「相棒 season25」第3話は、「裁かれたい殺人」。
人を殺したと自首してきた清水俊平。しかし、彼が語ったのは、遺体も凶器も残さない完全犯罪だった。
自分の犯行を証明してほしいと右京に依頼する清水。捜査を進めるうちに、事件の裏に隠された別の真実が明らかになっていく。
今回は、清水が自首した理由や、事件の真相、そして気になった点を振り返ります。
※以下、ネタバレを含みます。
清水が自首してきた理由
清水俊平(森永悠希)が警察にやってきて、「私、人を殺しました」と自首する。
ところが、捜査一課の伊丹たちが話を聞こうとしても、いつ、どこで、誰を殺したのか、何も話そうとしない。
自首してきたにもかかわらず黙秘する清水を、伊丹たちは事件とは無関係なのに自分が犯人だと名乗り出る「自首マニア」の類いだと考え、特命係に取り調べを任せる。
右京と亀山が話を聞くと、清水は刑事としての観察力と推理力を試したいと言い、自分の職業を当てるように求めてきた。
右京は袖口についたチョークの粉や指先の赤いインクから、清水が学校の教師だと推理する。
さらに、ベルトの穴の使われ方から、病気で痩せたことまで見抜いた。
清水は私立聖洋高校で化学を教えており、肺の病気で余命1カ月を宣告されていた。
そして、1年前の11月5日の夜、同僚の教師である七里浩久を学校の屋上で殺害したと告白する。
清水によれば、ダークウェブで見つけた特殊な溶解液「レグシオン」を自分で調合し、遺体を跡形もなく溶かしたという。
凶器の包丁も船から海に捨てたため、犯行を裏付ける証拠は何も残っていない。
余命わずかとなった今、自分が生きているうちに罪を償いたいという清水。
しかし、遺体も凶器もない完全犯罪を、果たして立証できるのか。
七里から受けていたいじめと稲村への思い
右京と亀山は、清水の供述を裏付けるために捜査を始める。
七里は1年前から行方不明になっており、妹が捜索願を出していた。
清水が語った殺害の動機は、七里から受けていたいじめだった。
七里は明るく、生徒にも人気のある教師だったが、人目のないところでは清水に対して別の顔を見せていた。
清水は七里に頼まれ、借金の返済を助けるために100万円以上のお金を貸していた。しかし、返済を求めると借りたこと自体を否定され、さらに突き飛ばされてしまう。
その悔しさから、七里を殺そうと決めたという。
一方、亀山が学校で話を聞くと、教頭も2人が揉めているところを目撃していたことが分かる。
しかし、その後は普段どおりに見えたという理由で、特に対応していなかった。
教師同士のいじめを見て見ぬふりしていた学校側の対応も気になるところ。
さらに、七里と最後に話をしたソフトボール部のキャプテン・石上から、七里には稲村という交際相手がいたことが分かる。
稲村はテニス部の顧問をしている国語教師だった。
亀山が稲村に話を聞くと、七里と交際していたことを認める。
また、清水の自宅には、稲村の実家である稲村製菓の最中の空き箱があり、その中には文房具が入っていた。付箋には稲村からのメッセージも残されていた。
清水と稲村はミステリー好きという共通点があり、話すことがあった。
右京と亀山は、清水が稲村に好意を寄せており、彼女が七里と交際していたことへの嫉妬が殺害の動機だったのではないかと考える。
清水自身もその推測を認め、最初は稲村を殺そうと思ったが、彼女の愛する男・七里を奪う方が苦しめられると考えたと話す。
ただ、「本当に憎んでいたのは彼女の方でした」という清水の言葉は、最後まで見ても少し引っ掛かる。
本当に稲村を憎んでいたのだろうか。
七里が隠していた盗撮と学校側の隠蔽
捜査を進めると、七里には別の顔があったことが分かる。
七里の妹から通帳を見せてもらった亀山は、失踪後に預金が引き出されていないことを確認する。
さらに、学校の給料とは別に、聞いたことのない会社から何度もまとまったお金が振り込まれていた。
調べてみると、その会社は成人向け動画配信サイトを運営していた。
七里は何らかの動画を販売していたらしく、アカウントも動画も削除されていた。
亀山がソフトボール部のキャプテン・石上に改めて話を聞くと、七里が部員たちの着替えを盗撮していたことが明らかになる。
