『大追跡 Season2』第8話では、女性ばかりを狙う連続殺人事件が発生し、犯人が残したスマートフォンから5人の盗撮動画が見つかる。
しかも、その中にはSSBCの光本さやかまでいた。
これはかなりシリアスな展開なのだが、捜査はなぜか途中から「光本、どこで会ったか思い出せ」という記憶力勝負へ。最新デジタル捜査班なのに、急に脳内検索が始まった。
見かねた名波は「認知面接」を使って光本の記憶を引き出そうとする一方、木沢は自らボディーガードに立候補。柔道初段はともかく、弓道二級をどこで使うつもりなのかは最後まで分からない。
さらに終盤では、光本をおとりにするため帰宅ルートに防犯カメラを50台設置。最新技術というより、最後はやっぱり物量だった。
この記事では、5人を狙った神室貴弥の動機や認知面接について振り返りつつ、それ以上に気になった木沢のボディーガードぶり、そして今回はなぜか出なかった名波の「僕の叔父が~」についても突っ込んでいく。
光本の記憶頼みになったSSBC
犯人のスマートフォンには、5人の女性を盗撮した動画が残されていた。
しかも、その中には光本の姿もある。
さらに光本は、ほかの女性のうち1人を「どこかで見たことがある気がする」と話した。
となれば、その記憶をたどれば5人の共通点が見つかるかもしれない。
「どこで会った?」と八重樫が光本に圧をかける
そこで八重樫が光本に「どこで会ったんだ」「思い出せ」と迫り始める。
いや、そう言われて思い出せるなら苦労はしない。
光本も必死に記憶をたどるが、いつ会ったのか、どこだったのかまでは出てこない。
さすがにこの方法では逆効果である。
最新デジタル捜査班なのに突然始まる記憶頼みの捜査
これまで防犯カメラ、顔認証、歩容認証、DNA、位置情報など、ありとあらゆるデジタル技術を使ってきたSSBC。
ところが今回は、事件解決の重要な手がかりが「光本がどこかで見た気がする」という記憶だった。
突然アナログである。
もちろん防犯カメラの解析なども並行して進めているのだが、5人を結びつける決定的な共通点については、ほぼ光本の記憶待ち。
最新デジタル捜査班が、まさかの「頑張って思い出して」で立ち止まるとは思わなかった。
思い出せない光本は自分を責めてしまう
さらに厄介なのは、光本自身も犯人の標的になっているということ。
ただでさえ恐怖を感じている状況で、ほかの被害者を救う手がかりまで自分の記憶にかかっている。
帰宅途中には、「自分が思い出せないから、ほかの人が被害に遭うのではないか」と自責するほど追い詰められていた。
そこで名波が持ち出したのが、無理に記憶を引き出そうとするのではなく、自然に思い出せるよう促す「認知面接」だった。
八重樫式「思い出せ」作戦よりは、明らかにこちらのほうが光本には向いていたようである。
名波が行った「認知面接」とは?
八重樫の「思い出せ」とは正反対の聞き取り
光本がなかなか記憶をたどれずにいる中、名波が提案したのが「認知面接」だった。
八重樫のように「どこで会った?」「思い出せ」と直接迫るのではなく、対象者にできるだけ負担をかけず、周囲の状況を少しずつ思い出してもらう方法である。
八重樫式が力技なら、名波式はかなり遠回り。
だが、記憶というものは強く引っ張れば出てくるわけではないらしい。
場所だけでなく服装や匂いなどから記憶を引き出す
名波は光本に、いつ頃だったか、座っていたのか、どんな服だったか、どんな匂いがしたかなどを順番に尋ねていく。
光本は「白い服」「甘くてツンとするような匂い」など、断片的な記憶を少しずつ口にしていった。
ただし、その場ですぐに答えが出たわけではない。
名波も無理に続けず、途中で聞き取りを切り上げている。
光本はあとから自分で「美容室」を思い出した
その後、光本は自宅で髪を乾かしている最中に、突然記憶がつながる。
5人を見た場所は美容室だった。
つまり認知面接でその場で正解を引き出したというより、断片的な記憶を整理したことで、あとから光本自身が答えにたどり着いた形である。
八重樫があれだけ「思い出せ」と迫っても出てこなかった答えが、いったん考えるのをやめたあとに出てくる。
今回は最新デジタル捜査より、人間の記憶のほうが少し厄介だった。
というか、よく美容室にいた他の客の顔を覚えているなと。そこに一番驚いた。
