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【MR -医薬情報担当者-】第3話感想|過去の後悔と、浮上する薬害疑惑

ドラマ感想(コラム)
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WOWOWドラマ『MR-医薬情報担当者-』第3話の感想を、ネタバレを含めてまとめました。

今回は、紀尾中(向井理)が過去に経験した患者の死亡事故が明らかになり、なぜ彼が徹底して患者ファーストの姿勢を貫いているのか、その理由が見えてくる回だった。

一方、天保薬品の肺がん治療薬「ノベルマ」には新たな副作用の疑惑が浮上。これまでのように紀尾中が鮮やかに問題を解決する展開とは異なり、薬の安全性や患者の命について考えさせられる内容となっていた。

紀尾中が抱えていた、過去の死亡事故

冒頭で描かれたのは、2011年、まだ若手MRだった紀尾中の姿。当時の紀尾中は上司の五十川(豊原功補)とともに医師の久保田を担当していたが、この久保田がなかなかひどい。

紀尾中が薬の説明をしてもろくに耳を貸さず、気に入らなければ物を投げつける。五十川が代わりに説明すると態度を変え、さらに酒まで無理やり飲ませようとする。

医師に薬の情報を正しく伝えることより、医師の機嫌を取ることが優先されている。そんなこともあって、紀尾中は接待自体が苦手なようだった。対する鮫島(要潤)は接待をうまく利用し、どんどんのし上がっていった。

そんな中、紀尾中たちが紹介していた薬「ファストシド」を服用した8歳の男の子が死亡する。詳しい経緯は後の回想で明らかになるが、男の子には軽度の腎障害があり、薬が体内に蓄積したことで多臓器不全を引き起こしていた。

しかも、亡くなったのは紀尾中が病院で偶然出会い、落としたおもちゃを拾ってあげた男の子だった。紀尾中にとって、この出来事はトラウマになるぐらいのショックだった。

ノベルマの薬害疑惑と、治療を受ける患者の不安

現在、天保薬品では肺がん治療薬「ノベルマ」による薬害を訴えるSNSの投稿が問題になっていた。投稿によると、ノベルマを投与された患者が器質化肺炎を発症し、死亡したという。同様の訴えはほかにも複数見つかっていた。

器質化肺炎とは調べたところによると、肺の中で炎症が起こり、組織が修復される過程で肺胞などに器質化した組織が形成される病気だという。咳や息切れなどの症状が現れ、重症化すると呼吸状態が悪化することもあるそうだ。ただ、ノベルマの臨床試験では器質化肺炎の報告がなく、副作用としても認識されていなかった。

一方、ノベルマで治療を受けていた吉野咲子(森田想)も器質化肺炎を発症し、意識不明の重体となっていた。父親の輝久(野添義弘)はネットで薬害を訴える投稿を見つけ、ノベルマが原因ではないかと疑い始める。

しかし医師は、ノベルマによって肺がんが寛解した患者も多くいると説明し、治療再開後も使用を続けたいと考えていた。この医師の判断が間違っているとは思わない。実際にノベルマは多くの患者に効果を上げていて、現時点では器質化肺炎との因果関係もわかっていない。医師も咲子を治したいという思いから、この薬を選んでいるはず。ただ、患者や家族の立場になると難しい問題だと思う。

輝久のように薬の危険性を疑っても、医師から問題ないと説明されれば、それ以上どう判断すればいいのかわからない。もちろん転院という選択肢もあるけど、専門的な知識を持たない患者や家族にとって、別の治療法が正しいかどうかを判断するのは難しい。

薬の効果と危険性を十分に理解した上で、患者自身が治療法を選べたらいいのかもしれない。しかし、そもそも医師が危険性を知らなければ、それも難しい。正確な医薬品情報を医師に届けることが、いかに重要なのかを改めて感じさせられた。

紀尾中と五十川、異なる仕事への向き合い方

ノベルマの副作用を疑った紀尾中は、市橋(正門良規)に各病院での使用状況を調べるよう指示する。医師から有害事象の報告は上がっておらず、会社としても特に問題は把握していなかった。それでも紀尾中は、まだ知られていない副作用が存在する可能性を考えていた。

そんな中、五十川の推薦によって、紀尾中に本社への異動話が持ち上がる。営業所長としての能力を評価され、マーケティング部門を任せたいという話だったが、紀尾中はMRではなくなる自分を想像できないようだった。

そして、五十川にノベルマの件を報告すると、1人の患者に感情移入しすぎるなと忠告される。この五十川の考え方も、ある意味では正しいのだと思う。

MRは医師ではなく、製薬会社の社員。医薬品の情報を提供し、会社の利益のために働くのが仕事であり、患者1人ひとりの治療にまで関わる立場ではない。過去の死亡事故でも、五十川は紀尾中に責任はないと告げていた。

実際、薬の説明資料は医師に渡されており、患者の腎障害を考慮して処方を判断するのは医師の役割だからだ。個人的には、説明をろくに聞かず、患者の状態も十分に考慮しなかった久保田医師の問題が大きいように思う。実際、久保田はこの問題で病院を辞めている。

