『リブート』第2話「裏切」は、10億円強奪の疑いをかけられた儀堂(=陸)が、24時間という期限の中で真犯人を探す回である。
事件として見れば、マネーロンダリングの構造や横領の関係が整理される回なのだが、その整理が進めば進むほど、感情だけが置いていかれる感覚もあった。
個人的にはそれ以上に、一香という人物が分からなくなった回だった
※本記事は『リブート』第2話のネタバレを含む感想です。
物語の展開や印象的な出来事に触れていますので、未視聴の方はご注意ください。
構造は整理されたのに、感情はかえって揺れた
今回の話で、10億円が消えた経緯や、合六の組織がどうやって金を回しているのかは、かなり具体的に描かれた。仕組みは理解できる。誰が危険な立場にいるのかも、だいたい見えてくる。
それなのに、見終わったあとに残ったのは納得よりも違和感だった。理由ははっきりしていて、一香の言動が最後まで一つに定まらなかったからだと思う。
「利用した」と言い切る一香、「守る」と約束する一香
一香は陸に対して、かなり早い段階でこう言ってしまう。
自分を守るために、あなたを利用した
ここまで言われたら、普通は線を引く。それなのに一香は、その直後に
私が、あなたを絶対に守るって約束する
とも言う。
この二つは、言葉だけ見れば矛盾している。でも一香自身は、どちらも本音なのだろう、という気もする。
妹の命がかかっている。横領がバレれば終わる。今は死ねない。
そういう状況に置かれた人間が発する言葉は、きれいに整理できない。頭では理解できるのに、感情としてはどうしても引っかかる。この引っかかりが、第2話を通してずっと消えなかった。
儀堂も、夏海も「リブートしたかった側」だった
今回、儀堂が追い詰められていた理由もはっきりした。合六に買収され、警察にも疑われ、どこにも居場所がない。
ここでふと浮かんだのが、「儀堂も、リブートしたかったんじゃないか」という考えだった。
そしてそれは、夏海についても同じだ。
10億円の管理という危険な役割を任され、逃げ場のない場所に立たされていた夏海。彼女もまた、やり直したかった側の人間だったのではないか。
このドラマは、善悪より先に「もう引き返せない場所に立ってしまった人たち」を描いているように見える。
最大のモヤり:「粘り腰がハヤセの取り柄だ」
今回、個人的に一番引っかかったのは、やはりこの一言だ。
粘り腰がハヤセの取り柄だ。お店を守るお母さんが言ってた
励ましとしては、優しすぎる言葉である。
けれど、どうしても気になる。
一香と夏海は、面識がないはずだった。それなのに、一香はまるで家の中の言葉を知っているかのように話す。
- 実はどこかで接触していたのか
- シーン外で母親が言っていたのか
- それとも、別のルートで情報を得ているのか
どれも否定できない。そしてそのどれであっても、一香の「善意」が少し違う顔に見えてしまう。
この一言で、一香は「信じていい人」から「信じていいのか分からない人」になった。
一香は、夏海が生き延びていた姿なのだろうか
ここまで見ていて、ふと浮かんだ考えがある。一香は、夏海がリブートした姿なのではないか、というものだ。
夏海は、家族のために組織に関わり、誰にも本当のことを言えないまま、危険な場所に立ち続けた。一香もまた、妹を救うために同じ場所に立っている。
違うのは、一香は最初から「汚れる覚悟」を隠さないことだ。利用したことも認めるし、生き残るためなら裏切る選択もする。
もし夏海が、「誰かを守るために一人で抱え込む」ことをやめていたら。もし、もっと冷たく、もっと現実的になれていたら。
一香は、そんな“もう一つの可能性”のようにも見える。
ただ、それを「やり直し」と呼んでいいのかは分からない。夏海は救われなかった。一香は生き延びているが、同じように安全ではない。
だからこの二人は重なって見えて、それでも完全には重ならない。
そう考えたとき、「粘り腰がハヤセの取り柄だ」という一香の言葉が、余計に引っかかってくる。
励ましとしては、優しすぎる。でも、夏海の位置にいた人間だからこそ、あの言葉を口にできたのではないか、とも思ってしまう。
もし一香が、夏海が生き延びていた未来の姿だとしたら。あの言葉は、陸を支える言葉であると同時に、夏海自身が言えなかった言葉のようにも聞こえる。
シュークリームの場面が、静かに効いてくる
終盤、母親が語る「常連さんのアドバイス」が一香のものだと分かる場面。ここは派手ではないが、とても印象に残った。
一香は、組織の中では冷静に立ち回っている。でも、ハヤセの店に対しては、確かに気を配っている。
それが計算なのか、善意なのか、あるいはその両方なのかは分からない。
ただ、陸が涙ぐむ気持ちは分かってしまった。誰かが母と店を見ていてくれたという事実は、それだけで重い。
勝ったわけではなく、「生き延びただけ」
海江田を追い詰め、会食の場を乗り切った。けれど10億円は戻らず、疑いも完全には晴れていない。
合六が言った「合格」は、救いではない。ただの延命である。
このドラマでの勝利条件は、「正しさ」ではなく今日を生き残ることなのだと、改めて思わされた。
ラストに残る不安
朝、目を覚ますと隣に一香がいる。そこへ現れる儀堂の妻。
この一連の流れは、次回への仕掛けでありながら、「一香がいる場所には、必ず歪みが生まれる」という印象も強めた。
一香は味方か。それとも、必要だからそばにいるだけなのか。
第2話は、その答えを出さず、モヤりだけをきれいに残して終わった。
まとめ(感想)
第2話「裏切」は、事件の構造が整理された回であると同時に、感情の整理がいちばん難しくなった回だった。
特に一香という人物は、優しさと怖さが同じ距離にある。だからこそ、あの「粘り腰」という一言が、励ましにも、侵入にも聞こえてしまう。
このモヤりを抱えたまま、次回を待ちたい。
それ自体が、このドラマに引き込まれている証拠なのだと思う。

