WOWOWドラマ『MR-医薬情報担当者-』第4話の感想を、ネタバレを含めてまとめました。
パンセルのライバル薬・グリブの論文に不正疑惑が浮上。思わぬ人物からの情報提供によって、紀尾中たちは逆転の糸口を掴むが、その証明は容易ではない。
一方、ノベルマの副作用問題では、薬を必要とする患者がいるにもかかわらず、会社はすぐには動こうとしない。患者を救いたい紀尾中と、組織の判断との間に生まれるジレンマ。
次回の最終回を前に、2つの問題はどのような決着を迎えるのか?
堂之上の再登場と紀尾中が与えた影響
今回、意外だったのが堂之上の再登場だ。第2話で登場したきり、もう出てこないと思っていたので、まさかここで重要な情報を持ってくるとは思わなかった。
しかも、堂之上が持ってきたのは、八神の論文に不正があるかもしれないという情報。グリブの心血管保護効果を示す研究データに疑わしい部分があり、これが証明されれば、パンセルにとって起死回生の逆転劇につながる可能性がある。
それにしても、紀尾中という人間が周囲に与える影響は大きい。振り返ってみると、かつての乾もそうだし、今回の堂之上もそうだ。さらに部下たちも、紀尾中の仕事に対する姿勢に影響を受け、自分たちの意思で協力するようになっている。
紀尾中は、誰かを変えようとして行動しているわけではない。ただ、患者を第一に考え、自分が正しいと思うことを貫いている。その姿勢が少しずつ周囲にも伝わり、会社の外にいる人間まで動かしているのが印象的だった。
一人のMRにできることには限界がある。しかし、その行動がほかの誰かを動かし、大きな力になっていく。堂之上の再登場は、そんな紀尾中の影響力を感じさせる出来事だった。
論文の不正をどう証明するのか
堂之上からの情報によって、グリブの論文に不正がある可能性が浮上したものの、韓国側は疑惑を否定。別のデータまで用意されていたのだから、簡単には認めないだろうとは思っていたが、ここからどうやって不正を証明するのかが気になる。
さらに、ソンハが研究データを確認しようとしたところでカン院長に止められてしまった。せっかく真相に近づいたと思ったのに、また振り出しに戻ってしまったような印象だ。
ただ、ここでも紀尾中の影響が周囲に広がっているのが面白い。池野や麻弥たちが自分たちで考えて行動し、韓国側の研究スタッフにまで働きかけている。堂之上の情報提供もそうだが、紀尾中1人ではできないことを、周囲の人たちが補うようになっている。
とはいえ、次回はもう最終回。韓国側があくまで不正を認めないのであれば、どうやって決定的な証拠を掴むのだろうか。パンセルにとっても、これが最後の逆転のチャンスになるのかもしれない。
ノベルマの問題と、動かない天保薬品
一方、今回最も納得できなかったのが、ノベルマの問題に対する天保薬品の対応だ。
紀尾中は、ノベルマとAPIの併用によって、器質化肺炎が引き起こされている可能性を突き止めた。報告された症例ではいずれもAPIが併用されており、会社のメディカル部門でも、その関連性を裏付ける根拠は十分だと考えられている。それなのに、天保薬品はすぐには情報を公表しないという。
もちろん、薬の安全性に関わることなので、慎重な判断が必要なのはわかる。しかし、今この瞬間にも、ノベルマとAPIを併用している患者がいるかもしれないのだ。少なくとも、併用による危険性が疑われていることを医療現場に知らせ、注意を促すべきではないだろうか。
ノベルマそのものに問題があるのか、それともAPIとの併用が問題なのか。それによって、患者が選べる治療法も大きく変わってくる。何よりもどかしいのは、紀尾中が危険性の手がかりを掴んでいるのに、自分の判断だけでは医師に正式な情報として伝えられないことだ。
紀尾中はあくまで製薬会社のMRであり、医師でも研究者でもない。自分が調べた結果だけで薬の安全性を保証することはできず、会社としての正式な判断が必要になる。だからこそ、会社に動いてほしいのだが、その会社が動こうとしない。
