歳の頃だった。千香は死亡時45歳なので、実に26年間会っていなかったことになる。
警視庁の顔認証システムでは分からなかった人物を、26年間会っていない父親は一目で見抜いた。
さすが父親というべきなのか、それとも政則の顔認証能力がSSBCを上回っているのか。親子の絆は、ときに最新技術より高性能である。
車を一台ずつ確認する捜査員たち
犯行に使われた盗難車が見つかると、SSBCでは奈良岡につながる車を探す作業が始まった。
そこで行われたのは、捜査員たちによる映像の目視確認である。
第1話でも、スクランブル交差点にいる人物を大勢の中から探し出すため、捜査員たちは映像とにらみ合っていた。今回もまた、車を一台ずつ確認していく。
最新技術を扱う部署なのだから、ナンバーや車種、走行経路を自動で絞り込めそうな気もするが、毎回最後は人海戦術だ。
奈良岡の偽装計画は周到なのか雑なのか
奈良岡は、衝動的に栗原千香を殺したわけではない。
捜査二課の刑事という立場を利用して千香の資産情報をつかみ、ネットバンキングのIDとパスワードを聞き出す。千香を睡眠薬で眠らせ、盗難車で多摩川まで運び、川へ落とした後には海外口座を経由して金を移した。
さらに、自分へ疑いが向かないよう、犯人役まで二人用意していた。
ここまで並べると、かなり周到な計画に見える。
一方で、タピオカには顔が映り、犯行車両にはDNAを残している。用意周到なのかおっちょこちょいなのか、よく分からない人物だ。
田中太郎と大村和美を犯人候補に用意
奈良岡が最初に犯人として差し出したのは、伝説の結婚詐欺師・田中太郎だった。
田中は実際に城島丈二と名乗って千香へ近づき、150万円を受け取っている。身分も名前も偽り、複数の女性から金を得てきた過去もある。警察が疑う相手としては、これ以上ないほど分かりやすい。
しかし、田中には犯行時刻のアリバイがあった。
そこで浮上したのが、田中に騙されながら、今も彼を婚約者だと信じていた大村和美である。
奈良岡は「宮沢」という刑事を名乗って和美を二子玉川へ呼び出し、千香の写真を撮らせていた。その写真を千香の死後にSNSへ投稿すれば、和美が千香と会っていた証拠のように見える。
田中が駄目なら和美。
奈良岡は最初から二つの計画を用意していたらしい。
ただし、田中のアリバイは固定電話の留守電から判明し、和美の位置情報もスマートフォンに残っていた。どちらもデジタル捜査をされると、意外と早く崩れてしまう。
SSBCを相手にするには、少々デジタルへの備えが足りなかった。
本物の刑事ならIDとパスワードを聞き出せるのか
奈良岡は結婚詐欺の相談を受ける中で、千香のネットバンキングのIDとパスワードを聞き出したという。
伊垣は、偽の警察官なら怪しまれても、奈良岡は本物の警察官なので、千香が疑わずに教えても不思議ではないと説明していた。
本物だからこそ安心するという理屈は分かる。
それでも、IDとパスワードをそのまま伝えるかどうかは、少し考えたいところだ。
警察官から「捜査に必要です」と言われたとしても、普通は銀行への照会や取引履歴の提出で済みそうなものだ。暗証情報まで本人から聞き出そうとすれば、むしろ怪しさが増す気もする。
しかし、千香は結婚詐欺の被害に遭い、頼った先の刑事にも利用されてしまった。
城島丈二を信じた気持ちも、警察へ相談した判断も、どちらも奈良岡に悪用されたことになる。つっこみどころのある展開ではあるが、千香にとっては救いのない話でもあった。
タピオカには映り、犯行車両にはDNAを残す
奈良岡は、盗難車、睡眠薬、海外口座、偽名の刑事、SNSの投稿時刻まで利用して犯行を隠そうとした。
ところが、千香を撮影した際にはタピオカの表面に姿が映り込んでいた。
黒く小さな球体に残るほどのわずかな反射まで計算に入れろというのは、さすがに犯人へ求めるものが多い。タピオカを警戒して行動する人間は、そうはいないだろう。
こちらは奈良岡に同情する余地が少しある。
しかし、犯行に使った車から本人のDNAが検出されたとなると話は別である。
海外口座を経由して送金する慎重さがありながら、車内には自分の痕跡を残していた。しかも、そのDNAが逮捕の決め手になっている。
タピオカの映り込みは予測不能だったとしても、犯行車両はもう少し念入りに扱えたはずだ。
奈良岡の計画は、細部では非常に凝っている。しかし全体を眺めると、田中の留守電、和美の位置情報、送金経路、オンラインカジノの履歴、タピオカ、DNAと、自分へ続く道を何本も残していた。
周到なのか雑なのか。謎だ。
田中太郎は最後までよく分からない人だった
第2話には、奈良岡以上に何を考えているのか分からない人物がいた。
伝説の結婚詐欺師・田中太郎である。
田中は30年近くにわたり、名前も肩書きも変えながら女性へ近づき、結婚をほのめかして金を受け取ってきた。それでも本人は、自分がしていることを詐欺とは認めない。
すべて恋愛だったという。
田中の中では、偽名も偽の職業も、金を受け取った直後に姿を消すことも、恋愛に含まれているらしい。一般的な恋愛の範囲からはかなり遠くまで来ているが、本人だけは最後まで迷いがなかった。