木沢の光本への好意がかなりはっきりした第8話
自ら「僕が光本のボディーガードに」と志願
光本が犯人の標的になっていると分かると、真っ先に「僕が付く。僕が光本のボディーガードに」と名乗り出た木沢。
誰かが付き添う必要があるとはいえ、この立候補の速さはなかなかである。
これまでも光本を気にかける場面はあったが、第8話では木沢の好意がかなり分かりやすい形で表に出てきた。
柔道初段はともかく弓道二級はどこで使うのか
ボディーガードを買って出た木沢は、自分には柔道初段と弓道二級の腕前があるとアピールする。
柔道初段はまだ分かる。
だが、弓道二級はいったい今回のどこで使うつもりだったのか。
犯人が現れたら弓でも構えるつもりだったのだろうか。
結局、仁科からもほとんど戦力として期待されないまま、それでも木沢は「大丈夫、僕に任せろ」と強引にボディーガード役に収まってしまった。
心配しすぎて光本から「もう守ってもらわなくていい」
そこからの木沢は、とにかく光本が心配で仕方がない。
帰宅時には周囲を警戒し、部屋の中まで確認。翌朝も迎えに来ると宣言するなど、完全に護衛モードに入っていた。
さらに、もんじゃ焼きを食べている最中まであれこれ心配し続けた結果、ついに光本から「もう木沢さんに守ってもらわなくていいです」と言われてしまう。
守りたい木沢と、さすがに少し放っておいてほしい光本。
このあたりの温度差が実に分かりやすい。
それでもマンション前で待ち続ける木沢
それでも木沢は引かない。
光本を自宅まで送り届けたあとも、すぐには帰らずマンションの前でしばらく様子を見ていた。
しかも結果的には、その行動によって犯人がすぐに光本の部屋へ向かうのをためらっている。
何の役にも立っていないようで、意外とちゃんと役に立っていたのかもしれない。
本人は最後まで自信がなさそうだったが、少なくとも「心配している」という気持ちだけは犯人にも十分伝わっていた。
最後のずんだ餅でも光本との温度差はまだ大きい
事件解決後、光本は宮城の実家から送られてきた手作りのずんだ餅をSSBCのみんなに差し入れる。
木沢は「何の役にも立たなかった」と落ち込むが、光本はちゃんと感謝していると伝えた。
ただし、その直後には「髪を結ぼうが下ろそうが放っておいてくれ」と釘も刺される。
感謝はしている。でも、それとこれとは別。
木沢の気持ちはかなり前に進んでいるように見えるが、光本側はまだそこまでではない。
この微妙な温度差は、今後もまだ続きそうである。
神室貴弥はなぜ5人を殺そうとしたのか
神室にとって5人は「最高の作品」だった
逮捕された神室は、光本を含む5人について、自分が切った中でも「最高の出来」だったと語る。
つまり神室にとって彼女たちは、ただの客ではなかった。
自分の技術によって完成させた「作品」だったのである。
そして、その作品であるはずの5人が、自分の仕上げを気に入らず、次から別の美容師を指名した。
そこから神室の怒りが始まっていた。
髪型を否定されたことを自分自身の否定と受け取った
普通なら「好みが合わなかった」で終わる話である。
しかし神室にとっては、そうではなかった。
自分が最高だと思って作った髪型を否定されたことが、自分自身の才能や存在まで否定されたことのように感じられた。
その結果、5人への怒りは次第に膨らみ、殺意にまで変わっていった。
かなり飛躍しているのだが、神室の中では「髪型を気に入らない」と「自分を否定した」がほぼ同じ意味になっていたのだろう。
「自己愛憤怒」とは何だったのか
劇中で木沢は、神室の状態について「自己愛憤怒」、いわゆるナルシシスティック・レイジの一種ではないかと説明していた。
自分が思い描いている完璧な自己像を傷つけられたと感じた時、強い怒りや攻撃反応として表れるものだという。
神室の場合、自分には天才的な美容師としての才能があるという強い自負があった。
だからこそ、その仕事を否定されることが耐えられなかった。
もちろん、それが殺人の理由になるはずはない。
むしろ「そんなことで?」と思えるほど些細な出来事が、神室の中では決定的な侮辱に変換されていたところが怖い。
客ではなく「作品」として見ていた神室の異常さ
個人的に一番引っかかったのは、神室が5人を最後まで「客」ではなく「作品」として見ていたことだった。
美容師なら本来、髪型を決めるのは客自身である。