五十川にも五十川の事情があるのだろう。しかし、患者の命がかかっている以上、情報の公表を先延ばしにする判断には、どうしても納得できなかった。
救えるかもしれない命が失われていく
そして、もう1つ気になるのが咲子の容体だ。ノベルマには確かな治療効果が見られていたものの、器質化肺炎を発症したことや薬害訴訟の影響もあって、咲子も父親も再び使用することを拒んでいる。その気持ちは理解できる。実際に重い肺炎を患い、亡くなった患者もいると聞けば、怖くなるのは当然だろう。
しかし、ほかに有効な治療法が見つからない中、咲子の病状は悪化する一方だ。もし天保薬品がAPIとの併用リスクについて正式に説明し、医師が安全性を改めて検討できるようになれば、咲子もノベルマによる治療を選ぶかもしれない。
もちろん、APIと併用しなければ絶対に安全だと証明されたわけではない。それでも、正しい情報がなければ、治療を選ぶことすらできないのではないだろうか。
薬害を防ぐために慎重になる必要がある一方で、その判断を待っている間にも病状が進行する患者がいる。安全性を守るための仕組みが、結果として治療の機会を狭めてしまうというのも、難しい問題だと思った。
特に製薬会社の場合、判断の遅れが患者の生死に直結する可能性がある。普通の会社なら、対応が遅れて売上が落ちたり、商機を逃したりすることもあるだろう。しかし、製薬会社が扱っているのは人の命に関わる薬なのだ。
会社が判断を先延ばしにしている間にも、助けられるかもしれない命が失われていく。紀尾中が五十川に食い下がるのも当然だと思うし、見ているこちらも、早く何とかしてほしいという気持ちになった。
製薬会社が果たすべき責任とは
もちろん、天保薬品が最初からAPIとの併用による危険性を知っていたわけではない。意図的に隠していたわけではないのだから、知らなかったことまで責めるつもりはない。
しかし、結果として亡くなった患者がいる以上、会社として責任を持って原因を調査し、被害が確認された人たちにはきちんと補償すべきだと思う。
そして何より、これ以上の被害を出さないことが最優先ではないだろうか。過去に起きたことは取り消せない。しかし、これから失われるかもしれない命は、今なら救える可能性がある。
また、パンセルを成功させたいのであれば、ノベルマの問題にも誠実に向き合う必要があると思う。仮にグリブの論文不正を証明できたとしても、ノベルマの問題を放置したままでは、天保薬品そのものが不誠実な会社だと思われかねない。
日本では、企業の不祥事がほかの商品への信用にも影響することがある。いくらパンセルが優れた薬であっても、それを販売する会社が信用されなければ、医師たちも安心して採用できないのではないだろうか。
だからこそ、パンセルの逆転を目指すことと、ノベルマの問題に向き合うことは、決して別々の話ではないと思う。
第4話まとめ|紀尾中の信念は会社を変えられるのか
今回、特に印象に残ったのは、紀尾中が周囲の人間に与えてきた影響と、なかなか動こうとしない天保薬品の対比だった。
乾や堂之上、そして部下たちも、紀尾中の仕事に対する姿勢に影響を受け、自分たちの意思で行動するようになっている。しかし、肝心の雇い主である天保薬品は、相変わらず旧態依然としたままに見える。
もちろん、五十川にも会社にも、それぞれの事情やしがらみがあるのだろう。しかし、製薬会社なのだから、もっとシンプルに考えてほしい。
患者を助ける。そのために今、何をすべきなのか。
紀尾中1人でできることには限界がある。だからこそ、最後は会社そのものが動くのではないかと思う。
次回はいよいよ最終回。韓国側が疑惑を否定する中、グリブの論文不正をどうやって証明するのか。そして、咲子の治療は間に合うのだろうか。
パンセルの逆転劇だけでなく、ノベルマの問題にどう決着をつけるのか。紀尾中の信念が、最後は天保薬品という組織そのものを変えることになるのかにも注目したい。

