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【MR -医薬情報担当者-】最終回感想|予想どおりでも納得できた結末

ドラマ感想(コラム)
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WOWOWの連続ドラマW『MR-医薬情報担当者-』が全5話で完結した。

向井理演じる製薬会社のMR・紀尾中を中心に、患者への思いと企業の利益、それぞれの立場で異なる信念を持つ人々を描いた作品だ。

最終回の結末は、ある程度予想できるものだった。それでも物足りなさはなく、むしろ納得できる終わり方だったと思う。

一方で、これまで何気なく見ていた場面が最後につながる意外な展開もあり、登場人物への印象が変わる部分もあった。

今回は最終回の展開を振り返りながら、紀尾中、五十川、鮫島のそれぞれの信念について、ネタバレを含めて感想をまとめた。

最終回ネタバレ感想

紀尾中の判断は本当に理想論だったのか?

ノベルマとAPIの併用による危険性が判明したにもかかわらず、天保薬品は情報の公表を見送る。

納得できない紀尾中は、会社の方針に背いて患者の吉野咲子に直接説明し、最終的には厚生労働省への報告まで決意する。紀尾中らしい行動だったと思う。

目の前に助けられるかもしれない患者がいるのに、将来の利益や会社の都合を理由に何もしないという選択は、彼にはできなかったのだろう。

ただ、紀尾中の考え方が、そのまま経営者として正しいかといえば難しい。

会社には従業員がいて、研究開発にも莫大な費用がかかる。目の前の一人を救うことだけを考えていては、企業として成り立たない場合もある。その意味では、紀尾中は優秀なMRであっても、経営者には向いていないように思う。

しかし、今回のノベルマの問題に限っていえば、紀尾中の判断は決して理想論だけではなかったのではないか。すでに薬害訴訟が起きている以上、情報を伏せ続けても問題が解決するわけではない。いずれ調査によって因果関係が明らかになる可能性もある。

それなら、早い段階で正確な情報を公表し、被害の拡大を防ぐほうが、結果的に会社を守ることにもつながるのではないか。患者を守ることと、会社を守ることは、必ずしも対立するものではない。最終的に天保薬品が自ら情報を公表したことで、その考えが間違っていなかったようにも感じられた。

また、咲子が再びノベルマを使用する決断をした場面もよかった。紀尾中は薬の効果を保証したわけではない。わかっていることを正確に伝え、そのうえで患者自身に判断してもらった。ただ薬を勧めるのではなく、判断するための情報を届ける。それが紀尾中の考えるMRの仕事なのだろう。

五十川は最後までいい上司だった

今回、紀尾中と最も激しく対立したのが五十川だった。五十川はノベルマの情報を公表することによって、会社が多額の賠償金を負い、将来の新薬開発にも影響が出る可能性を懸念していた。

彼が考えているのは、今いる患者だけではない。これから生まれる薬によって救われるかもしれない、大勢の患者のことでもある。この考え方自体は理解できる。

ただ、紀尾中が求めていたのはノベルマの販売中止ではなく、正確な情報の公表だった。そこまで対立する必要があったのかという疑問は残る。

それでも、五十川を単なる冷酷な上司だとは思わない。新人時代の紀尾中が医師との関係に苦労していたとき、間に入って守っていたのは五十川だった。患者が亡くなった際にも、紀尾中が必要以上に責任を感じないよう気遣っていた。

患者に感情移入しすぎるなという忠告も、組織の一員としての心構えを教えると同時に、紀尾中自身が精神的に追い詰められないようにするためだったのではないか。五十川は、紀尾中に足りないものを持っている上司だった。

そして最終回では、紀尾中との対立を経て、五十川自身が会社からの情報公表を提案する。紀尾中が退職を覚悟していた一方で、会社は彼を引き留めた。昇進はできなくなったものの、MRとして働き続けられることになったのだ。

その後、五十川とすれ違った紀尾中が、去っていく背中に一礼する場面も印象に残った。二人の考え方が完全に一致したわけではない。それでも、互いの立場や信念を認め合う関係は最後まで失われなかったように見える。