ところが神室は、自分が良いと思った髪型こそが正解で、客が気に入るかどうかは二の次になっていた。
光本も「揃えるだけ」と頼んだのに、勝手に髪を切られている。
この時点ですでに、神室は客の希望より自分の美意識を優先していたわけだ。
そして最後まで、「自分の作品を否定した側が悪い」という考えから抜け出せなかった。
美容師としての自信が強いというより、他人を自分の表現の材料としてしか見られなくなっていたことこそ、神室の異常さだったように思う。
光本をおとりにして防犯カメラ50台
犯人を待ち伏せするため帰宅ルートを監視
神室が光本の自宅を把握している可能性が高いと分かると、光本は自らおとりになることを提案する。
そしてSSBCは、光本の帰宅ルート周辺にリアルタイムで映像を確認できる防犯カメラを50台設置することになった。
50台。
もはや監視というより、光本専用の防犯カメラ網である。
最新技術というより最後は大量の防犯カメラ
『大追跡』といえば、顔認証や歩容認証、FDPなど、毎回さまざまなデジタル捜査が登場する。
今回も認知面接など新しい手法は出てきたが、最後に神室を捕まえる作戦はかなりシンプルだった。
大量の防犯カメラを設置して、みんなで見る。
結局そこなのか。
これまで何度も人海戦術に戻ってきたSSBCだが、今回は人ではなくカメラの物量で押し切った。
最新デジタル捜査班というより、「見える場所を増やせばなんとかなる」という実に力強い作戦である。
ベランダから侵入されても妙にギリギリまで見守る捜査員たち
作戦当日、光本が1人で帰宅すると、神室はベランダをよじ登り、ガラスを割って室内へ侵入する。
かなり危険な状況である。
ところがSSBC側は、その様子をかなりギリギリまで見守っている。
もちろん室内には青柳や佐倉たちが待機しており、最終的には神室を無事に取り押さえた。
とはいえ、視聴者からすると「もう入ってきてますけど」と言いたくなる時間が少々長い。
防犯カメラ50台で完璧に監視したうえで、最後は犯人を光本の部屋まで入れてから逮捕。
確実に捕まえるためとはいえ、今回一番肝が据わっていたのは、もしかすると光本だったのかもしれない。
今回はいつものやり取りがなかった
第8話を見終わって、何かが足りないと思った。
名波の「僕の叔父が~」である。
これまで八重樫が捜査方針に難色を示すたび、名波が叔父の話を持ち出して説得するのが半ば恒例になっていた。
ところが今回は、その場面が一度もなかった。
理由は単純で、第8話では八重樫とSSBCが大きく対立する場面そのものがなかったからだろう。
名波は認知面接について説明し、今回もしっかり知識を披露していたが、そこから叔父のエピソードへ突入することはなかった。
事件がスムーズに進むのはいいことなのだが、毎週見ていると少し物足りない。
もはや「今週はどんな叔父が出てくるのか」まで、『大追跡』の見どころのひとつになりつつある。
まとめ|光本が事件の当事者になったシリアスな第8話
第8話は、これまで事件を追う側だった光本自身が連続殺人犯の標的となり、いつも以上に緊張感のある回だった。
犯人が残した盗撮動画から5人の女性が狙われていることが分かり、その共通点を探す鍵になったのが光本の記憶。最新デジタル捜査を売りにするSSBCが、最後は「どこかで見た気がする」という人間の記憶を頼りにするのも面白いところだった。
そして、その記憶を無理に引っ張り出そうとする八重樫に対し、名波は認知面接を使って少しずつ手がかりを引き出していく。結果的に光本は自分で美容室を思い出し、神室貴弥へとたどり着くことができた。
一方で、今回もっとも気になったのは、やはり木沢のボディーガードぶりである。
自ら護衛役を買って出し、家まで送り、マンションの前でもしばらく待機。最終的には光本から「もう守ってもらわなくていい」と言われながらも、事件解決後にはちゃんと感謝されていた。
ただし、「髪を結ぼうが下ろそうが放っておいてくれ」とも釘を刺されている。
木沢の気持ちはかなり前進しているが、光本との距離はまだそれなりにあるようだ。
光本が狙われるシリアスな事件でありながら、防犯カメラ50台の物量作戦や木沢の空回り、そして今回はなかった「僕の叔父が~」まで、結局いつもの『大追跡』らしさもしっかり残った第8話だった。
