最終回では、元裁判官と元検事を狙った連続襲撃事件から、刑務所内にいる宇喜多健介へ捜査が伸びていく。
裁判官、検事、そして次は刑事。いかにも最終回らしい大事件なのだが、最後に宇喜多へたどり着く決定打となったのは、スーパーコンピューターでもAIでもない。
車内に置かれていたティッシュだった。
タピオカから始まり、女性用ウィッグ広告、イヤホン、そしてティッシュ。今シーズンも「そこを見るのか」という証拠が次々と事件を解決してきた。
今回はそんな『大追跡 Season2』最終回を、いつものように少し突っ込みながら振り返っていく。
刑務所の中から司法関係者を狙う宇喜多
元裁判官、元検事、そして次は刑事
最終回で起きたのは、元裁判官・木場良雄と元検事・津上祐司が相次いで襲われる事件だった。
2人は過去に同じ事件を担当しており、木場は裁判官、津上は検事として被告人を刑務所へ送った側の人間である。
となれば次に狙われるのは、事件を捜査して逮捕した刑事ではないか。
実際、伊垣が過去に取り調べた高野竜二や、青柳が逮捕した滝川遥人に疑いが向けられ、なぜか八重樫まで「自分も狙われているのでは」と怯え始める。
ところが本当に事件の中心にいたのは、すでに刑務所の中にいる宇喜多健介だった。
宇喜多は以前、トクリュウによる強盗殺人事件の指示役として逮捕され、無期懲役の判決を受けている。
普通に考えれば、もう外で犯罪を起こすことなどできなさそうなものだ。
しかし宇喜多には、まだ外で動かせる人間と金があった。
裁判官、検事、そして次は捜査一課長。
刑務所に入れられた恨みを、司法に関わった人間へ順番に返していこうとしていたのである。
無期懲役でも53億円あれば犯罪はできる?
宇喜多が隠し持っていた金は、なんと53億円。
警察がこれまで回収できなかったトクリュウの犯罪収益だった。
宇喜多は同じ刑務所にいた高野を使い、さらに外国人3人を実行役として動かしていた。
木場殺害の報酬として1億円、津上殺害では2億円。さらに八重樫を殺せば次の報酬が用意されるという、とんでもないシステムである。
しかも宇喜多本人は無期懲役。
本人も言っているように、もう外へ出て酒を飲んだり、好きなことをしたりすることはできない。
そこで見つけた「絶望の先にある楽しみ」が、刑務所の中から大金を使って世の中を動かすことだったらしい。
なんとも迷惑な暇つぶしである。
ただ、53億円も隠し持っていれば、本人が刑務所にいても犯罪を動かせてしまうというのは確かに怖い。
身体は閉じ込められていても、金と人間関係までは刑務所の中に閉じ込められていなかった。
刑務所の面会室が妙にライブハウスっぽい
そんな宇喜多に話を聞くため、青柳、伊垣、名波の3人は府中刑務所へ向かう。
ここで事件とはまったく関係ないのだが、どうにも気になったのが面会室である。
宇喜多のいる側と刑事たちのいる側が、よく見る刑務所ドラマのような小さなガラス越しの面会室ではない。
広めの空間にガラス張りのドアがあり、宇喜多も立ち上がって歩き回りながら堂々と語り始める。
なんというか、刑務所の面会室というより、イベント会場とかライブハウスっぽい。
しかも宇喜多は途中からパブロ・エスコバルの話まで始め、「絶望の先にある楽しみ」について熱弁する。
最終的には机の上にまで乗って大演説を始めるので、ますますライブ感が増していく。
内容は恐ろしいのに、見た目だけ妙にステージ映えする宇喜多。
最終回の大ボスなのだから、これくらいの舞台が必要だったのかもしれない。
八重樫が狙われている……と思ったら外国人3人組
自宅の近くで聞こえる金属バットの音
元裁判官、元検事と続けて襲われたことで、次の標的は刑事ではないかと警戒が強まる。
そんな中、八重樫の自宅近くで、金属バットを地面に引きずるような音が聞こえてくる。
ただでさえ「次は刑事」と言われている状況である。
八重樫はすっかり自分が狙われていると思い込み、青柳に電話。
しかも「俺がやられてもいいのかよ」とまで言い出し、警備をつけてもらうことになる。
その後、自宅から約200メートル離れた防犯カメラには、金属バットを持った3人組まで映っていた。
いよいよ本当に八重樫が狙われているのか。
と思ったら、映像に残っていた音声を確認すると、3人は外国人だった。
