「相棒 season25」がスタート。
初回スペシャルということで、溝口総理とその盟友である仲井戸補佐官の殺害事件を中心に、ハドリア連邦大使館、サルウィン大使館、国家情報局など、さまざまな組織が絡むスケールの大きな展開となった。
一方で、亀山の教え子であるミンや、行方不明になった大学の助手・光屋も事件に関係しているようで、謎は深まるばかり。
今回は、そんな第1話で気になったことを交えながら感想を書いていきたい。
※以下、ネタバレを含みます。
溝口総理の秘密と仲井戸補佐官の殺害事件
国民から高い支持を得ている溝口総理は、ハドリア連邦の大使と通訳もつけずに二人きりで会い、ハドリアのトップシークレットだという資料に目を通す。
一方、総理の盟友である仲井戸補佐官は、都内の会員制高級料亭の喫煙所で刺殺される。
仲井戸は元国土交通大臣で、溝口総理が政権を担うようになってからも、補佐官として総理を支えてきた人物だ。
現場にはホームレスと思われる男が防犯カメラに映っており、警察は男を重要参考人として捜査を始める。
総理自身も事件を重く受け止め、仲井戸の遺体が安置された警視庁に出向いて対面した。長年の盟友を失った悲しみが伝わってくる場面だった。
仲井戸の娘の話から、総理は慎重な性格で、ここぞというときに背中を押すのが仲井戸の役目だったという。
さらに、総理は仲井戸に禁煙を勧めており、そこには交換条件があったらしい。
右京が総理にそのことを尋ねても、総理は話をはぐらかすような反応を見せる。
生前、仲井戸は「決心してもらえましたか?」と総理に尋ね、「一時的に大嵐になると思います。けど大丈夫。総理ならそんな嵐、吹き飛ばせます」と背中を押していた。
それに対して総理は、仲井戸がタバコをやめることを条件に、「お前がすっぱりやめるなら、俺も覚悟を決めて総裁選に臨むよ」と答えている。
仲井戸には、総理に決断してもらいたいことがあったのだろう。それが今回の事件とどう関係しているのか、気になるところだ。
事件の容疑者として浮かび上がるホームレス
警察が捜査を進めるなか、右京と亀山も独自に事件を追っていく。
防犯カメラに映っていたホームレスは「小鼓さん」と呼ばれる人物で、事件の前日から突然姿を消していた。
さらに、その人物が凶器とみられる出刃包丁を購入していたことも判明する。購入日は事件当日の午後1時12分で、購入時には現金が使われていた。
仲井戸は国土交通大臣時代、公園の再開発を進めていた。その際、公園を寝床にしていたホームレスたちが、排除に反対して工事を阻止しようとしたことがあったという。
溝口総理は、当時のホームレスが仲井戸を恨んでいた可能性を示唆する。
確かに、再開発によって居場所を失った人が、仲井戸に恨みを抱いたとしても不思議ではない。
しかし、それは4年も前の出来事だ。なぜ今になって殺害に及んだのか、違和感がある。
小鼓が本当に仲井戸への恨みから犯行に及んだのか、それとも別の事情があるのか。まだ判断するには早そうだ。
ちなみに、ホームレスたちの名前として登場した「スポックさん」も印象に残った。『スタートレック』のスポックを思わせる髪型まで再現されていて、思わず笑ってしまった。
亀山の教え子・ミンと行方不明の助手
今回、もうひとつ気になったのが、サルウィンから留学で日本にやってきたミンの存在だ。
ミンは、亀山がサルウィンで先生をしていた頃の教え子。亀山夫妻とは8年ぶりの再会となった。
ミンは、亀山たちが貧しくて学校に通えない子どもたちのために作った学校に、兄のトゥーラとともに通っていた。そこで日本語を覚え、優秀な成績を収めてサルウィン大学に進学したという。
しかし、サルウィンでは民主化が後退し、軍事政権に戻ってしまっている。亀山夫妻はペルソナ・ノン・グラータとなり、サルウィンを追われていた。そのため、自分たちが連絡することでトゥーラに迷惑がかかってはいけないと考え、連絡を控えていたのだ。
かつて民主化運動のリーダー格だった兄のトゥーラも、現在は軟禁状態にあるらしい。
ミンは、留学生として海外に出ていても、当局の監視から逃れられるわけではないと話す。亀山夫妻はトゥーラに電話し、ミンに代わって話したいと提案するが、ミンはそれも断る。
そんなミンの周囲にいるのが、大学の研究室で助手を務める光屋だ。
プログラムやネットに詳しく、優秀すぎる助手として教授の代わりに講義までしている人物だが、実は借金を抱えていた。
しかも、光屋の部屋には溝口総理のポスターやグッズが大量に飾られていた。さらに、総理や国土交通大臣時代の仲井戸と、公園再開発に関する有識者会議のメンバーとして一緒に写った写真もあり、光屋が二人と接点を持っていたことがわかる。
光屋は総理を熱心に支持しているように見えるのに、なぜか「総理の秘密」を週刊誌・フォトスに売り込もうとしていたのだ。
その秘密とは何なのか。
光屋はミンのスマホを使って電話をかけた可能性があり、通話先を調べたところ、週刊誌「フォトス」への売り込みだったことが判明する。
ところが、光屋は約束の場所に現れず、行方不明になってしまう。
さらに、右京たちが光屋の部屋を調べた際には、何者かが先に侵入していた形跡も見つかった。
光屋は誰かに連れ去られたのか。それとも、自ら姿を消したのか。
サルウィン大使館が光屋を拘束している可能性も浮上し、事件はさらに複雑になっていく。
国家情報局も動き出す