紀尾中のような部下は、上司からすれば相当扱いにくいはずだ。それでも彼を見捨てなかった五十川は、やはりいい上司だったと思う。

鮫島にも譲れない信念があった

鮫島については、最後まで抜け目のない人物だったという印象が強い。八神の論文に不正が発覚すると、自分たちの関与を否定し、あっさりと距離を置いた。

医師への接待や根回しを含め、目的を達成するための手段を選ばない。しかも、自分に責任が及ばないように立ち回るのだから、相当に頭の切れる人物だ。やり方には賛成できないが、仕事の進め方としては確かに効果的だった。ただし、こういう人物は周囲から恨みを買うことも多いだろう。

そんな鮫島の印象が変わったのが、最終回の最後だった。老人ホームにいた美彌子が、実は鮫島の母親だったと明かされたのだ。前回、美彌子が登場した場面は、それほど気に留めていなかった。それが最終回になって、こうつながるとは思わなかった。

認知症の美彌子は、目の前にいる鮫島が自分の息子だとはわかっていない。それでも、薬の会社に就職した息子のことをうれしそうに話している。鮫島はそんな母親に、いつかいい薬ができると語りかける。この場面によって、鮫島が新薬の開発や製薬会社の利益にこだわる理由にも、個人的な思いがあることがわかる。

それまでの鮫島は、出世と利益ばかりを追い求める人物に見えていた。しかし、彼もまた、薬によって救われてほしいと願う人が身近にいたのだ。もちろん、だからといって不正を見逃したり、他人を利用したりする行動が正当化されるわけではない。それでも、鮫島にも鮫島なりの信念があったとわかったことで、人物としての見え方が変わった。

紀尾中との最後の会話も興味深い。鮫島は、製薬会社が利益を上げ続けることで新薬の開発が進み、将来救われる患者が増えると考えている。一方、紀尾中は、正確な情報を伝えずに薬への信頼を失えば、そもそもその未来が実現しなくなると反論する。

どちらも患者を救いたいという思いを持っているのに、そこへ至る方法がまったく違う。そして鮫島は、紀尾中が一生出世できないだろうと告げる。これも、ある意味では正しい指摘だと思う。

紀尾中のように会社の方針に逆らってでも自分の信念を貫く人物は、組織にとって扱いにくい存在だ。ただ、そんな人物がいるからこそ、組織が間違った方向へ進むことを防げる場合もあるのだろう。

全5話を振り返って

本作の人物造形は、ある意味で漫画的だったと思う。正義感が強く、信念を曲げない主人公。組織の論理を理解しながら部下を守る上司。利益と出世を追い求める、抜け目のないライバル。それぞれの役割が非常にはっきりしている。

ただ、これは欠点ではなく、むしろ本作の長所だったように思う。製薬会社やMRという、一般にはあまりなじみのない世界を舞台にしているからこそ、人物の考え方が明確なことで物語に入り込みやすかった。

しかも、単純な善人と悪人の対立にはなっていない。紀尾中の正しさには組織人としての難しさがあり、五十川や鮫島にもそれぞれの理屈がある。その違いが物語を面白くしていた。

そして、全5話という長さもちょうどよかった。展開はテンポよく進むものの、最終回が駆け足だったという印象はない。かといって、もっと長く続いていたら、少し間延びしていたかもしれない。序盤でMRの仕事や登場人物の関係を描き、中盤から対立を深め、最終回で決着をつける。無駄の少ない構成だったと思う。

まとめ|予想どおりでも楽しめるドラマ

『MR-医薬情報担当者-』は、結末に大きな意外性がある作品ではなかった。紀尾中が最後には自分の信念を貫き、会社も一定の理解を示す。そういう結末になるだろうとは、ある程度予想できた。それでも、実際に見終わってみると十分に満足できた。

結末そのものよりも、そこへ至るまでに描かれた人物たちの考え方や、それぞれが何を守ろうとしていたのかが面白かったからだと思う。

さらに、最後に明かされた鮫島と美彌子の関係によって、それまでの鮫島の行動を違った角度から振り返ることもできた。

意外な結末で驚かせなくても、物語は十分に面白くなる。王道の展開を丁寧に積み重ね、最後まで納得して見届けられる。そんなドラマだった。

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