しかも八重樫個人に恨みがあるというより、宇喜多の指示で動く別働隊である可能性が浮上する。
八重樫の勘違いというわけではないのだが、本人の怯え方が強すぎるせいで、どうしても少し面白く見えてしまう。
警視庁に泊まり込み、愛用の枕まで届けてもらう
危険がある以上、自宅へ戻るわけにもいかない。
そこで八重樫は警視庁に泊まり込むことになる。
ところが本人は「寝られない」と不満げ。
すると古手川が、八重樫の妻から預かったという愛用の枕をわざわざ届けてくれる。
命を狙われている可能性がある一課長に必要なのは、警備でも防弾チョッキでもなく、まず枕だった。
いや、睡眠は大事なのだが。
最終回で緊迫した展開が続いているのに、なぜかここだけ妙に生活感がある。
愛用の枕を抱えて警視庁に泊まる捜査一課長。
『大追跡』は最後まで八重樫の扱いをよく分かっている。
最終回でも八重樫は八重樫だった
考えてみれば八重樫は今シーズン、毎回のように「こいつが犯人だ」と早めに決めつけ、SSBCに止められ、名波に説得されてきた。
最終回でも基本は変わらない。
自分が狙われているかもしれないとなれば一気に不安になり、警備を求め、警視庁に泊まり、枕まで持ち込む。
それでも最後には、宇喜多の逮捕を記者会見で発表する大役をきっちり担当する。
しかも会見では「命を狙われていたんですね」と言われ、「ここ面白がるところじゃないよ」と返していたのに、最後には記者たちから拍手を送られ、思わず感極まってしまう。
威張る。
焦る。
怖がる。
そして最後には少し愛される。
最終回だからといって急に格好いい一課長になるわけでもない。
最後まで八重樫は八重樫だった。
名波の「僕の伯父が~」が最終回でまさかの完成形
前回なかった恒例フレーズが復活
『大追跡』といえば、名波が八重樫を説得するときに始まる「僕の伯父が~」である。
ところが第8話では、その恒例フレーズがまさかの不発。
認知面接について説明する場面はあったものの、八重樫を説得するいつもの流れには入らなかった。
ここまで毎週のように見ていると、事件そのものより「今回は伯父が出るのか」が気になってくる。
そんな状態で迎えた最終回。
しっかり復活した。
しかも、ただ戻ってきただけではない。
しかも伯父本人・久世官房長官が隣にいる
宇喜多への面会に名波も同行したいと申し出るが、八重樫は「アメリカに一年いたぐらいで」とやや否定的。
すると久世官房長官が「ぐらいで?」と反応する。
さらに名波も反対側から八重樫へ近づき、いつもの「僕の伯父が~」が始まる。
しかし今回は、その伯父本人がすぐ隣にいる。
これまで名波が毎週のように持ち出していた「伯父」という存在が、ついに実体化して参加してきた。
しかも久世自身が、名波の経歴まで補足し始める。
もはや説得材料を本人が横から追加してくれる状態である。
最終回にして完成形を見せられた気がする。
二人が交互に八重樫を説得する謎の連携プレー
さらに面白いのが、名波と久世が交互に八重樫を説得していくところ。
名波が伯父の話をする。
その伯父本人が横から補足する。
八重樫が抵抗する。
また名波が押す。
完全に挟み撃ちである。
しかも最後には、伊垣まで同行させてほしいと名波が言い出す。
八重樫が渋ると、名波はただ一言。
「伯父さん」
すると八重樫は、すぐに「行っちゃって行っちゃって」と許可。
久世官房長官、もはや説得材料どころか許可証になっている。
第8話で一度姿を消した「僕の伯父が~」だったが、最終回では本人登場という最大火力で帰ってきた。
毎週積み重ねてきたお約束を、最後にここまで膨らませるとは思わなかった。
車のティッシュから会話を復元する「ビジュアルマイクロフォン」
ティッシュの微かな振動から音声を復元
高野が宇喜多から指示を受けていたことを立証するため、SSBCが使ったのが「ビジュアルマイクロフォン」だった。
津上元検事が殺害される約2時間前、高野は車の中にいた。その防犯カメラ映像を確認すると、車内にはティッシュボックスが置かれている。
そこで木沢たちは、映像に映ったティッシュペーパーのわずかな揺れに注目する。
音は空気を振動させ、その振動は周囲の物にも伝わる。ならば逆に、物の揺れを解析すれば、その場で発生していた音を復元できるというわけである。