石上が七里を問い詰めると、七里から動画をSNSにばらまくと脅された。
亀山は「君は何も悪くない」と石上に伝える。
しかし、さらに問題だったのは学校側の対応だった。
石上から盗撮の相談を受けていた教頭は、警察に報告することなく、動画を削除させただけで事件をもみ消していた。
生徒を守るためだったと説明する教頭だが、亀山はまだ何か隠していると感じる。
そして、教頭が石上から相談を受けた際に「あの記号と関係あるのか」とつぶやいていたことを突き止める。
清水も七里から盗撮動画を買わないかと持ちかけられたことがあり、動画の存在を知っていた。
七里は動画が騒ぎになれば、生徒たちは一生好奇の目にさらされると清水を脅していた。
右京は、生徒たちを守るために七里を殺そうとしたのではないかと問いかけるが、清水はあくまでも稲村への復讐が動機だと言い張る。
清水が隠そうとした真犯人
そんな中、右京たちは清水に七里の手帳を見せる。
手帳にはいくつもの記号が書かれていた。
しかし、その意味を尋ねられた途端、清水は犯行に使った包丁を隠した場所を明かす。
凶器は公園脇のほこらのそばの地中に隠されており、鑑定の結果、付着していた血液は七里のものと一致。柄からは清水の指紋も採取された。
これで清水の完全犯罪は解明されたかに見えた。
ところが、右京は七里の手帳に書かれた記号が気になっていた。
調べてみると、記号のアルファベットは部活動を表し、その後の数字は動画配信サイトからの売上金額と一致していた。
つまり、盗撮の被害に遭っていたのはソフトボール部だけではなかったのだ。
清水はそのことに気づいていたため、右京たちが手帳の記号に注目した途端、凶器のありかを明かして捜査を終わらせようとした。
そして右京は、清水が七里を殺害したという供述そのものを疑い始める。
凶器は間違いなく七里を刺した包丁だった。しかし、実際に刺したのは清水ではなかった。
右京たちは学校に設置された用具倉庫に注目する。
七里の手帳は、1年前の11月6日、倉庫の設置場所付近で拾われていた。
そこで倉庫を移動させ、地面を掘り起こしてみると、なんと七里の遺体が埋まっていた。
さらに、遺体と一緒に見つかったヘアピンに付着していた毛髪のDNA型が稲村のものと一致する。
七里を殺害したのは稲村だった。
稲村は七里が生徒たちを盗撮し、その動画を販売していたことを知り、警察に通報しようとした。
しかし、七里から動画を拡散すると脅され、生徒たちを守るために殺害するしかないと思ったという。
清水は七里を殺すつもりで計画を立てていたが、先を越され、実際に殺害したのは稲村だった。
そして、その現場を目撃した清水は、稲村の犯行を知りながら、自分が犯人だと名乗り出たのだった。
清水が自首した本当の理由
清水が自分の完全犯罪を暴いてほしいと右京に頼んだのは、稲村の犯行を隠すためだった。
清水は稲村に好意を抱いており、彼女を守るために自分が罪をかぶろうとしていた。
しかし、右京は清水が病室に持ち込んでいたアガサ・クリスティーの小説「春にして君を離れ」に注目する。
清水は本を読む際、しおり代わりにページの角を折る癖があった。しかし、その本には折り目が一つもなかった。
なぜなら、その本は稲村から贈られたものだったからだ。
清水は推理小説ではないこの作品を読んでおらず、稲村から薦められた本を、彼女を守るためのお守りのように病室へ持ち込んでいた。
七里からのいじめを受ける中で、稲村の存在だけが清水にとって救いだった。
だからこそ、残された命をかけて彼女を守ろうとしたのだ。
清水は最後まで稲村への思いを否定していたが、右京と亀山に真実を突き止められ、稲村を守りきれなかったことを悟ったのか、ついに涙を流す。
一方、稲村もこの1年間、自分の罪に苦しんでいた。
清水が自首しなければ、自分は今も逃げ続けていたと思うと話す稲村。
右京は、七里がどれほど卑劣な人物だったとしても、命を奪うことは決して許されないと稲村を諭す。
その後、自分が自首したことで稲村を苦しめてしまったと後悔する清水に、右京はこう伝える。
「稲村先生はあなたに感謝していました。あなたのおかげで自分の罪と向き合えたと。」
それを聞いた清水は、「それなら……良かった……」と答え、嗚咽しながら涙を流す。