しかし紀尾中は、自分が薬を採用してもらうことばかり考え、患者のことが頭から抜けていたと後悔していた。

五十川も同じ現場にいたのだから苦しかったはず。ただ、そんな出来事をすべて背負っていたら、MRという仕事は続けられないのかもしれない。だからこそ、仕事の範囲を明確にし、それ以上は踏み込まないようにしているようにも見えた。

一方の紀尾中は、その経験を切り離すのではなく、自分の仕事のあり方に反映させた。2人の考え方は異なるが、どちらか一方が間違っているとは言い切れないところに考えさせられた。

パンセルの危機と、変わらない紀尾中の信念

ノベルマの問題が進む一方で、天保薬品の糖尿病治療薬「パンセル」にも新たな危機が訪れる。ライバル会社タウロスの「グリブ」に、心血管保護効果があるとする論文が発表される見通しとなったのだ。

研究を主導したのは、前回からタウロスと結託していた八神(酒向芳)。共同研究者には韓国の医師カン・ヨンジン(知英)の名前もあった。

もし研究結果が正しければ、グリブにはパンセルにない付加価値が生まれる。天保薬品が目指していた診療ガイドラインのA判定も、厳しくなる可能性があった。

しかし、鮫島からパンセルの敗北をほのめかされても、紀尾中は動じない。自分たちが自信を持って開発した薬より、さらに優れた薬ができたのなら、それは患者にとってよいことだという。

第2話でも描かれていたが、紀尾中にとって重要なのは自社の薬が売れることではなく、患者にとって最適な薬が使われることなのだろう。

ただし、前回のような不正な妨害と、今回のような研究結果による正当な競争は別問題だ。本当にグリブのほうが優れているのなら、素直に認める。その姿勢に紀尾中の信念が表れていた。

もっとも、論文には前回から不正に関わっていた八神が参加している。研究結果をどこまで信用できるのかという疑問も残る。紀尾中も若干疑っている気がした。

過去の後悔を活かした、新たな副作用の発見

その後、市橋が調査した98人の患者のうち、3人が器質化肺炎で死亡し、1人が重症化していたことが判明する。ただし、ほかの患者には腫瘍の消失や縮小といった効果が見られ、ノベルマに感謝している医師も多かった。紀尾中が調べた病院でも同様の傾向があり、薬との因果関係を判断するのは難しい状況だった。

市橋は偶然の事象と考えてもよいのではないかと話すが、紀尾中は慎重な姿勢を崩さない。なぜそこまでするのかと尋ねられた紀尾中は、「後悔したくないからな」と答える。ここで、過去の死亡事故が現在の紀尾中にどう影響しているのかが、はっきり見えた気がする。

過去の事故のあと、亡くなった男の子の母親は、取り乱してひどいことを言ってしまったと医師に謝罪していた。しかし、それで紀尾中の後悔が消えたわけではなかった。

その後も糖尿病について勉強を続け、現在でも薬の安全性に人一倍注意を払っている。決して過去の自分を許すために行動しているのではなく、二度と同じような問題を起こさないという強い覚悟に感じた。

そして今回、紀尾中は調査結果から重大な共通点を発見する。器質化肺炎を発症して重症化した患者たちは、いずれも「API」という薬を併用していた。ノベルマ単独では問題がなくても、APIと併用することで器質化肺炎の発症頻度が上がる可能性がある。

もちろん、現段階ではまだ仮説にすぎず、因果関係が証明されたわけではない。しかし、医師から有害事象として報告されていなかった症例にまで目を向けたことで、新たな危険性を見つけることができた。過去に起きたことを現在にきちんと活かしている。紀尾中の「患者ファースト」が、単なる理想論ではないことを強く感じた。

そんな中、ノベルマによる薬害を訴える遺族が記者会見を開き、天保薬品の責任を追及する。紀尾中が発見したAPIとの関連が明らかになれば、これ以上の被害を防げる可能性もある。会社がこれをどう対応するのか、紀尾中もどうするのかが気になるところ。

第3話まとめ|患者ファーストを貫くということ

第1話、第2話では、紀尾中が持ち前の観察力と記憶力で問題を解決していく、痛快な展開が続いていた。しかし今回は、誰かの不正を暴けば解決するという話ではない。

医師は患者を治したいから薬を使い、製薬会社は有効な薬を多くの患者に届けようとする。患者や家族も、治る可能性があるならその薬に希望を託したい。それぞれが正しいと思って行動していても、思いがけない問題が起こることはある。

そんな中で、紀尾中は過去の後悔を忘れず、自分にできることを続けている。責任があるかどうかを考えるよりも、後悔しないために何ができるのかを考える。その姿勢が、今の紀尾中を作っているのだと思った。

一方、ノベルマの薬害疑惑はついに訴訟へと発展した。APIとの併用による危険性が本当にあるのか、それを天保薬品がどう受け止めるのか。そして、治療を必要としている患者たちをどう守っていくのか。

これまでのような痛快さとは違う面白さが出てきた第3話だった。紀尾中の信念が、この難しい状況の中でどのように発揮されるのか、次回も注目したい。

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