そして実際にティッシュの振動を解析すると、高野が外国人グループに報酬を渡す話や、宇喜多が金を持っていることを話していた音声が復元された。
最新のデジタル捜査である。
ただし、解析対象はティッシュである。
シーズン最終回の決め手が「ティッシュの揺れ」になるとは、誰が予想しただろうか。
それまで全然揺れていないティッシュ問題
理屈としては分かる。
分かるのだが、映像を見ていると別のことが気になってしまう。
車内に置かれているティッシュが、それまで妙に静かなのである。
時期的にはかなり暑そうで、最後にSSBCのみんなが食べていた島原名物のかんざらしについても、暑い時にはいいという話をしていた。
となると、高野も車内でエアコンくらいつけていそうなものだ。
エアコンをつければ風でティッシュが揺れそうだし、車が少し動いたり、人が体を動かしたりしても多少は揺れそうである。
ところが肝心のティッシュは、高野がしゃべった時の振動だけを都合よく保存してくれていたらしい。
なんとも捜査協力的なティッシュである。
もちろん、実際の解析ではさまざまなノイズを除去して必要な振動だけを抽出するのだろう。
それでも画面だけ見ていると、「このティッシュ、会話以外では全然揺れないな」と思ってしまう。
そして最終的に宇喜多へ突きつけられたのが、このティッシュから復元された音声だった。
53億円を隠し持ち、刑務所の中から司法制度そのものを狙った宇喜多。
そんな大掛かりな犯罪計画を崩したのが、車内に何気なく置かれていたティッシュ1枚。
この妙なスケール差こそ、『大追跡』らしい最終回だったのかもしれない。
タピオカからティッシュまで、何でも事件を解決する『大追跡』
『大追跡』といえば、SSBCによる最新のデジタル捜査が売りのドラマである。
実際、顔認証や歩容認証、FDP、位置情報解析など、いかにも最先端らしい技術が次々と登場した。
ただ、振り返ってみると事件解決の決め手になったものが、なかなか独特だった。
第2話では、SNSに投稿された写真を拡大。
なんとスプーンに乗ったタピオカの表面に奈良岡の姿が映り込んでおり、顔認証によって本人だと特定された。
第5話では、龍村が誰かと話している防犯カメラ映像を確認するものの、相手は死角に入っていて姿が見えない。
そこで手がかりになったのが、デジタルサイネージに表示されていた女性用ウィッグの広告。
カメラが目の前の人物を女性と判断したことで、龍村と話していたのが冴子だとたどり着いた。
第7話では、誘拐された小山田の居場所を探すために最新捜査を総動員。
ところが大きな突破口になったのは、小山田がポケットに入れていたイヤホンの位置情報だった。
そして最終回。
53億円を隠し持ち、刑務所の中から司法関係者の殺害を指示していた宇喜多を追い詰めたのは、車内に置かれていたティッシュ1枚だった。
タピオカ。
女性用ウィッグの広告。
イヤホン。
そしてティッシュ。
こうして並べてみると、本当に何でも事件を解決している。
最新のデジタル技術そのものより、「そこに注目するのか」という着眼点のほうが印象に残ることも多かった。
SSBCを見ていると、犯罪現場では何が証拠になるか分からないということがよく分かる。
少なくとも『大追跡』の世界では、タピオカもティッシュも油断できない。
宇喜多の53億円はどうやって動かしていたのか
出所者にパスワードを伝言させる仕組み
宇喜多が隠し持っていた53億円は、ただ口座に眠っていただけではなかった。
高野は、木場元裁判官殺害後に1億円、津上元検事殺害後には2億円を暗号資産から現金化していた。
ただし、金を引き出すにはその都度パスワードが必要だった。
そこで宇喜多は、刑務所内で接触した別の受刑者を連絡役として使っていたらしい。
最初の1億円を引き出す際のパスワードを高野へ伝えたのは、宇喜多と同部屋だった坂上洋二。
さらに2億円を引き出す際には、同じ作業場にいた駒田勝也が出所後に高野へメモを渡していた。
つまり宇喜多は、自分が直接外部と連絡しなくても、これから出所する受刑者にパスワードを覚えさせておき、外に出たあと高野へ伝えさせていたということになる。
刑務所の中から人を動かすために、出所者を伝書鳩のように使っていたわけである。
なかなかよく考えた仕組みだった。
でも「その都度新しいパスワード」はどう設定していた?