病室で「春にして君を離れ」を手に、窓の外を眺める清水。顔に光が差し込み、ゆっくりと目を閉じる。
残された時間はわずかだったが、ようやく自分の思いを伝えられたような、静かな結末だった。
第3話を見て気になったこと・感想
今回の話は、清水が自分の完全犯罪を暴いてほしいと右京に依頼するところから始まり、最後には稲村の犯行をかばうための自首だったことが明らかになる。
清水は、自分が罪をかぶることで稲村を守ろうとした。
ただ、どうしても引っ掛かることがいくつかあった。
まず、清水が稲村の犯行を知っていて、遺体を埋めた場所も知っていたのに、なぜ最初から素直に遺体の場所を話して自分が罪をかぶろうとしなかったのだろう。
わざわざ右京と亀山に完全犯罪を解明させようとしたのは、優秀な刑事に自分の犯行を証明してほしかったからなのか。
それとも、死ぬ前に最後のミステリーごっこを楽しみたかったのだろうか。
結局、右京が優秀すぎたために、清水の思惑とは違って隠したかった真相まで暴かれてしまった。
まさに策士策に溺れるということなのかもしれない。
また、清水と稲村の殺害動機にも少しモヤモヤが残った。
清水は七里からいじめを受け、お金まで騙し取られていた。さらに、稲村が七里と交際していたことへの嫉妬もあった。
一方の稲村は、七里の盗撮を知り、生徒たちを守るために殺害したという。
もちろん、七里は許しがたい人物だと思う。
しかし、稲村には、生徒を守りたいという気持ちだけでなく、そんな男と付き合っていた自分への怒りや、裏切られたことへの憤りもあったのではないだろうか。
そして、清水が稲村を守ろうとしたことについても、少し疑問が残る。
稲村は清水の好意に気づかなかったと言っていたが、本当にそうだったのだろうか。
女性は意外と敏感なものだし、清水の気持ちに何となく気づいていたようにも思える。
特に気になったのは、稲村が清水の自首を知ったときの言葉だ。
「清水先生が私のために罪をかぶろうとしてくれたことは…謝っても謝りきれません。でも清水先生が自首しなければ私は今も逃げ続けていたと思います。」
この言葉を聞いて、素直に感謝しているようには思えなかった。
むしろ、心の中では「なんで自首なんかするんだよ。余計なことをしやがって」と思っていたのではないかと感じてしまった。
それなのに、清水のおかげで自分の罪と向き合えたというのは、少しきれいにまとめすぎているようにも思う。
学校側の対応についても、盗撮の被害を受けた生徒たちを守るためという理由で、警察に報告せず事件を隠蔽していたことはどうかと思う。
動画の拡散を恐れる気持ちは分かるが、何もしなければ新たな被害が生まれる可能性もある。
七里のような人物を放置していたことも含め、学校の責任は大きいと思う。
「緋色の研究」と「春にして君を離れ」の意味は?
今回、もう一つ気になったのが、作中に登場した2冊の小説だ。
清水は右京たちに職業を推理させる際、コナン・ドイルの「緋色の研究」を引き合いに出していた。
また、病室ではアガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」が登場する。
特に後者は、稲村から贈られた本であり、清水が彼女を思う気持ちを象徴するものとして描かれていた。
ただ、それぞれの作品の内容と今回の事件に、何か共通点やインスピレーションがあったのだろうか。
タイトルや登場のさせ方にも意味があったのか、気になるところだ。
まとめ
第3話は、完全犯罪を暴いてほしいと自首してきた余命わずかな男の裏に、もう一人の犯人が隠されていたという展開だった。
清水が稲村を守ろうとした思いは分かるものの、殺害の動機や自首に至るまでの行動、稲村の言葉など、最後まで少し腑に落ちない部分も残った。
七里の卑劣な行為や学校側の対応も含め、事件そのものは解決しても、すっきりしないものがある。
清水の稲村への思いが切ない話ではあったが、稲村は本当に清水に感謝していたのだろうか。
自分の犯した罪と向き合えたという言葉も、どこかきれいにまとめすぎているように感じた。もう少し登場人物たちの心情が丁寧に描かれていたら、違った印象になったかもしれない。
