2026年3月24日にNHKで放送された、長谷川博己さん主演のスペシャル時代劇『眠狂四郎』の、ネタバレを含む感想をまとめました。
田村正和さんをはじめ、これまで何度も映像化されてきた『眠狂四郎』。
今回は長谷川博己さんが、バテレンの血を引き、青い目を持つ剣士・眠狂四郎を演じます。
長谷川博己さんの佇まいや殺陣、脇を固めるキャスト陣はとても良く、久しぶりの『眠狂四郎』を思っていた以上に楽しく見ることができました。
ただ、どうしても最後まで引っかかったのが、狂四郎が師匠の右手を斬り落として名刀「無想正宗」を奪う冒頭の場面。
ダークヒーローとはいえ、そこはちょっと不義理すぎないか?というモヤモヤが残りました。
以下、ネタバレが含まれます。
長谷川博己演じる眠狂四郎
日本人の母・千津とバテレン(多分オランダ人)との間に生まれた眠狂四郎は、「青い目」を持つということになっている。
ドラマの中でも「その者は青い目をしておったか?」と、狂四郎の特徴として「青い目」というワードが何度も登場する。
しかし、瞳がアップになる時は青い目だとわかるけれど、そのシーンは少なく、アップではないシーンでは目の色が青だなんて全くわからない。
あれでよくみんな「青い目をしておりました」なんて言えるよなぁと思った。
高身長で手足も長くスタイルの良い長谷川博己さんが、ハーフの眠狂四郎を演じるのはとてもしっくりしていたし、寡黙な感じやダイナミックな殺陣のシーンも素敵だった。
ただ、すべて見終わったあとに、筆者にとって『眠狂四郎』は田村正和さんの印象が強いので、どんな感じだったか昔の映像を見てみたら、殺陣のシーンの田村正和さんは圧倒的にかっこよくて、色気があることを再確認。
当時は時代劇が頻繁に作られていた時代だけに、比べちゃ気の毒かもしれないけれど。
眠狂四郎はダークヒーロー??
ドラマは、師匠の名刀「無想正宗」を眠狂四郎がよこせと、闘って奪い取るシーンから始まる。
これがなんともあっさりで、師匠は狂四郎に右腕を切り落とされ、あっという間に大事な「無想正宗」を奪われてしまう。
狂四郎はトドメは刺さないけれど、江戸時代にこの怪我は命に関わりそう。
後にこの師匠は、母親を亡くし身寄りのない子供の頃の狂四郎に食事を与え、剣を教えていたことがわかるのだけれど……あまりにも不義理すぎないか?
この話の中では、母を亡くし、子供1人で行き倒れになるかもしれなかった狂四郎に食事を与え、剣を教えた師匠の持つ「無想正宗」を、狂四郎は「師匠はダメだと言っているのに、有無を言わさず右手を斬り落として奪った」ということしかわからない。
ダークヒーローというより、恩を仇で返す悪いやつという印象。
キリシタン嫌いな母親の敵である祖父をやっつけ、一部の隠れキリシタンと水野忠邦を救ったからヒーローってことなのか?
うーん……。
脇を固めるキャストも良い
丁半博打の賭場で登場する佐藤江梨子さん(文字若)、菜々緒さん(女狐)。
佐藤江梨子さんと菜々緒さんが出てきた時には、2人の役のピッタリさに思わず「おおっ」と声が出た。
狂四郎を先生と慕い、右腕となって動く森永悠希さん(金八)、盲目の喜平太の今野浩喜さん、狂四郎の祖父である松平主水正を演じる坂東彌十郎さんもとても良い。
長谷川博己さん、坂東彌十郎さんは共に高身長なので、昔の日本家屋のセットの中はちょっと違和感があるのは否めないけれど、2人のバランスは取れていたので良かったように思う。
そういうわけだからなのか、刀で戦うシーンはほぼ全て屋外。
確かに天井が低かったら、長い刀を振り回して戦いにくいわな……。
待ってました!「円月殺法」
昔に比べ技術も進み、「円月殺法」はそれなりにうまくまとまっていたように思う。
改めて「円月殺法」について調べてみると、『独歩行』では、相手の闘魂を奪い、眠りに陥らせるような催眠剣法として説明されているようだ。
今回、狂四郎が「円月殺法」を使う相手は、大目付・松平主水正の家臣・戸田。
狂四郎は009のジョーの加速装置みたいな感じで素早く動き、戸田をやっつけたけれど殺しはしない。
戸田に「負けだ、斬れ」と言われても、「死にたくば己で腹を斬れ」と殺さない。
因果応報??
最後に狂四郎は、敵である松平主水正、つまり祖父と対峙するわけだけれど、円月殺法で殺されなかった戸田はその場でじっと成り行きを見ていたのか?
その後出てこない。
そしてなぜか大目付の家なのに、主が危機一髪でも「出会え、出会えー」とはならない。
正義という名のもとに松平主水正はバテレンを拷問し、信仰を捨てさせた。
しかし、それを恨んだバテレンは娘、つまり狂四郎の母を汚し、狂四郎を産んだ。
そして娘は処刑。
松平の家にバテレンの汚れた血を引く者、つまり狂四郎がいることは許せない、ということで狂四郎を亡き者にしようとする。
それを聞いた狂四郎は、そもそもバテレンの信仰を奪ったお前の正義とやらが元凶だ、とあっさり祖父を無想正宗で斬り殺す。
因果応報といったところか?
ならば狂四郎に聞きたい。
育ててくれた師匠から、なぜ無理やり無想正宗を奪った?
師匠は道から外れたことをしたのか?
なんで無想正宗じゃなきゃダメなのか?
それでないと円月殺法はできないのか?
この場面が描かれていれば良かったのに……
どうも無想正宗の入手方法がモヤモヤするので調べてみると、原作では狂四郎は母と死別した後に剣法修行を続け、長崎からの帰途に流れ着いた孤島で老剣客に学び、円月殺法を編み出す。
そして島を去る時に、その老剣客から極意秘伝書代わりとして無想正宗を与えられた、という設定らしい。
うん、調べてみて良かった。
無想正宗が師匠から奪ったものではなく、与えられたものだという場面がほんの少しでも描かれていたら、ダークヒーローとしてすんなり受け入れることができたのにな……と思うので非常に残念。
長谷川博己主演『眠狂四郎』を見てみて
最初はどうなることかと思っていた長谷川博己さんの『眠狂四郎』だけれど、バテレンの血が入った青い目のミステリアスな眠狂四郎を見事に演じられていて、思っていた以上に楽しく見ることができた。
そして周りを固めるキャストの皆さんも、適材適所でとても良かった。
ストーリーに関してはただ1つ、前述の通り、名刀「無想正宗」を無理やり師匠の手を斬り落として奪ったという入手方法だけは疑問。
今回の描かれ方だと、どうにも不義理で筋が通ってないので、素直にダークヒーローとしてカッコいいと思えないのが残念だった。
今では考えられないようなことだけれど、江戸時代、松平家、隠れキリシタンの母、バテレンの血……。
あの時代に眠狂四郎のような境遇だったら、と考えるとどれほど大変だったのか想像もつかない。
コンプライアンスなどの問題で時代劇もいろいろと変化が必要なのだと思うが、久しぶりに見た『眠狂四郎』は、そんな中でも健闘している作品だな、と思った。