ただ、ここで一つ引っかかる。
高野が金を引き出すには、木場殺害後には1億円用、津上殺害後には2億円用と、その都度別のパスワードが必要だった。
宇喜多があらかじめ複数のパスワードを用意して、それぞれ別の受刑者へ預けていたということなのだろうか。
それとも、事件が成功するたびに何らかの方法で新しいパスワードを設定していたのか。
ドラマの中では、そこまでは詳しく説明されない。
特に宇喜多本人はずっと刑務所の中にいる。
外部の端末を自由に操作できるわけでもないはずなので、「その都度必要になるパスワードをどう管理していたのか」は少し気になるところだった。
もちろん、事前に複数のパスワードを用意し、「1人目を殺したらこれ」「2人目ならこれ」と順番に渡していたと考えれば成立はする。
ただ、それならそれで宇喜多は、かなり前から何段階もの犯罪計画を組み、出所予定の受刑者まで計算して配置していたことになる。
53億円だけでも十分恐ろしいが、むしろ怖いのは、その金を刑務所の中から動かすための仕組みを、ここまで用意していたことなのかもしれない。
「ティッシュ1枚で暴かれた」で全部持っていく伊垣
国家の司法制度を壊すと大演説する宇喜多
追い詰められた宇喜多は、最後に一気に本音をぶちまける。
自分は無期懲役で、もう一生刑務所から出られない。
それでも53億円もの金があれば、刑務所の中にいても人を動かし、事件を起こすことができる。
さらに宇喜多は、トクリュウが日本で動かす金は年間4000億円規模だと語り、自分が死刑になったとしても「第2、第3の自分」が出てくると豪語。
そして裁判官、検事、捜査一課長、警視総監、警察庁長官まで狙い、「この国の司法制度をぶっ壊す」と大演説を始める。
机の上にまで乗り、刑務官に取り押さえられながら叫び続ける宇喜多。
最終回のラスボスらしく、話のスケールだけはどんどん大きくなっていく。
53億円の犯罪計画に対する返しが「ティッシュ1枚」
そんな宇喜多に対し、伊垣が最後に突きつけたのが、
「でも忘れるな、お前の犯罪はティッシュ1枚で暴かれたんだ」
という一言だった。
強い。
53億円。
トクリュウ。
司法制度への復讐。
第2、第3の宇喜多。
ここまで話を大きくした相手に対して、返す言葉が「ティッシュ1枚」である。
宇喜多がどれだけ壮大な計画を語っても、結局その犯罪を崩したのは、車内に置かれていたティッシュのわずかな揺れだった。
しかも伊垣は、そこをわざわざもう一度強調する。
国家の司法制度を壊すつもりだった男が、ティッシュ1枚に負けた。
最終回の決着としては妙に小さい。
でも、その小ささが妙に『大追跡』らしい。
最新技術を駆使して巨大犯罪に挑みながら、最後にものを言うのは、タピオカだったり、イヤホンだったり、ティッシュだったりする。
宇喜多の大演説より、最後に残ったのは「ティッシュ1枚」のほうだった。
まとめ|大きな謎を残さない潔さが『大追跡』だった
『大追跡 Season2』は、最後までかなり潔いドラマだった。
最近の刑事ドラマでは、第1話から最終回まで続く巨大な陰謀や、主人公の過去にまつわる秘密、警察内部の黒幕など、シーズンを通して追いかける大きな謎が用意されていることも多い。
しかし『大追跡Season2』には、そうしたものがない。
基本的には毎回事件が起き、SSBCが捜査し、その回の中で解決する。
最終回だからといって、これまでの事件がすべて1本につながるわけでもなければ、実は誰かが黒幕だったという大仕掛けもない。
こういう仕掛けはうまくいけば面白いが、解明するのに駆け足だったり、大したことなかったりと肩透かしを食らうことが度々ある。
しかし『大追跡』は違う。毎回、防犯カメラを見て、デジタル技術を使い、八重樫が早めに犯人を決めつけ、名波が伯父の話で説得し、最後には何かを食べる。
そして事件解決の決め手になるのは、タピオカだったり、女性用ウィッグの広告だったり、イヤホンだったり、最終回ではティッシュ1枚だったりする。
そう考えると、このドラマは最初から最後までほとんどブレていない。
無理に大きな物語を背負わせず、その回の事件とSSBCの捜査に集中する。
最近ではむしろ珍しいほど、余計な大仕掛けを切り捨てた潔さがあった。
だから最終回も、巨大な謎を解き明かすというより、「いつもの『大追跡』を最後までやり切った」という印象のほうが強い。
八重樫は最後まで八重樫で、名波は最後まで伯父を使い、SSBCは最後まで妙なところから証拠を拾ってくる。
Season3もぜひこの調子で行って欲しい。