詐欺ではなく恋愛だったと言い張る
田中は城島丈二と名乗り、千香へ近づいた。
イタリアの服を扱うセレクトショップを経営していると偽り、結婚式の日取りまで話し合い、最終的には150万円を受け取って姿を消した。
過去にも、パイロット、弁護士、美容整形外科医などを名乗っている。
名前と職業を変えるたびに別人になり、相手から金を得る。しかし田中によれば、これは詐欺ではなく恋愛である。
なぜ名前を偽ったのかと問われれば、田中太郎という平凡な名前にコンプレックスがあったから。なぜ金を受け取った後に消えたのかと問われれば、相手が素敵すぎたから。
質問をするほど、田中の説明は恋愛から離れていく。
それでも本人は「私は愛の逃亡者」と言い切る。確かに逃げていることだけは、間違いない。
数珠を求めた直後の投げキッス
青柳から千香の死を突きつけられた田中は、しばらく黙っていた。
そして口にしたのが、「お数珠を貸してください、刑事さん」だった。
千香を弔おうとしたのだろうか。少なくとも、この瞬間だけは何かを感じたようにも見える。
ところが、その直後に青柳へ投げキッスをした。
数珠から投げキッスまでの距離が近すぎる。
反省したのか、祈ろうとしたのか、青柳を口説こうとしたのか。ほんの数秒の間に、田中の中では複数の感情が通過したらしい。
あるいは、何も通過していなかったのかもしれない。
結局、田中太郎がどこまで本気で恋愛だと思っているのか、千香の死をどう受け止めたのかは分からなかった。
分かったのは、最後までよく分からない人だったということだ。
重い事件なのに重くなりすぎない『大追跡』
第2話で描かれたのは、警察官が捜査情報を悪用し、相談者を殺害して金を奪う事件だった。
被害者は結婚詐欺に遭っただけでなく、助けを求めた警察官にも裏切られた。内容だけを並べれば、かなり重い。
それでも『大追跡』は、最後まで重苦しい捜査ドラマにはならなかった。
タピオカに映った犯人、説明を放棄する八重樫、数珠の後に投げキッスをする田中、事件解決後のタピオカ会。深刻な場面のすぐ隣に笑える場面を置き、空気が沈み切る前に持ち上げていく。
警察官の犯罪もコメディの温度で描く
犯人が警察官だった以上、本来なら警察組織の責任や捜査情報の管理まで問われる事件である。
久世は隠蔽せず、直ちに公表するよう八重樫へ命じた。ここだけ見れば、組織内部の不祥事を正面から扱う展開だった。
しかし、記者会見で質問がタピオカへ向かうと、八重樫は、
「スプーンの上にタピオカ! タピオカの中になんと警察の人間が! その名もゴメス、年齢不詳」
という見出しを提案して、その場から逃げてしまう。
警察官による殺人事件の会見が、いつの間にかタピオカ入りの見出し会議になっていた。
重い事実を軽く扱っているというより、事件の重さを残しながら、ドラマ全体まで暗くしないための逃げ道を作っているように見える。
真剣に捜査し、犯人を逮捕した後は、少し笑って終わる。それが『大追跡』の基本姿勢だ。
つっこみながら見るのがちょうどいい
タピオカの表面から顔認証できるのか。
本物の刑事に言われたら、ネットバンキングのIDとパスワードを教えるのか。
周到な偽装工作をした奈良岡が、なぜ犯行車両にDNAを残したのか。
第2話には、立ち止まって考えると気になる点がいくつもある。
ただし、それらを一つずつ厳密に検証し始めると、このドラマの楽しみ方から少し外れてしまう。
『大追跡』は、最新デジタル捜査の正確な再現を見るドラマというより、次はどんな技術と妙な展開が事件を解決へ運ぶのかを楽しむドラマだと思っている。
真面目に追いかけながら、タピオカが出てきたら素直に笑う。
疑問を感じたら、作品へ怒るのではなく、そのまま一言つっこむ。
そのくらいの距離で見ると、かなり気軽に楽しめる。
第2話も事件は解決した。奈良岡は逮捕され、警察の不祥事も公表された。そして視聴者の記憶には、一粒のタピオカと田中太郎の投げキッスが残った。
まとめ|タピオカと投げキッスで締めくくった第2話
第2話で描かれたのは、結婚詐欺の被害に遭った女性が、相談相手だった警察官に殺されるという重い事件だった。
奈良岡は捜査で得た情報を悪用し、田中太郎と大村和美を犯人候補として用意する。盗難車や海外口座まで使った偽装計画は周到に見えたが、タピオカの表面には姿が映り、犯行車両にはDNAまで残していた。
そして事件を解決へ導いたのは、本当に一粒のタピオカだった。
さらに記者会見では、八重樫が「スプーンの上にタピオカ! タピオカの中になんと警察の人間が!」と暴走し、田中太郎は数珠を求めた直後に投げキッスをする。
警察官による殺人という深刻な話だったはずなのに、見終わった後に残るのは、タピオカとゴメスと投げキッスである。
しかし、それでいいのだと思う。
『大追跡』は、細かな辻褄を厳密に検証するより、最新技術と人海戦術が入り交じる捜査を眺めながら、ときどき画面へつっこむくらいがちょうどいい。
今回も事件はきちんと解決した。
そして最後には、タピオカまできちんと食べた。
重い事件を扱いながら、決して重苦しいまま終わらない。第2話もまた、何とも言えない軽やかさで走り切った回だった。