今回の事件では、警察だけでなく国家情報局も動いていた。
国家情報局では、都内の大学や研究機関で外国人研究者への不審な接触が続いていることが問題になっていた。量子暗号や衛星通信、次世代電池など、安全保障上重要な分野の研究者が接触を受けているという。
国家情報局は光屋をキーパーソンと見ているようだが、右京は国家情報局の社に、サルウィン大使館を探ってほしいと依頼する。大使館には不可侵の原則があり、警察が簡単に踏み込める場所ではないからだ。
社は引き換えに何かを要求しようとするが、その内容は明かされないまま終わる。
ハドリア連邦大使館、サルウィン大使館、国家情報局、そして総理官邸。さまざまな組織が絡み合い、事件の全体像はまだ見えてこない。
初回からかなり大きな話になってきた。
右京と亀山のやり取りも健在
事件そのものは重い展開だが、右京と亀山、そして捜査一課のやり取りには、いつもの『相棒』らしい面白さもあった。
右京と亀山が事件の捜査に加わろうとすると、伊丹は「われわれは断固乗船拒否します!」と二人を追い払おうとする。
ところが、芹沢はこっそり二人のところへやってきて、ホームレスが重要参考人として浮上していることなどを教えてくれる。
長年、二人に振り回されてきたみんなも、とうとう諦めの境地に達したらしい。
芹沢は二人の粘り腰を褒めるが、右京は「褒め殺しでしょうかね」と返す。
その後、角田課長も「総理に会って話を聞きたいですねぇ…」という右京に、「お呼びじゃなくとも果敢に突撃するのがおまえさん方の真骨頂だけどな」と返す。
亀山が「褒め殺し?」と尋ねると、右京も「ですね」と応じる。
このあたりのやり取りは、長年続いてきた『相棒』ならではの空気感があって楽しかった。
また、美和子が週刊誌の編集長から、総理の秘密を追うために亀山を使えないかと相談される場面も印象的だった。
編集長は亀山や右京のことを「はぐれ者」「はみだし者」「あぶなっかしい刑事」と表現し、最後には「トラックなくてもボーダレス」とまで言い出す。
ドラマ『はぐれ刑事純情派』『はみだし刑事情熱系』『あぶない刑事』『ボーダレス』などを連想させる言葉が続き、思わずニヤリとしてしまった。
そして、右京の登場シーンも気になったところ。
霞ケ関駅から地上へ上がってくる右京の姿が描かれていたが、右京だって電車で通勤することはあるだろう。それでも、ラッシュの電車に乗っている姿は、勝手なイメージながらあまり思い浮かばない。
そのほか気になったこと
今回の話は謎が多いだけに、細かいところにもいろいろと引っかかった。
まず、ミンの行動だ。
サルウィン当局の監視が日本でも続いているというミンは、自分のスマホから兄に電話することさえリスクが高いと話していた。
それなのに、ペルソナ・ノン・グラータとなった亀山夫妻とは直接会い、連絡先まで交換している。これが大丈夫なのだろうか。
もちろん、ミンにも事情があるのかもしれない。軟禁状態にある兄を救うため、何か目的があって亀山たちに接触した可能性も考えられる。
ミンの登場そのものが、どこか不自然に感じられたのも気になるところだ。
また、光屋の部屋に溝口総理のグッズが大量にあったことも引っかかる。あれほど熱心な支持者に見えるのに、なぜ総理の秘密を売ろうとしたのか。借金が理由なのか、それとも別の思惑があるのか。
そして、仲井戸が殺害された理由もまだはっきりしない。
小鼓が本当に恨みを晴らすために殺したのか。それとも、ホームレスという立場を利用して、別の誰かが事件を仕組んだのか。
総理と仲井戸の間にあった交換条件の内容も含め、気になることばかりだ。
さらに、内村刑事部長や甲斐峯秋にも、以前と比べて年齢を感じるようになった。長く続いているシリーズだからこそ、出演者の変化も感じるところではある。
サルウィンと亀山の関係は今後どうなる?
今回、サルウィンが再び物語に登場したことで、亀山の過去と現在がつながっていくのではないかという気がする。
亀山がサルウィンで教えていた子どもたちが成長し、その一人であるミンが日本にやってきた。そして、兄のトゥーラは民主化運動に関わったことで軟禁状態にあるという。
この設定が今後の事件にどう関係してくるのか。
すでに今シーズン途中で、亀山から神戸へバトンタッチすることが発表されている。それを踏まえると、サルウィンをめぐる問題が大きくなり、亀山自身も深く関わることになるかもしれない。
初回スペシャルらしく、総理、総理補佐官、ハドリア連邦大使館、サルウィン大使館、国家情報局と、登場する組織も人物も多く、スケールの大きな話になっている。
新しいシーズンの初回に、これまでの出演者や各部署が次々と登場するのは、シリーズが始まったという実感があって楽しい。
ただ、こうした大きな話は、さすがの『相棒』でも何でもありの展開になりやすく、最後には少しモヤモヤが残ることもある。
今回も今のところ、日本国民がびっくり仰天するという総理の秘密とは何なのか。仲井戸はなぜ殺されたのか。光屋はどこへ消えたのか。そして、ミンは何も知らないのか。まだまだわからないことが多い。
総理の秘密も気になるが、個人的にはミンが事件にどのように関係しているのか、サルウィンをめぐる問題に亀山がどう関わっていくのかが特に気になっている。
初回だけではまだ全体像が見えてこないだけに、次回、どこまで謎が明らかになるのか。そして、この大きな事件がどんな結末を迎えるのか、期待したい。

